絵の天才
今回は聡くん視点で書きました^^
まだ小学生である僕の弟の友達に絵の天才と呼ばれる江東という少年がいた。彼は教室ではほとんどといっていいほど自分から話すことはなく、好きな人がいるわけでもなく、自分に話しかけてきたクラスメートと受け身で会話してばかりでたまに面白いことを言うこともあったがあまり会話が発展することはなくあまり目立たない生徒で、休み時間は暇さえあればスケッチブックと色えんぴつを机の下から取り出し夢中で一人でなにか書いていたらしい。それは有名なTV番組のアニメキャラクターだったり、犬猫や動物園にいる動物の絵であったり、先生やクラスメートの顔であったりといろいろなもので周囲の生徒たちに褒められて照れ笑いを浮かべていることがよくあったらしい。
僕は美術館に行ったり図書館に行ったりするのが好きで、特に一人行動が好きというわけでもないが身軽にどこかへ出かけたいと思うと誰も誘わず風のように目的地に向かいお小遣いを使っていろんな物を見たり聞いたりするのが好きだった。
ある日彼は、小学校低学年の絵の市のコンクールで金賞をもらった。地元の美術館の展覧会を見に行った時に知った。北海道で生産が盛んな小麦の生産地の見事な風景画でそこは日本とは思えないほど山が尖っていた。そこでたまたまばったり会った江東くんによると、夏休みの旅行で両親に北海道に連れて行ってもらい、両親が旅行している時にその絵を2週間かけて書いたらしい。山々をバックに金色の無数の小麦が畑で夕焼けに照らされている様子が事細かに描かれており、細心の注意を払いながら細かいところまで神経を使っていることが分かった。それを観て僕は、この人は間違いなく天才だと思った。