シロツメクサいっぱい(2)
私の頭の中にはじわりじわりと黒く、ドス黒い感情が渦巻いていた、どう殺そうか、ばれないように殺さなくちゃいけないからね。
自然に推理物のドラマやアニメを思い出す、犯人は巧みに逃げようとする、それにトリックもとても考えられていて素晴らしい、今まで見てきたものを全部組み上げ、形にすればきっと犯人は分からないほどに凄い殺人ができる。
自分でも狂っているのは分かっていた、ただ、許せなかった、あいつらは人じゃない、平気でこんなことをするなんて同じ人間なはずがない。
一歩間違えれば死んでいた……そう……。
死がとても近かったというのにも今更になって怖くなっている、枯れきったと思っていた涙がもう一度流れ出し頬を濡らす、クソ……クソッ……。
それから数日が経ち、毎日やってくるお兄ちゃんと萌月の声がようやく聞き取れるようになった。
私の頭の中では殺人のトリックをひたすらに練っていてその時誰が何を言っていたかは覚えていない。
そして、それからも数日が経ち、その頃同じ病室に年下の少女がいるということを知った。 名は知らない、それよりも私は忙しい。
毎日来る兄の顔は徐々に酷いものになって行き、突然頬を叩かれたときもあった、叩かれたときに初めて気が付いたけど、私は小言で「殺す」っと何度も言っていたそうだ。
「お兄さん、その人」
「ああ……うちの妹だよ」
「その人、とても怖いの」
「……そうだな、こいつは今悪魔にでも取り憑かれているんだろう、気にしないでくれ」
お兄ちゃんの声と、女の子の声がする。 女の子は妙な喋り方、お兄ちゃんはいつも通り偉そうな喋り方。
「無理なの、夜にね殺す殺す五月蝿いの」
「……そんな時は頬引っ叩いてやってくれ」
「いいの? 怪我だらけだけど」
「俺が許可しよう、ただし、頬な、その鼻に付いてるのとか引っこ抜くなよ、あと、体はできるだけ触らないで欲しい、色々骨折して中身がパンドラの箱なんでね」
「練習してもいい?」
「ああ、構わん」
ああ、鬱陶しいな……。
ペチンッ っと控えめなビンタの音が聞こえた、少し、痛い。
◆
その夜、その子がビンタしに私のベッドの横に来ていた、痛い。
「もしもし、あなた、そんなに死にたいの?」
「……」
ビンタした後はこんなことを聞いてきた、口は動かせない、今まで殺すって呟けてたのが奇跡に思えた。 それに私は殺したいのだ、死にたいわけじゃない。
「不思議そうな顔してるの、でも、本心では死にたいと思ってる」
イライラしてくる、何が言いたいのこのチビ。
「私のお話、聞いてくれる?」
そう言ってベッドに腰掛けて来ていた、正直鬱陶しい。ベッドの揺れでさえ体は痛むというのに。
私よりも小さいその子は淡々と喋り始めていた、うざいうざいうざい。頭の中でこの言葉で埋め尽くされていたけれど、数分してから耳を傾けるようになっていて、絵本を読み聞かされる子供のようにおとなしく聞いていた。
「私が生まれてきた理由はちょっと特別で、今入院しているのも計画通りらしいの」
「お医者さまからは、パパに叩かれた痕は見せびらかすな、って言われてたけど見せてあげるの」
その子は淡々と喋りながらも服を脱いでいった、こいつ露出狂か、と思わせる前に思わず息を飲んだ。 薄く黒い紫色のアザが数箇所、しかも当たり前のように目に付くところはしっかりと避けている、縫ったような痕もあれば焼け爛れた痕も見え、肉が削がれたような箇所に数本の針が刺さったような痕。
「パパにとって私はお人形さんなの」
そう言うとゆっくりと服を着ていく、こんな子が、何の罪も無いのにこんなになるまで。一体何が。
「お友達になってほしいの」
そして、突然そんなことを言い出した。私はゆっくり頷きながら顔を涙でいっぱいにした。




