明日もさわやかに(2)
こうして、美黒の小学生へ戻りたい事件が幕を閉じた、たった一ヶ月程度のことだったが、本当に長く感じた。
あれから本当に坂兎からの一切の関係は無くなり――。
「……おはよう、お兄ちゃん」
「おう、萌月も起こしに行ってやれよ」
「えーどうせ起きないし」
美黒は中学の制服を身にまとい、右手には通学鞄を手にしている。 今日からまた「中学生」そう、もう小学生代理という役割は終わり、中学二年生として学校を通うこととなる。
一ヶ月前と変わったことといえば……輝山先輩か。
先輩の生死は分からない、あの日、レインボー坂兎に送ってもらう際、七海ちゃんのお墓と輝山先輩の生死を聞いたのだが、分かったのはお墓のことだけ、先輩はあの時撃たれてから姿を消したという。
「もーゆーつーきぃー!おきろーってのー!」
結局起こしてるのかよ。
あいつらの朝飯、トーストに各種ジャムという手抜きだが、意外と文句言わず食べてくれる朝食の一つである、たまに頑張ってチャーハンを作り等すればにんにく入れてるとかたまねぎがどうだとかで一口も食べようとしない、何が口臭だ、牛乳飲めよ。
それにしても……俺は美黒の役に立てたのだろうか……先輩に萌月、レインボー坂兎、俺一人だと何もできなかった、しかも出来たといってもあんな挑発に乗ることだけ、兄として情けない限りだ。
「あとさ……えーと、お兄ちゃん」
いつの前にか萌月のゴミ屋敷から抜けてきていた美黒が俺のTシャツの裾を引っ張りながら目を伏せている。
「ありがとね、本当に、ありがとう」
「……ありがとうのチューは無いのか?」
「ちょーしに乗んな、バーカ」
いや、これでいいんだな。
美黒は時計と睨めっこしながら食パンにイチゴジャムを塗っている、萌月はいつものように布団の中だろう、低血圧と言い訳してたが……。
「そうだ、また今度七海ちゃんのお墓参りいくぞ」
「え……」
「場所は聞いた、行きたくないなら放っておくが」
「ううん……行く、絶対行く!」
「了解、さっさと食え、遅刻するぞ」
「お兄ちゃんもね」
一ヶ月前よりは可愛げが出てる気が……まあいいか。
――ピンポーン
瑞山家のインターホンが鳴り、来客者を知らせられる、この時間に? 多分鼎だろうが。
「今でまーす」
慣れた足取りで玄関に向かい靴の踵を踏みつつ玄関扉を開ける。
「鼎よ、来るのが20分ばかり早くな――――――せんぱ、ええ!?」
「よっ、弥一少年、久しいな」
良かった、本当に良かった、もういつも通りだ。




