シロツメクサいっぱい(3)
彼女のお友達になってください発言を聞いた後、以前以上に彼女がベッドに腰掛けてくる時間が増えていった。
私は相変わらず話すことができない、自分でも不思議に思う、口を怪我しているのだろう。
「それにしても病院食はマズイの、これ幼児のゲロなの」
「……」
そんな固形的な嘔吐物幼児は、というか人間には吐き出せそうに無いと思うけど……。
「そういえば、足はベッキベキでお腹はザクザクで頭はシットリってあなたのお兄さんに聞いたの」
「……」
お菓子の売り文句みたいね。
こんな会話、いや、独り言が毎日何時間も続けられていた。 彼女は何かあれば逐一報告してくるし、今まで経験した愉快だったことに、美味しいお菓子の話、私が言葉を返せないのを知っていて淡々と話している様子は赤子に絵本を読み聞かせる母親のようだった。
っと、彼女が私の傍に居ない日のこと、きっと彼女は検査か何かだろうと思いつつ、毎日やってくるお兄ちゃんと萌月の顔を見ていた。
萌月は相変わらずムスっとしている。お兄ちゃんは……普通。
「あ、そうそう、家にお前の同級生が来たぞ」
その言葉を聞いた瞬間胸の奥がズキリと痛むのを感じた。
「お前が前言ってた一緒に走ってる子達だな、妹さん大丈夫ですか? ってこの花も頂いたものだ、感謝しとけよ」
よくのこのこと私の前に現れたものね、妹さん大丈夫ですか? いえゼンゼン、私今、話せないし指一本も動かす気力が沸かない。 人一人殺そうとして平然とまた顔を見せるって本当にいい度胸ね、絶対に殺すわ。
「それにしてもドジだよな、エスカレーター踏み外すとはまたレベルの高いドジっ子だぞ」
またズキンと胸が痛い。 事情を知らなければそう思うはず、仕方ない。
「ま、早く治せよな」
換えられた花を見ればそれだけで気持ち悪くなる、お兄ちゃんの言葉を思い出すと胸が痛い、そして足を見れば苛立ちが沸いてくる。……はぁ、早く治らないかな、怪我。
「……待て、美黒? どうした?」
……?
「お、お兄ちゃんナースコールナースコール!」
「分かっている連打してるぞ!」
それからしばらくしてお兄ちゃんとお医者様の会話を耳にしていると、私は見るからに呼吸が荒くなって体中が痙攣してたらしい。「らしい」というのは私にはよく分からない、もはやコレが自分の体じゃないんじゃないかっと思えるほどに。
あと聞いているともう一つ分かったことが、私は本当はもう喋れるそうだ、ただ、精神的なダメージが大きく、それに関しては心の治療も必要とかなんとか。
「大丈夫?」
そして彼女の声。
「……」
もう喋られるはず、けど声が出ない、口ってどうやって動かしたっけ、それに喋るとき舌も動かすんだったかな?
「顔色が悪いの、今日はゆっくり休むといいの」
とはいえ常時ベッドの横になっているんですけど。
「……今日ね、私またパパに会ってきたの」
「……」
「顔合わせてすぐに相変わらず可愛くないなって言われたの、乙女心が悲鳴物なの」
顔を見てみれば普通にかわいい、よほど見る目が無いのだろう。
「……今日は寝るの、おやすみなさい」
彼女は寂しそうにそういった後、自分のベッドに戻っていった。




