一時間目:りゅーげ(4)
――翌日の朝。
何かがありそう、調べる必要がある、とはいえ手段がとても限られている、まず一つ目はインターネット。 親戚のおじさんが今の世の中パソコンの一台や二台なければ流行に乗り遅れる、っと強引に置いていったパソコンがあった、最新のものと比べれば決していいものではないが、インターネットで検索程度なら十分に役に立つ。
他の手段といえば、美黒が入院していた病院、そして現在進行形で坂兎七海が入院中であろう病院を尋ね、意識がまだ無いようであれば看護婦等に話を聞こう。
学生の俺ができるとすればこのくらいだ、警察に知り合いが一人二人いれば話は別だが、いまさらそんな因果をうらんでも仕方が無いというものだ。
「美黒は学校に送ったし、あとは……」
ふと時計に目をやる、まだ朝の8時40分。
学校は? っと言われれば無いとは言えない。 今はやりたいことがあるのだ、だからかわいい後輩がベタベタとくっついて来るむふふな展開であろうが、ソレを無視するのも男。
――――ピンポーン。
都合のよすぎるタイミングでインターホンが家中に響いた。
鼎である。
「今日も休むんですか? いい加減授業でないと頭おバカになりますよ?」
挑発するようにぷくくっと含み笑いをしながらの罵倒。嫌よ嫌よと良いの内、ツンデレ、何か違うな、ただ構って欲しいのか?
「今日は休む、担任には痔が悪化したと言っておいてくれ」
「ぢ? じ? 痔?」
「痔を甘く見るなよ、痛みだけでなく生活習慣病が」
「わかったわかった。とりあえず休みですね?」
「ああ……」
インターホン越しに伝えられ少々不満っぽいが何も聞かずに登校してくれたようだ。 たまにこういった休みを取る俺に毎回毎回休む事情を説明する鼎の気持ちになってみるとそれはそれで面倒くさそうだが、そこまで気を回している場合では無いのだ、感謝感激雨霰とはこのこと。
さて、早速だが、検索をかけてみることにしよう、いくらインターネットとはいえ、本物の情報とは限らないが、火の無い所に煙は立たぬ。何も知らないより噂や嘘程度は知っていると何かと便利だろう。
パソコンの電源を入れ起動待ちの間にコーヒーを入れる、どうでもいいことだが、いつかは秘書のような存在がコーヒーを注いでくれるような立場になりたいと思わせる瞬間がこの時だった。何よりコーヒーは自分でいれると何かと切ない、というか、そこまで美味しくない。
インスタントコーヒーを片手にパソコン前まで戻るととっくに起動が終わっているようだ。 慣れた手つきでインターネットを開くと、まず検索する言葉を考える。
「坂兎七海? いや、桜光小学校か?」
一旦悩んでみたが、別に時間はあるし、そもそも両方調べる気でいたのだ、坂兎七海から調べてみよう。
遅いとも早いとも言えない速度で「坂兎七海」っと入れ検索を開始する。ページが切り替えられ、どうやらHITしてくれたようだ、ただ、思わず首を傾げてしまった。普通名前で検索を書ければ同姓同名の方が作ったブログか、占い、赤子の命名等のことが出てくるはずだが、HITしたのがソレではなく、某掲示板が上から3つのみだった。
それだけでももはやおかしいのだが、掲示板を開けばそこはまた違ったものが見えていた。
1 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:07 ID:XUrXX4pXX
結局坂兎の娘ってどうなったの? 虐待でチーンか?
2 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:09 IDXXrX2X9pXX
タヒんでたらあの会社ないでしょ。
3 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:12 ID:XrrXXglXX
どういうこと?
結局あれって噂か?
4 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:13 ID:XrtXhjepX
裏の中の裏だからどうなっててもわからん
てか、このスレ消されるなwwww
5 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:16 ID:XpfXXXXXX
以下sage
6 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:18 ID:4XXXvftXX
学校通わせたり虐待だ、集団リストラだ、で坂兎やたらストレス溜まってるのな
マジ表に影響でないか心配だわ
7 :名無し@45:20XX/XX/XX(土) 18:22 ID:X4y6pXXcd
そのまえにおまいら働けよ
――――。
……噂なのか、それとも本当なのか、こういった文章見る限りだと坂兎七海ちゃんは虐待を受け入院していたことになる、察してみるに父親はテレビとかでいう裏社会の人間ってことか。
だが、裏の中の裏とか書かれているのを見れば検索してもまともな情報がHITしないのも納得できそうだ。
ちなみに、もう一つ検索をかけてみたが、桜光小学校は案内やらHPやらで普通の学校と同じようなHITしかしなかった。
……坂兎七海の父親が裏社会云々を鵜呑みにするわけではないが、もしその場合だと美黒が代わりを働くのを軽々しくポンとしてしまうのには浅はかすぎたようだ、学校側は学校側で親の了承をしっかり受ければ問題ないのだが、人柄上難しそうだろう。とはいえ、いきなり止めさせるわけにもいかない、もうしばらく調べ、様子見をしてみることにしよう。
俺は残った妙に苦いコーヒーを飲み干すと、パソコンの電源を落とすのだった。
さて……次は病院を目指そう、行動を起こすなら早いうちがいい。