第13話 Field-9《主の部屋》(2)
一方、庭の木に吊された沙美。最初はバランス良く真横に吊されていたのだが、下に置いて有る大好物を狙って藻掻いてる内にどうにもならない状態で、顔はもう涙やら涎やら汗などでベタベタになっていた。
「あう…誰か助けてくださいまし〜。せめて鰹節だけでも〜」
この状況でまだ己の欲望が最優先ですか?
「あ〜ぁ、凄い恰好だなぁ、沙美…。丸見えだぞ…」
頭を掻きながら呆れ顔の主がやって来た。
手足を縛られ、それを繋ぐように縛ったロープを高い木の枝に掛けていた為、頭が下を向いた状態ではメイド服のスカートが完全に垂れ下がってしまっている。
「見るな〜、っていうか観ないでください。誰の所為でこんな恥ずかしい姿になってると…。ご主人様のスケベ、変態、鬼、悪魔、ヒトデナシ〜」
樹木子に生気を吸われ、困憊しているのをいい事に襲ってきた奴が言うか?ってか後半は自分の方が適切だろう?というツッコミを胸にしまい込む。
「反省が足りないみたいだね?言っとくけど今ならどんな恥ずかしい事も辛い事もやり放題でずっと俺のターンなんだけど?」
ニヤリと笑い、指をワキワキさせる。
「ちょ…待っ…目が怪しいですぅ」
ジリ…
「ヒィ…嫌…」
ジリジリ…
「イヤァァーーッ!」
バサバサバサ…
鳥達か一斉に空へと飛び立ち、これから惨劇が始まる事を告げた。
「ククク…ホラホラ、どうした?」
「はぅ…ひ…卑怯で…」
「ウリウリ…こうしたらどうだぁ?」
「い…嫌ぁ…そ…そこはぁ」
「こんなの使っちゃおうかなぁ?」
「ぁ…ああ…そ、そんなの使われたら私、私ぃ…」
【※只今お仕置きタイム絶賛開催中につき、如何わしい言葉がとびかっております】
「ヤセ我慢は良く無いぞぉ、ここなんてもうこんなになってるじゃないか…」
「ち…違うの、そんなんじゃ…ぁぁ…そんな事言わないでぇ」
「アハハ、なんだかんだ言って体は正直だなぁ、なぁ沙美?」
「ハァ…ハァ…も…もう駄目ぇ…あああーーんッ!」
散々いいように玩ばれた沙美は息も絶え絶えにぐったりとしている。
「な…何をしておられるのです旦那様?」
怪しげな叫び声を聞き付け魔妃が駆け付けてきた。
「ンフフ…ひ・み・つ」
指を振り、意味ありげな笑みでその場を後にした。
「ご…ご主人様ぁ〜もうダメですぅ〜ムニャムニャ…」
沙美の声に改めて振り向くと倒れている周りには猫じゃらしとネズミの玩具、ピクピクと痙攣しながらも鰹節を握って満足げに喉を鳴らし眠っている処を見ると乱暴された訳では無いらしい。
「ヤリますわね、旦那様…」
親指を立てた拳を主が去った方向に突き出した。
「うう…悔しいですぅ、屈辱ですぅ。私は辱められたんですぅ!」
「・・・」
下着が見えるのも構わず手足をバタバタさせる沙美と、心ここに在らずとボゥ〜っとしている霞。黒羽が目の前で手をヒラヒラさせているのにも気付いていない。
「満身創痍の相手に夜ばいに行って返り討ちにあった訳ですね…」
「ハゥ…」
図星をさされた沙美は真っ赤になって固まってしまった。
「まったく、情け無いのですよ。ネェ、霞…霞?」
「ハッ!?わ…我は主殿の事など考えて無いぞ。邪推だ、か…勘違いするな」
「あら、旦那様の事を考えていたんですか?」
自ら墓穴を掘っていた事に気付き、こちらも負けず劣らず顔を真っ赤にして俯いてしまった。
(あらあら…困りましたわねぇ)
改めて整理してみよう。
魔妃はこの屋敷を正式な手順で購入し、正面玄関から堂々と入って来たから主人と認めただけで、個人の資質によるものでは無く、手続き上でという事だ。だからこそ「適度に緊張感はお持ちになられた方が良いかと…」なのだ。
しかも魔妃以外は認める的発言は誰一人していない。まさに薄氷一枚の上に成り立つ関係だった。
霞が言っていたように、餌や獲物に傅く者は居ない。しかし現実として霞は魅入られ始め、沙美は手玉に取られていた。心の中では卑下していた人間に優位性を覆され始めている事に焦りを感じ始めていた。




