小学生代理(6)
小学生に戻りたい宣言をされた日から数日が経ち、ようやく美黒は「今日から小学3年生」になった。 赤いランドセル、悲しくも小学3年生の平均身長をジャストで獲得しており、制服に違和感は無しである。
「ちょ、な、なんか変じゃない?」
「安心しろ! 何から何まで小学3年生だぞ!」
「……どういう意味!? ばか!」
そんな談笑は一先ず切り上げ、俺は朝食の準備に向かった、いつも通りの歯車、変わったことは美黒が向かう学校先くらいのこと。
ちなみにいうと、父は物心付いた頃には居なく、母は他界したと聞いた、うむ、聞いたのだ、だから顔を見たこともないし、今更見たいやら会いたい駄々こねることは無い、そんな瑞山家は親戚にお金を助けられながら成り立っていた。
……にしても、つくづく思う、親っていうのは大変だ、妹とは言え、ここまで育ててきたのは正真正銘、俺であり、萌月は引きこもり少女、美黒は暴力娘、そんな子に育てた覚えは無いぞ、っと叫んでやりたいが、きっと俺が原因なんだろう、……いや、願わくば、10%ほどは母か父の遺伝であることを……。
「よし、こんなもんか、美黒、下の妹呼んできてくれ」
「あいあい~」
適当に返事をしながら新聞を開いて動こうとしない、お前は銭湯にでもいるおっさんかよ。
「あのな……」
「どうせ起きないでしょ」
「いいから行け」
「嫌、っと言ったら……?」
「そんな戦闘アニメの切り抜きワンシーンみたいな台詞は期待しておりません」
「もー、うっさいなー」
「小3らしいわ……」
「そう、ありがと、、、もゆづきぃーめしぃー」
小3らしくねぇーー! モロ中学のギャルだギャル、くっそ、先が思いやられるわ。
「ところで、小3らしい私からクイズクイズ」
「?」
「Hになればなるほど硬くなるものってなーんだ」
「何を言い出すこのドスケベ中学生、お前やっぱおっさんか何かか」
「真面目に答えてみて、ね、ね」
子供らしくすがりつくように、上目遣いできらきら目を輝かせながらこっちを見ていた、にしても、この問題、どう考えても一直線の答えではないだろう、考えてみれば分かる……そうだな…………んー……あ、そうか。
「鉛筆」
「うわ、答えマジで当てちゃった、期待大ハズレ」
「あのな……小3はこんなセクハラ地味た問題は出さないからな、もっとこう、パンはパンでも食べられないパンはなーんだ、とかそんな簡単なものをだな」
「うっさい、どーてー」
「……」
なんて会話を挟み、時間は過ぎて行った、しばらくして美黒は公言通りに桜光小学校へ、萌月は二度寝へ、俺は高校へ向かうべく戸締りを終わらせ、萌月に一言かけてから家を出るのだった。