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本当の暗殺者を知る者はいない  作者: 紅羅
一章 狂乱舞 狂い乱れる 花の舞い
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第二話 新学期Ⅱ

「龍くん…鼻まだ赤いよ?」

学校に着いてからも鼻の痛みは引かず、擦っていると絆創膏を持ちながらこちらを心配そうに見ている少女がいる。


こいつは天使、じゃなくて幼馴染みでクラスメイトの神羽夜那(かんばやな)

まぁでも天使というのは彼女の代名詞と言っても間違ってはいない。

夜那は学校一の人気を誇っているからだ

気遣いできる、料理が出来る、運動神経抜群、成績良好ときたもんだ。

だが何と言っても夜那は学校一の人気を誇る要因はその可愛さがある。

ちなみに俺はガキの頃コクってフラれた苦い思い出がある。

高二になった今でも夜那は覚えているのかは定かではない。


教室内はクラス替えをした後やら何やらでざわついている。

俺はというと夜那に見られている以外ではイヤホンをして教室を一望してるだけだ。

席は教室の中央の列の一番後ろ

まさにクラス全体を眺めるには絶好の場所だ

とは言っても俺に人間観察の趣味はない

ただ見る方向がないから仕方なく教室を見回しているにすぎない。

ふと時計を見ると始業のチャイムが鳴る五分前になっていた。

「なぁ夜那、今日お前日直じゃないっけか?先生んとこ行かなくていいのか?」

「あ、そうだったね、行ってくるね」

夜那が小走りで教室を出ていくと入れ違い様に藍叉が入ってきた…


…藍叉?



教室のざわめきがどよめきに変わる

周りでは「彼女?」「篠目ってロリコンなの?」などと言う声が聞こえてくるが俺は無視する。

ちなみに藍叉は背は低く、胸もないが生憎ロリには程遠い、残念だったな男子。

「なんで中等部のお前がここ来てんだよ?」

藍叉はもとより中等部の人間が高等部の校舎に立ち寄ることはまずない。

ここ城和高校(たちわこうこう)は中高一貫の学校だ。中等部と高等部の校舎が間に道路を一本挟んで並んでいる。

つまり藍叉は始業直前に高等部の校舎まで来たのだ。

「…仕事」

「は?仕事?」

俺は一瞬、それが聞き間違いであると思った。

「うん、仕事入ったの。てことでお兄ちゃん行ってきて」

踵を返して中等部の校舎に戻ろうとする藍叉の手を掴んで自分の方を向かせる。

「ちょっと待て。依頼は来てないだろ?どういうことだ?」

一瞬、藍叉の目が泳いだ。

「藍叉?」

藍叉は仕事内容が記された書簡を俺に渡した。

「書簡…ってことは大爺様が直接?そんなにヤバイもんなのか?」

藍叉は首を縦に振るのでもなく黙って俯いていた。

俺が書簡に目を通そうとすると始業のチャイムが鳴った。

「おっと、時間か…。この書簡は俺が持っとく。…てかお前どうやって帰るの?」

「五法式で帰るからいい」

「帰るからいい…ってむやみに暗殺五法式使うな

!」

俺が言い終える頃にはすでに藍叉は教室を出ていた。

「あのバカ…何のための五法式だよ」


暗殺者が修得している技の中に暗殺式というのがある。

これはまぁ必須技法とでも言うべきか

暗殺五法式は俺達暗殺者(アサシン)としての常識でその名の通り五つの法式がある。

アサシンはその法式を「翳衝」と呼ぶ。

打撃による対象の骨を塵にする「一鉄(いってつ)

視覚、聴覚、嗅覚を強化し対象の位置を確認するいわばGPSの役割を果たす「双核臓(そうかくぞう)

影から影へジャンプする移動法「三ツ(みつかげ)

基本暗殺術で死因を残さず幻影の四本の光糸を操り心臓に突き刺す「四刺(しし)

気配と殺気を消す「五消(ごしょう)

基本的にはこの翳衝で対象を暗殺することが可能だ。

要人や裏の世界での人間はアサシン対策なんてもんをすることがあるからその時はもう少し複雑な暗殺術を要するが、普段は使うことなんてない。



始業のチャイムが鳴って暫くして先生と夜那が教室に入ってきた。

「はーい皆おはよう。クラスが変わって浮かれてるかもしれないが春休みの宿題を提出してもらうぞー」

どうやら担任は学校で最年少にして最凶の教師に当たったようだ。

囘木和実(まわぎなごみ)

21歳の美人教師だが、名前とは正反対なほどドS

ドMもとい一部の生徒に人気はある

「おーい畑中、隠れてやってるつもりだろうがバレてるぞ。宿題やってないな、後で職員室」

――――早速犠牲者が出た

俺はちゃんと宿題をやってきていたので課題の教材を前の席に渡して何てことない顔をしていると、囘木先生が俺を睨んでいた

「篠目、イヤホンとポケットに入っている音楽プレーヤー没収な、明明後日の放課後職員室に取りに来い」

――え?

耳元に手を当てると細い感触があった。

ずっとイヤホンをしていたことを忘れていた。

そしてなぜ明明後日なんだ…


課題提出及び没収も終わり、午後の高等部での入学式と新入生歓迎会の打ち合わせが始まった。



ところで、今回の依頼は何かが変だ。

本来依頼は依頼主がアサシンに仕事を頼み、アサシンが直接依頼の正当性を審議する暗殺会に文書を提出する。

審議の終わった文書は間者を通じて提出したアサシンの元に結果と共に帰ってくる。

暗殺会の了承を得た依頼はそのとき初めて仕事受諾となる。

ところが今回は俺達が受けた依頼でもないのに大爺様、つまり俺と藍叉の祖父にして暗殺会会長の篠目白虎(しのめはくとら)が藍叉に依頼を持ってきた。

―――一体、大爺様は何を考えている…?

こんな異例の事態に俺は色んなことを考えていた


「篠目!」


俺は怒声に近い声で呼ばれたことに気づいた

「何度も呼んでるのにシカトとはいい度胸だ。ずっと上の空だったようだからこれからお前と神羽は会場設営にあたれ」

「…はい」



依頼は午後は暇な藍叉に任せることにして俺は夜那と体育館へ向かった。

結局書簡を見ることはできなかった。

そんな難しい仕事でもないとは思うし、あいつなら大丈夫なはずだ。

「そういえば職員室行くときに藍叉ちゃんとすれ違った時何だか深刻そうな顔してたけど大丈夫?」

思案に耽っている俺を現実に呼び戻したのは夜那の一言だった。

「あ、ああ。何でもない。大したことじゃないよ」

不意を突かれてたじろいでしまった。

「ホント?もしも何かあったらあたしに相談して?何も出来ないかもしれないけど話くらいは聞くから、ね?」

「ああ。その時はよろしくな」

夜那はやはり優しい。

だけどそんな夜那を巻き込むわけにはいかなかった。

生々しくて血にまみれた世界をあいつに見せるわけにはいかない。

だから俺はずっと俺の本性を隠し通している。

いつかは言うときが来るのだと思いながら。

だが夜那のおかげで吹っ切れた。

俺達は軽い足取りで体育館へ向かった


だが、そのつもりではいたが何か胸騒ぎがしたのに俺自身気付くことはなかった

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