黒い。雛罌粟の花(9)
「俺は生きるのに必死だ、お前の妹がいなければ数十億という金が泡のように消えていく、その損害は俺の生きていく上でマイナスになる、それを避けるためにお前の妹が必要だ、だが、もう用済みだ、使った後のゴミは処理するのが当たり前だ」
「……自分以外はどうでもいい、そんなところですか」
「そうだ、部下や友人ましてや妻や子も所詮使い捨てのコマだ」
「…………命を何だと思ってやがる」
「化けの皮が剥がれたか、いいぞ、その口の悪さは俺にとってむしろ心地いい」
「人間は死んでいく、死ぬ前に必死に生きるのも人間だ、いつ死のうがいつ殺されようがそれがそいつの運命だ、人間は死ぬために生きている、お前も死ぬ為に生きているんだろう?」
「たしかにな、だが死ぬ前に満足できる人生ってものを作っていくのがまた人間だろうが」
「なら、それでいい、俺の人生というもの一つの支えが七海やお前の妹というわけだ、感謝する」
何を言っても無駄なのか? かと言って暴力では解決しない、頭の血管がぶち切れそうなほどにイライラしてくるが、ここはやはり話すしかないだろう。
「……なら、何のために七海ちゃんを……」
「一時の流れに決まっている、人間の三大欲求、知らないわけは無いだろう、それに従い、出来た子があいつだ」
「七海って名前までつけて自分の娘だぞ、かわいいと思わなかったのか?」
「無い、あいつは生まれた瞬間から死ぬと決まったまた可愛そうな命だ、死ぬのが俺よりも早かったというだけだ」
「でも、七海って名前、父さんが付けたじゃない」
意義アリとでも言うように横で詰まらなそうに聞いていた雪虹栄こと、レインボー坂兎がくすくすと笑いながら呟く。
「余計なことは言わなくていい」
その言葉と同時に口にくわえていたタバコを雪虹栄に投げていた、照れているのか?
「お前は何が言いたい? 目的は何だ?」
「…………俺の妹に、いや、俺の周りのやつらにこれ以上手を出さないでくれ」
「自分勝手なやつだ、お前のような若者は久しぶりに出会ったが、度胸だけは認めてやる」
「……何を聞いても答えを返さないのは主義ですか?」
「はっは、人を馬鹿にしたその言い回しといい、引かない口調といい、腹が立つ若者だ」
そっくりそのまま返してやりたい。
「何を言っても引く気は無さそうだな、なら、これをお前に貸してやる」
そういうと、何か重みのあるような鉄の塊が地面を転がっていた。
「……」
「テレビかドラマで見て使い方は知っているだろう、拳銃だ」
「どうしろと?」
「お前の命に免じて、お前の愉快な仲間達の命を保障しよう、どうだ? 偉そうに言っていたが、できるか?」
……まあ、こうなっても別に可笑しくはないと思っていたが、本当になるとはな……。
投げられた拳銃を拾うとストッパーを解除する、もう引き金を引くだけで弾が出るはずだ……。
「どうした? できないのか? 口だけか、まあ、そうだろうな、所詮そんなものだ」
アニメやドラマ的な展開だからまず無いだろうと高をくくっていたが……全く、詰まらん人生だったな。
親が誰か分からず、おじさんには恩返しできず、美黒、萌月の兄としてもダメだ、学校でも鼎や輝山先輩のような変人でしか友人と呼べるものはできなかった。
いい人生とは言えない、俺は臆病で、弱く、正直人間のクズと言っても過言では無い、すまないな、美黒、萌月、こんなことで死ぬなんて本当に馬鹿げているが、俺をお前らを守るにはこうでもしないといけないらしい。 こんな人生本当にくだらなかったな。
……だが、後悔はしていない。
「世話になったな、レインボー坂兎」
「ははは、それほどでも」
俺はそのまま銃口を頭に当て、少し硬いな、っと引き金に内心で文句を言いながら、引き金を引いた。




