で〜〜い!!
休日の早朝。朝の空気がすがすがしい。
私は自宅近くにある森林公園で、日課の散歩を楽しんでいた。
「でえ〜〜いっ!!」
突如飛び込んできた大きな声。子どもの声だ。この先の広場から聞こえてくる。
一体何事だろうか?
私が広場へ向かうと、そこには小学生くらいの子供が大きな声で、
「でえ〜〜いっ!!」
と言いながら舞い踊るような動きを見せていた。
一体何をしているのだろう? もう少し近くに寄って見る。どうやら踊っているように見えたのは、何かを投げる動きだった。
手に持った籠の中から何かを取り出し、掛け声を上げながら周囲にばら撒いている。
さながら【花咲かじいさん】のようである。
「でえ〜〜いっ!!」パラパラッ
「でえ〜〜いっ!!」パラパラッ
それにしても、大声を上げて一体何を撒いているのだろう? 興味を持った私は、その子供に声を掛けてみた。
「さっきから『でーい、でーい』と何を撒いているのかな?」
「おじさん。『でーい』じゃないよ。『でえ〜〜い』だよ。でぃー、いー、あい。」
はあ。
で、何を撒いているのかな?
「これはね。外国の珍しい昆虫なんだ。僕は昆虫が大好きなんだ。この公園を珍しい昆虫で一杯にしたいんだ!!」
「よく分からないけど、それは良くないことなんじゃないかな?」
「そんなことないよ!! 学校で習ったもん。
今は『で〜〜い』の時代なんだって。
多様性の『Diversity』、公平性の『Equity』、包括性の『Inclusion』。頭文字をとって『DEI』。
みんなと違うってことだけで仲間外れしちゃいけないんだよ。
色んな生き物をどんどん受け入れるのが良いことなんだ!」
あーなるほど。だからで〜〜い、つまりDEIか。最近の子はよく勉強しているな。
確かに最近よく聞くよ、DEI。
多様性を認めよう、みたいな感じだっけ?
こんな小さい子が、それを実践しているわけか。
素晴らしいな。これは日本の将来も明るいな。
「君は立派な子だね。頑張りなさい。」
そう言うと、私はとてもいい気分になって広場をあとにした。
おしまい




