第6話 Save Point-1《YES》
これで主要メンバーがそろいましたが、いいのかなコレで
魔妃が僅かでも力を抜けばその瞬間、霞の牙が僕の首を食い破っているだろう。
立会人の下した判定、その理由が僕にも解らなかった。
「木刀、折られたわよね…」
「向こうも砕けている!」
「寝転んだ状態でぇお腹、見せちゃいました(服従の証)よねぇ」
「それは…」
「マーキング(キス)もされちゃってたですよ」
「……グッ」
妖かしとはいえ、彼女達にとって自然界のルールは絶対だった。月が雲に被われ、その光を失うと共に霞は力無くうなだれ、その場に座り込んでしまった。
「……という事で宜しいですわね。おめでとうございます旦那様、流石ですわ」
「や〜い、負け犬ぅ」
ヘナヘナと力の抜けた僕を支える様に抱きしめる魔妃と、ここぞとばかりに敗者に追い討ちをかける沙美。そういえばもう一人居た筈だ。
「良かったね、お兄ちゃん」
そうだ、この声の主だ。辺りを見渡しても誰も居ない…、何処だ?何処に居る?
「何処見てるの?コッチ、コッチなのですよ」
「……フム!?」
声のする方に見上げた瞬間、突然のキス。その娘は樹の枝にぶら下がっていた。
「ウチはバンパイアの黒羽なのですよ、ヨロシクお兄ちゃん!」
まるで鉄棒をする小学生の様にクルリと回って降り、スカートの裾を摘んで挨拶をした。
「お礼は今度ウチに献血のご協力頂ければ良いのですよ」
「それは献血とは言わない」
これでこの闇夢館のメイドが全員揃った。四人中三人は微笑んでいるものの、霞だけはソッポを向いていた。
「こ…今回はこれで退いてやる。だがまだ、わ…我は主殿と認めた訳では無いからな、か…勘違いするな」
そう言う割に主殿とか言って顔は真っ赤だし、尻尾はブンブンと振られている。
「フ…フン…我はまだ任務があるゆえ失礼する。主殿もさっさと寝ろ、夜は冷えるからな」
愛想無くズンズンと館の奥に消えて行った。
「……ツンデレ?」
「ハイ、困った事に感情表現が苦手なのです」
季節は11月、序章はこうして区切りを迎えた。
キャラクターは揃った。この広い闇夢館という小さな世界で様々なイベントが起き、時に敵対し、時には手を取り合いクリアしていくのだろう。
今までの主がそうであったように、僕もまた彼女達が存命の内に人生のエンドロールを迎えるのだろう。願わくば楽しいイベントでありますように。
「ヨロシクね、その日まで」
「ハイ、旦那様。その日まで…」
―セーブしますか?―
[YES]or[NO]
ここまでが一旦の区切りです。続きはまた後日となります。




