とあるぬいぐるみのおはなし
初めての童話ということで、
少し絵本を意識して書いてみました。が、
なんかそれっぽくないかもしれません。
あるところにぬいぐるみの国がありました。
それは、人から忘れられたぬいぐるみが
いつの間にかおとずれる国でした。
おおきなぬいぐるみ、ちいさなぬいぐるみ、
たくさんつくられたぬいぐるみ、ひとつだけのぬいぐるみ、
たいせつにされたぬいぐるみ、ボロボロになったぬいぐるみ、
みんなが区別なく、とてもなかよく暮らしていました。
ある日のことです。
一匹のちいさなねこのぬいぐるみが、
とても怖い夢をみました。
次の日も、そのまた次の日も、
怖い夢は続きました。
ちいさなぬいぐるみは寂しがり屋でしたが、
他のぬいぐるみたちを心配させることが嫌で、
なかなか相談することができませんでした。
でも、怖い夢に疲れてしまったねこのぬいぐるみは、
ある日、仲間のにいぬのぬいぐるみに
自分が。怖い夢に苦しめられていることを話しました。
話を聞いたいぬのぬいぐるみは、
ねこのぬいぐるみのために何かができないか、
一生懸命に考えます。
考えても、考えても、
ねこのぬいぐるみを助ける方法は思い浮かびませんでした。
話を聞くことしかできないいぬのぬいぐるみは
自分には何もできないのかと悩みます。
悩んだ末にいぬのぬいぐるみは、
自分の中にあるふわふわの綿で、
人間が寝るときに使っていたお布団を作って、
ねこのぬいぐるみにプレゼントをすることにしました。
いぬのぬいぐるみはともだちにひとつの手紙と、
いのちとも言える綿を使ったお布団を
ねこのぬいぐるみに届けてくれるように頼みました。
頼まれたぬいぐるみは、渋りましたが、
勢いに押されて、とうとう頷きました。
それからしばらくして、ねこのぬいぐるみのところに
手紙とお布団が届きました。
手紙には、いぬのぬいぐるみからの、
元気になって欲しいということ、
この布団を使ってみて欲しいということが書かれていました。
プレゼントのふわふわのお布団のおかげか、
ねこのぬいぐるみはそれから怖い夢を見ることはなくなりました。
ねこのぬいぐるみは、いぬのぬいぐるみにお礼を言おうと思いましたが、
普段よく会う広場でなかなか会えません。
そんな時ねこのぬいぐるみは、手紙とお布団を
持ってきてくれたぬいぐるみを見つけたので、
いぬのぬいぐるみについて聞きました。
あのふわふわのお布団は、いぬのぬいぐるみが
自分の綿を使ってほしいと言ってきたこと、
綿をほとんどなくしてしまったいぬのぬいぐるみは、
家からほとんど動けなくなってしまったことを知りました。
事情を知ったねこのぬいぐるみは、
いぬのぬいぐるみの家に駆けつけました。
いぬのぬいぐるみは、見違えるほどやせ細っていました。
ねこのぬいぐるみは、いぬのぬいぐるみを見て泣きました。
怖い夢を見た時とは違う涙でした。
ねこのぬいぐるみは、いぬのぬいぐるみに自分の綿と
元気を分け与えました。
それからねこのぬいぐるみはいぬのぬいぐるみと
一緒に暮らして、
一緒にふわふわのお布団で眠るようになりました。
二匹はお互いを大切にしながら、
いつまでもなかよく暮らしました。
最後の最後まで悩み続けましたが、ふわふわな話というお題、
そして童話、本当にこれでよかったのでしょうか……。
童話として考えて書くことだけではなく、
明確に一人称以外で書くのも初めてだった気がしますね。
正解の定まらない話とはいえ、なかなかに難しいものです。
ご読了、ありがとうございました。