一時間目:りゅーげ(2)
少し遠目で見てみれば、着替えを済ました女子がぞろぞろと出てきていた。
一部はたまにこちらを見れば美黒に何か耳打ちしたり嫌な視線を向けてきたりする。 きっと「素敵なお兄さんね」「いーなーかっこいいお兄さんがいてー」とかの他愛もない話だろう。だが、こうして見ればお金持ちやらなんやらの学校っと言ってた割りに生徒は意外とまともなようだ。
「私はそろそろ授業があるので……お兄さんはどうぞごゆっくりと参観なさってくださいね」
女教師は微笑みながらそういうと去って行ってしまった。 先ほど女生徒が着替えた教室が目の前にあり、尚且つ男一人を野に放すとは、何のための監視だったのかもはや疑問が沸いて来るのだが……。
「……」
ポツンと取り残されてしまった、まだ聞きたいことがあったのだが、今は授業でも見ておこう、美黒からサポートしろ云々言われていたのでな。
それから俺はサッカーゴール付近まで移動し授業を遠くから見ておくことにした、美黒程度の身長から150cmあるんじゃないかってくらいの大柄な子に、将来相撲取り推奨的な体系な子まで色々いる。
内容は懐かしいものでストレッチからラジオ体操、少しランニングしてからのバレーだそうだ。
「んふふ、どうですか? うちの子達は」
っと、先ほど授業に向かったはずの先生がいつの間にか横に立っている。
「どう、っと言われましても、皆さんかわいいですね」
「問題発言ね」
「そうですね」
適当に受け答えつつ、聞き忘れていた用件を口に出した。
「ところで、うちの妹どうですか? 七海ちゃんっぽいと都合がいいのですが」
「…………奇遇ね、こちらもそうだと都合がいいんだけど、あんまり。正直、七海ちゃんは体が悪かったから体育は遠慮してたのよ、それに活発ではなかったわ」
となると、クラスの子達からはもはや転校生っていうような立場ってわけか。
「でも、大丈夫です、もう七海ちゃんご本人ですから」
「……?」
言い方が直線的すぎるが、多分、この学校では書類上あの子は七海ちゃんってことだろう。
「あと……後で七海ちゃんのお見舞いしたいので、病院とか変わってませんか? 変わってなければそのままお邪魔したいのですが」
「んー………………変わっては無いと思うけど、あまり体調は良くないから、遠慮するのがいいかもしれないわ」
「そうですか……」
意識が無いという話を聞いたがそれ関連かもしれないな……花くらいは持って行って入れ替えぐらいはしておこう一応世話になっているのだ。
七海ちゃんの入院の話に少し視線をそらし、気まずそうに生徒を眺める先生を横目に、そろそろ帰りますね。っと挨拶いれ正門まで案内をしてもらった。
その時初めて気付いたのだが映画や漫画で見た記憶がある黒くて長い外車数台を発見、俺のほかに参観するやつがいるそうだ、世間話を開始させられる前に退散するとしよう。
「にしても……収穫は無かったな……」
ふと愚痴が漏れてしまう。サポート云々を口煩く言われた手前、七海ちゃんのことや先生から見た注意点などを聞きたかったのだが、手ぶら同然であった。
このままでは美黒に問われたとき返答に困るのだが……まあ、そのときは適当に流すとしよう。