小学生代理(3)
第一章
俺には二人の妹がいるのだが、今回、突拍子なことを抜かしだしたのが、長女、瑞山美黒であり、中学一年生だ。
遺伝なのかどうか分からないが、容姿は良い方だと思われる、……親バカならぬ兄バカだな。瞳は日本人の大半が持つ黒であり、大きく開いた目に二重瞼、そして、美黒のチャームポイントとも言えるさらさらでしっとりとした純黒な髪、それを不思議なまでに綺麗に結んだツインテール。
自慢の妹、っと賞賛しすぎると気色が悪いので、汚点を一つ、貧乳、雑、乱暴、頭が悪い、……名前が美黒というだけに親からの呪いか何かなのか、後数ヶ月で中学2年生となろう者が、身長130cmとは如何に。
………………さて、俺は快く承諾したはいいものの、話が読めないでいた、小学校時代にやらなければならないことをやり忘れたとか、小学生時代に埋めたタイムカプセルに周りの忠告を無視し、好物のアンパンをぶち込み、今更後悔しきれないとか。なんにせよ、何か大きな理由でもなければ小学生に戻りたいだなんて訳のわからないことは言わないだろう。
そう冷静に分析した俺はもう一度詳しく美黒と会話の場を設けることにする。
「みーくろー、はいるぞー」
善は急げ。俺はすぐさま美黒の部屋に行き、一声かけて入室した。
「ちょ、ば、入んな!!」
締め出された。
兄、締め出しコンテストが開催されたらその日でその記録を塗り替えることが不可能な記録をたたき出すほどまでの速さだった。我が妹でありながらお見事である。
……いや、違う違う。
ギャラが出るわけでもないのにボケをかまし、ツッコミが入らない悲しさを覚えつつ、我に返る。 入り方が悪かったのだろうか、例えば、用件を言いながら何事も無かったように入るとか?
「お前、しょうがくせ」
「ちょ、ば、入んな死ね!!」
「…………」
せっかくの作り笑顔が台無しだ、あと、変に言葉切られたからおもむろに「お前しょうが臭いぞ」っと言いに来た嫌な兄みたいになってしまった。それに、手をドアノブに置いていたからいいものの、開いた隙間に指を持っていこうものならその指は勢いよく閉じられたドアの犠牲となり…………考えたくも無い。
「開けるぞー」
「ちょ、やめ!」
がちゃんっ!
「そういうなって」
がちゃんっ!
「あのな……こちとら」
がちゃんっ!
壊れるんじゃないかと心配しそうになるほどのドアの開閉音が響き、このままじゃ埒があかない、馬鹿みたいに扉を開けようとするほうが間違っているのだ、なら、ちょっと単純であるが、ここは諦める不利をし、安心させたところを突こう。深呼吸し、わざと大きな声で言葉を発しようとしたとき、美黒の部屋から「次したら手首の血管使い物にならなくするから」っと脅しをかけられてしまった。アレか?血管だけに欠陥品に、ていうオチ……なわけないか。
「仕方ないな、またあとで話すわー」
「…………」
わざと部屋から遠ざかるように、不自然でないように足音を立てる。勿論、その辺の芸当は一応は習得済みだ。そして、ある程度はなれたところで、引き返した、何故ここまでするかって?そりゃ、開けるなと言われたら開けたくなるのが性。人間なんてそんなものだ。
「……」
心の中で掛け声をかけ、音がしない程度にドアノブに手をかけた。そして、勢いよく――――
がちゃりっ!!
「え……?」
「あ…………」
まあ、開けたくなるのが人間の性、とかかっこよく言ったものだが、実のところ、あいつ着替えでもしてるんじゃないか?という期待と、ツンツンしてばっかりなあいつの恥らう姿が見たかった、という男なら誰でもある心、言うなればスケベ心とでも言うか、そんなところである。
「…………っ」
「ははは……似合ってるんじゃないかー……はは…………」
「っ……っ……」
俺の目前にいるのは、一年前の美黒っとでもいうように、見たことの無い小学校の制服と、ランドセル、通学帽であった、ランドセルにはテンプレのようにリコーダーが刺さっており、断崖絶壁の胸には桜光小学校っと名があり、その隣に、水山美黒っと書いてある。(瑞では無いのはおそらく、小学校で習うことが無い漢字だからだろう)
「ていうか……そんなものどこで……」
っと言葉を発した直後、美黒は壁のポスターを留めていた画鋲を引っこ抜いたかと思えば、いつの間にやら懐に入られており、腕を一刺し。
「ぐぎっ!?」
「早くでてけっ!ばかばか!」
痛みでどうでもよくなった俺はさっさと美黒の部屋から退出を決め込んだのだった。




