帰宅時
キーンコーンカーンコーン
教室のステレオから学校の鐘が鳴る音がした。
ホームルームを終えた後
虫歯を抜いてもらうために歯医者に予約をしてあってその時間が迫っていたため急いで教室を出て昇降口の下駄箱の前で靴を履きかえていた。私は恐る恐る下履きを下駄箱から取り出して中を覗き、ほっとした。
ケン太くんを狙っている女子のなれなれしい手紙が靴の中に入っていないかを確認するのが下校時の日課になりつつあった。
「お、珍しい。琴乃じゃん、よかったら一緒に帰らない?」
今日は部活動もなく聡くんもちょうど帰るところで、後から別の知らない男子が一人二人付いてくるようだった。
また、別の下駄箱のところからドタドタがやがやする音やお互いをからかい合う声がしており、他にも何人か一緒のようだ。
「今日は急いでるからさき行くね」
私はさっさと靴を履きかえると小走りで校門へ向かった。
人が嫌いってわけじゃないけどどうも知らない人は苦手だし、なるべく人づきあいを避けたいと思うのは自分でもなんでだかよく分からなかったが、平気で依存するばかりで相手への配慮のかけらも持てない薄っぺらい関係を他者と築ける人ばかりがどうも多いのが癪で仕方が無かったからかもしれない。
ケン太くんと帰り道を一緒にすることが多かったが、それはケン太くんが友人を厳選していたからであって、誰とも上手く付き合えて来るもの拒まずの聡くんとはなかなかおしゃべりしたりお互いの情報を交換したりするきっかけがここのところ急に掴めなくなったなとふと思った。