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明日もさわやかに(1)


 パァン。



 耳がキーンとしている、引き金を引いて、そうか、死んだのか? 本当にあっけなかったな、痛みも感じない。





「……あ?」



 目を開ければ暗闇が広がっていて、非常口と書かれた看板に、男が咥えたタバコの灯りが見える。


 隣を見ればクスクスと笑う同年代くらいの男に……。


「はっはっは! 気に入ったぞ、気に入ったぞお前、名は……確か弥一だったか?」


「……」


「いい反応だ、最初から弾などこめてはいない、所謂空砲ということだ」


「……」


「もしあの時言い訳でも漏らして死ぬことを躊躇えば、その場で部下にお前の妹を殺させていたが、見事に賭けに勝ったな、今時の若者にしては面白い」


「父さん楽しそうだね、面白いでしょ、弥一君は」


「ああ、約束だ、お前の周りには一切の干渉は控えよう」


「こんなのでいいのかよ……」


 あまりにも軽すぎる、命をゴミのように扱う男だからこそ言ってのけるようなことなんだろうが……。


「どうだ? 俺の部下にでもならんか? 給料は弾むぞ」


「断る、ブラック企業などには関わりたくはない」


「ふっ、まあいい」


 硬直していた筋肉が一気に解れていく、こんな上手いこと行ってよかったのか……夢、じゃないよな……?


「さっさと消えろ、俺の気が変わらん内に帰れ」


「……」


 思わずありがとうと言ってしまいそうだったが、礼を言う必要などない、ここはさっさと帰るのがいいだろう、もしかするとこれはあいつの嘘で、妹は今にも黒スーツに襲われているかもしれない。


「弥一君、送っていくよ」


「……サンキュー」


 こいつには、礼言ってもいいよな。




 間もなく我が家に帰ってきた、学校に着いてからは一時間も経たないような出来事だったが、もう外が明るくなってもいいんじゃないか? ってほどに時間を使った感覚だった。


 今日からいつも通り、いつも通りなんだ。


「瑞山弥一! 今、帰りました!」


 安堵のあまり、おどけて帰宅する、ドアを開け放ち、靴をだらしなく脱ぎ捨て。


「ど、どこに行ってたの…………」


 リビングにもどれば、目を真っ赤にして止まることが無さそうな涙をこぼしている妹、美黒が迎えてくれた、もう心配は無いっと抱きしめたくなる衝動が柄にも無く湧き出てくるが……。


「明日から普通に中学生だ、勉強全部取り戻せよ」


「……バカ、バカバカバーーーカ!!!!」


 罵った後、不安を消し飛ばすように俺のジャージをぐっしょりに濡らすまで泣いていた。


 近所迷惑すぎて正直止めて欲しいが、泣かせておこう。

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