第3話 Field-2《自室》
読んでくれる方もいないのに何故更新するのだろう?
世にも奇妙な暮らしは早一週間が過ぎ、大分馴れてきた。ただ生活リズムが若干夜側に移行してはいるが…。
驚く事に暮らし始めてから庭や屋敷の外観が変わり始めている。どうやら人が住まないと家が寂れるというのは本当らしい。
壁の亀裂や割られた窓ガラスも綺麗になり、庭の植物も剪定されたように整い始めている………ひょっとして………いや、まさか……ね。
「う〜、寒い…」
石造りの洋館は夜ともなれば冷たさを増し、館内の室温まで下げていた。ましてやもうすぐ十五夜の月が冴える夜は尚更だった。
トイレに行こうと部屋を出たものの、こういう緊急を要する場合、無駄に広すぎる家は問題だなと実感する。
「お出かけですか?旦那様…」
大分慣れたつもりだが、やはり深夜に出くわすと驚きを隠せない。
「ん?ああ、魔妃さんか。ちょっと小用で…」
指差す先には[WC]と書かれた扉。妖魔といえ流石に女性相手には言い辛い。
「成程、マーキングですか。旦那様も何時になればワタクシ達にもマーキングして戴けるのやら…」
ご存知の通り、マーキングとは動物界では自分の縄張りや所有権を排泄物や分泌物で主張する事。つまり魔妃の言う意味は「精液よこせ」という事だ。
「アハハ…ところで魔妃さんは?」
冗談か判断つかない物は軽く流しておいてと…。
「ワタクシは見回りがてら旦那様にお情けを頂きに」
つまり夜ばいって事?命とは別なモノが危険かもしれない、僕の場合…。
「フゥ…、本来警備の任は専属の者がいるのですが、まだ目覚めておりませんので…。明日くらいには大丈夫と思うのですが、丁度満月ですし…」
やはりこの屋敷には魔妃と沙美以外にまだ妖しがいるようだ。魔妃いわく、あと二人居るらしい。僕は窓から見える月明かりを眺めながら用をたしてから自室に戻り再び眠りに就いた。
「…う〜ん」
僅かばかり寝苦しさを感じて目が覚めた。キングサイズの筈のベッドが妙に狭苦しい。
フニ…
フニフニ…
右肘に感じる温かくて柔らかな感触。これは夢の続きか?右半身の自由が利かない。理由はすぐに判明した。
「うに…あ、おふぁよぅございまふご主人様ぁ」
「な…な…ウワァァーッ!?」
流石は猫魔というべきか、いつの間にかベッドに潜り込んでいた沙美が抱き着いていたのだ。しかもボタン全開になった薄手のベビードールは魔妃程では無いが充分にふくよかな乳房もピンクのパンツも隠してはいなかった。
「如何なさいました?旦那さ…ま…て、あらまぁ…ワタクシ先越されちゃいました?」
僕の叫び声を聞き付けた魔妃が飛び込んできた。こちらは和風な寝間着、急いで駆け付けた為、お素敵な感じに着崩れている。
「魔妃さん、前!、前!!」
沙美は「うにゅ…」と寝言を言いながら体を丸くする、寒いならそんなナイティ着なきゃ良いだろうに。当の本人はまだ寝足りないのか瞼を擦りながら再びコテンと寝てしまった。
シュルシュル…
何だ?布が擦れる音がする。振り向くと魔妃さんが帯紐を解き、肩から寝間着を抜こうとしていた。
「何してんですか、貴女は!?」
「せっかくですし、ワタクシも旦那様を頂戴しようかと…」
してませんし、されてもないからと早急に沙美さんと一緒にお引き取り頂いた。
コケコッコーッ
「……………ハァ〜」
結局グッスリと眠れぬまま朝を迎えた。寝呆け眼を擦りながら食卓につくとキッチンから良い匂いが漂ってくる。味噌汁や焼き鮭の香ばしい香り、漬物も味噌も自家製というこだわり様だ。今朝の当番は魔妃さんか、沙美だと三食ねこまんまな時が有り、若干侘しかったりする。
食材は殆ど自給自足出来るらしい。澄んだ涌き水、鶏肉と玉子は解るとして、野菜や米は何処から?昔話の不思議な箪笥や小槌でも有るのだろうか?
美味しく頂いた満足感に浸りながら屋敷内を散歩してみる。少々過剰な部分も有るが魔妃達は懸命に世話してくれるので不便も不満も無いが、敢えていうなら電気が無い事か…。
彼女達とは相性が悪いらしく、また夜目が利くので必要だと思った事も無かったそうだ。
小説詳細にある通り、私のサイトにあげている作品なのですが、少しずつ改訂しながら書いてますので不定期更新となります事をお赦しください