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もしも俺のラブコメストーリーの作者が俺自身だったら。  作者: ぴっく
chapter 1 あらぬ方向へ向かう俺の物語
8/8

story 8 計画

 翌日、放課後に俺は星降を呼び出し、昨日の放課後なぜ一緒に下校するのを断ったのか、問い詰めた。

 星降は最初、言うのをためらっていたが、放課後に星降が不良と一緒にいたのを見たと話すと、観念したのか口を割った。


 「実は、私、お金を取られているんです。」

 「金?」

 「……はい。」


 丁寧に星降は言う。やっぱりそういう系かと思った。しかし、星降は続ける。


 「今から二週間くらい前のことだった。私が下校してると、あの人たちがやってきた。私は、一緒に遊びに行かない?と誘われたんです。でも私、ゲームとか上手くないし、スポーツだとしても男の人の相手としては全然自信がなかったから、断ったの。」

 

 こいつは、遊びの意味をどうやら勘違いしているようだ。


 「そうしたら、ものすごい怖い顔でふざけるなって言われたんです。もう、怖くて怖くて、つい、相手の一人をボコボコにしてしまったの。」

 「……ん?」

 「え、あ、いや、ちがくて、その、怖くなってつい手を出してしまったら――」

 「出したら?」

 「……と、止まらなくなっちゃって。気付いたら、もうその人……意識なくて、それで、それで……」

 

 急に泣きだす星降さん。というか怖えええ、星降さんマジぱねえっす。


 「それで、そいつの慰謝料っていうことか?」

 「はい、警察には黙ってやるから、十万円用意しろって。」

 「そんな重症だったのか?」

 「いや、軽い打撲程度と聞きました。失神したのも問題は無いって。でも、私が暴力に出てしまったことに変わりはないし、人にけがを負わせてしまったんですから。当然です。」

 

 なるほど、そういうことだったのか。

 確かにその話を聞く限り、星降にも責任はあるのだろう。しかし、女子生徒を脅しておいて金を巻き上げようとしている不良側も同じだ。俺がこの話に首を突っ込むのはあまり良いことではないかもしれないが、これ以上星降にメンタルディフェンスを起こされても困る。俺がDNCSに書き込みをしなければ済む話だが、なにせ4月のうちに7月くらいまでの予定を一気に書いちまったからなあ。あと二カ月の設定を、星降が快くオーケーと言ってくれるためには、今回の事件を早急に解決する必要がある。

 

 世界が滅びるなんて、見たくないからな。


 「星降?」

 「は、はい?」

 「今回の一件、俺に任せてくれないか?」

 「というと?」

 「いいから、任せとけって。」




 星降と別れ、俺はパレットと下校する。

 「相宮さん、どうするつもりですか?」

 「どうするって。きまってるだろ?こういう展開は。深夜アニメでは定番の流れだぜ。」

 「お金を集めるんですか?」

 「んなわけねえだろ!それに、うちの高校はアルバイト禁止だし、仮にお金をあいつが渡したとしても、この近辺でうろうろしている不良のことだ。また何をあいつにしてくるかわからん。」

 「確かにそうですが、じゃあどうするんですか?」

 「愚問だな。」

 一度言ってみたかったんだよな。『愚問』っていう言葉。


 「――不良をぶっ飛ばす。」


 しばらくパレットはぽかんとしていた。何か変なことでも言っただろうかと考えていると、彼女は笑いだした。


 「相宮さんが!?無理無理無理無理wwwwwやばい、草生えるwwww」

 「お前!?草生えるとかどこでそんな知識を――ていうか、俺をからかってんのか!?」

 「ごめんなさいwwwいや、いくらなんでも相宮さんが不良をぶっ飛ばすだなんてwww」

 

 なんだ、こいつ。驚きのあまり言葉が出ない。


 「ゴホン、誰も俺の力であいつをぶっ飛ばすとは言っていないだろ?」

 「誰かほかの人の力を借りるんですか?」

 「違う。わかるだろ?DNCSだよ、あれを使うんだ。」

 「ああ、なるほど。」

 「……お前、ひょっとしてバカか?」

 「バカではありません。思いつかなかっただけです。人にバカっていう人がバカなんですよ。」

 「いや……まあ、いいや。」

 こいつ、こんな性格だっただろうか。


 とにかく、これで目的は決まった。不良の方々には悪いが、星降のため、全校生徒のためにもこの町から退散してもらおう。それで世界の崩壊とやらもなくなるだろう。


 家に帰り、俺はDNCSを起動させる。


 決行は明日。場所はあの空き地。俺は実は空手黒帯で、全国空手選手権的なやつで優勝するほどの腕前。しかも、右手にはあらゆる異能の力を消す――、いや、これはさすがにやめよう。そうだな、魔法も使えることにして、火炎を纏った近接攻撃や、遠くの敵をレーザー的な何かで攻撃することも可能にしよう。

 ただし、人が死ぬような威力ではない。相手が戦意喪失するような圧倒的な力を俺が持っていることをアピールできればいいのだ。そして、相手が十分恐れをなしているところに一言。

 

 「ふっ、この町から消えな。」



 完璧だ。これで十分だろう。


 俺は実行ボタンを押し、明日訪れる俺の最初で最後の中二病系バトル物語に備え、早めに寝るのだった。

読んでいただきありがとうございました。

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