小山かぐらは知っている。
小山かぐらのプロローグです。
小山かぐらは知っている。
親友の佐原みなみは、この世界の過去で、すでに死んでしまっているということを。これは、私以外は誰も覚えてはいないし、その私すらも本人には告げていないけれどこれば事実だ。
私は彼女の遺体も、葬儀の様子も、お墓のあった位置すらも寸分たがわずに記憶している。だというのに、彼女の両親、兄弟、友人に至るまで、彼女が関わった人間全てが、彼女が生きているというイレギュラーに気づいてすらいないのだ。
だから私は、みなみが死んではいなかったのではないかと考え始めた。あれは悪い夢で本当はみなみは、死んではいなかったのではないかと。だから私だけがそういう認識をしてしまったのではないかと。
結論から言おう。
間違っていれば良かったと。
私はみなみが死んだ時のことを何度も何度も思い出した。思い出す度にそれははっきりとまるで今起きているかのように鮮明にそうして気付いたのだ。
私はみなみの葬儀の席で彼女の遺品の一つを受け取っていたことに。それは一見なんの変哲もないただのストラップなのだけれど、私とみなみの間では、友情の証に最も近いものだった。
私がそのストラップを持っていたら、みなみは既に死んでいたことになる。絶対に見つからないで欲しい。そう願いながら、ストラップを保管していた箱の蓋を開けた。
……あってしまった。
箱を開けてすぐ私の目の中に入ってきたのは、箱の中に唯一入っているみなみのストラップだけ。嫌な方の核心をついてしまった。
だから私は知っている。
佐原みなみが既に死んでいたということを。
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次から本編です。