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黒い。雛罌粟の花(6)


「み、みゆちゃんは……大丈夫、だよね?」


「何度も言わせるなよ、大丈夫だ」


 肩に一発、脇腹に一発、普通なら一発食らった時点で処置しなければ失血死になり、消毒をしなければ細菌に悩まされることになる、美黒を送り届けるのに1時間、この家から去るのに30分としても……。


 ……悔いのないように妹を守れ、輝山先輩は言った、このままでは悔やみきれない結果になるはずだ。


「もう、今日は休め、その服は洗濯に出しておく」


「……ありがとう」


「あと、そうだな、全裸とはなんとも嬉しいサービスだな、しかも靴下だけは脱がないとはよく分かっている」


「……? って、うわわ! バカッ! 変態! さっさと出てけバカ兄貴!」


 美黒は顔を真っ赤にしながら目覚まし時計やら国語辞典やら当たり所次第では重症を負うような物を投げつけてくる。お元気そうでなによりです。



「……やーにぃは、これからどうするの?」


 美黒の部屋を退出せざるを得なくなった後、部屋を出てすぐにジト目の妹様が待ち構えていた。


「盗み聞きとは感心しないな」


「……」


「…………そうだな、俺は少し家を空ける、すぐに戻ってくるから心配はするな」


「……死亡フラグ」


「俺が死んだら死体は海に流してくれ」


「……海洋汚染に貢献するつもりはないわ」


「とにかく、俺がいない間は美黒を頼んだ」


「……ヨーソロー」


 萌月は敬礼をするとそのままキビキビと自室に帰っていく。


 さて、どこに行くべきか……七海ちゃんの父親と話をしたい、一人の学生がブラック企業のTOPに説教など馬鹿げてはいるが、話の通じる相手ならこの状況を変えることはできるはずだ。


 その時、ふと七海ちゃんの兄と名乗っていた人物を思い出す。


「坂兎虹……なんだったか、コードネームレインボー坂兎?」


 リビングに降り、時計を見ればいつの間にか日はとっくに落ちて外は暗闇に満ちる時間である。 先輩が黒スーツの男を数人殺してしまっているため、下手に外に出て美黒の身内だと知れれば容赦無く殺されるだろう。


「なら都合はいいかもな」


 血まみれの美黒の服を脱衣所に投げつけ、コップに水を注ぎ一息付く。


 これは賭けで、普通に考えれば馬鹿げた話だが、以前、俺がレインボー坂兎に会った時、結果的にはあいつに遭遇して俺が殺されるのを阻止した、いわば命の恩人。


 あいつはこの状況を傍観し、楽しんでいると見て間違いは無いだろう、なら今外に出て俺の命が危なくなる状況を作ったならどうなる? また俺の前に姿を現すんじゃないか?


 普通に考えればNOだ。以心伝心しているわけでもあるまいしそんな都合の良い話は無い。


 この時の俺はよほど行き詰っていたようだ。


「さて、行くか」


 携帯だけを手にして玄関へ向かう、外は暗い、逃げるとしてもこちらが遅れを出せば死ぬ、とにかく失敗はできない。



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