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「聖剣を使いこなすのに、慣れてきたのですか?」

「……?」


どういう意味だろう。

私はもともと騎士ではなく魔法使いなのだが。

クラドの言葉の真意を測りかね、頭を猛烈に回転させていると、彼が言葉を続けた。


「聖剣には、わずかではありますが女神様の力と先代の勇者様の力が宿っていると言うではありませんか」

「……ああ、それのことですか」


まったく知らなかった。そんな設定があったのか。

私は聖剣があるという噂を聞いて見物に行き、とんだ災難に遭った身なので、そんな詳しいことまでは知らなかったのだ。


「狂ってしまった魔法使いを成敗したリエンを見た時、まだ女神様にお会いしてもいない方がこれほどの力を使えることに、正当な勇者として認められ本来の力を振るえるようになったら、一体どれほどのものになるのかと期待半分、不安半分でした。ですが、今の聖剣の力を使いこなす姿を見て、心配は杞憂だったと分かりました。やはり、聖剣に選ばれた方だ」


私が使った魔法を、聖剣の力だと思い込んでいるようだ。


「あまり私を信じすぎるのも良くないですよ。後で失望することになるかもしれません」

「そんなことはありません。私は、今まで見てきたリエンを信じていますから」

「実は私……いいえ、なんでもありません」


勇者ではないと言いかけて、言葉を飲み込んだ。

これほど固く信じている人に、自分が勇者ではないなどとは言い出せなかった。

私を信じてくれている他人の期待を裏切るような真似は、そう簡単にできるはずもない。


どのみち首都に行けば明らかになることだ。

国王陛下に拝謁することになれば、クラドとは離れることになるだろう。

その時に、自分が勇者ではないという事実を明かして静かに去ればいい。

もともとそういう計画だったし、そのために首都へ向かっているのだから。


「気兼ねなく話していただいて構いませんよ」

「あの方々を埋葬してあげようと言おうとしたんです」


あまり信じていない様子だったが、まずは目の前のことが先決だったので、私たちは人々の遺骸を埋葬することにした。

かつての仲間であっただろう騎士たちには、あの世で使うようにとクラドが金貨を一枚ずつ口に含ませた。

そして魔法を使って土を被せ、墓の上に彼らが生前使っていたであろう剣を突き立てて供養を終えた。


自分たちでは気づかなかったが、墓を作るのにやかなりの時間を費やしたようだ。

いつの間にか日は落ち始め、別の場所へ行っていたアデルとテレサが戻ってきた。


「ひとまず、今日はここで夜を明かしませんか」

「私は賛成です」

「いいですよ」


少し前まで獣や人の骨が散らばっていた場所なので気味は悪いが、すべて土に埋めたのだから大丈夫だろう。

何より、安全が確保された場所を差し置いて、足を怪我した者や幼い子供を連れて暗い山道を移動するのは得策ではない。


私たちは適当な場所を見つけて焚き火を囲み、腰を下ろした。


「今日は皆、お疲れ様でした。たくさん食べてくださいね。テレサもたくさん食べるんだよ」

「いただきます!」


つい先ほどまで私たちを苦しめていた懸念事項が一つ片付いたせいか、心なしか今日の食事はいつもより美味しく感じられた。

それは他の皆も同じようで、昨日よりも明るい表情をしていた。


その時だった。

クラドがアデルの名を呼んだのは。


「アデル」

「え?」


わけがわからないといった表情でクラドを見つめるアデル。


それも無理はない.

今まで食事の時間に、クラドがアデルを呼んだことなど一度もなかったからだ。


「よくやった」

「?」

「あのタイミングで矢を放ったことだ」


焚き火の光のせいかもしれないが、アデルを褒めるクラドの頬が赤く染まっていた。


「ありがとうございます」


あの日、アデルが住んでいた村を離れて以来、私は最も安らかな夜を過ごした。

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