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山中の村だからか、平地の村よりも全体的に物価が高かった。
私たちが買った物は同じものなのに、以前通り過ぎた街よりも数倍もした。
それでも元々持っていたお金と領主からもらった謝礼金があったので、私たちは難なく出発の準備を終えた。
トントン。
「リエン、出発の準備は整いましたか。」
滞在していた村を離れ、次の目的地に向かうためにクラドが迎えに来た。
日数だけで言えばあと一週間は滞在したかったが、ここは余所者に好意的ではないため、顔色を窺ってまで長居したい場所ではなかった。
「今、出ます。」
外に出ると、扉の前に二人が立っていた。
「行きましょうか。」
先頭に立つアデル。
私たちは彼の案内を受けながら、村を後にした。
「やはりアデルさんがいると動きやすいですね。」
「ふふ、そうですか。」
山なので道がないように見えるが、私は知っている。
山の中で長く暮らしてきたおかげで、道というものがすべて同じではないことを。
アデルが落ち葉の積もった場所へ連れて行かないので移動しやすく。
断崖や人が登れないような急斜面に行かないからだ。
今まで一度も道を間違えたと言って引き返したことはなかった。
最初は頼りなく思っていたが、アデルと同行したのは正解だった。
移動しているうちに食事の時間になった。
食事の時間といっても決まった時間に食べるのではなく。
食事に適した場所を見つければ、休憩ついでに腹を満たすというものだった。
だからといって、まずいものを食べるわけにはいかない。
私は鍋を掛けるのに適した枝を拾い。
「クラド、火を起こしてください。」
クラドが起こした火の上に鍋を置き、スープを作り始めた。
火をつけた後、村で買ってきた野菜とお肉をたっぷり刻んで入れた。
コトコト。
水は少し注いだだけなのに。
野菜とお肉から水分が出て、鍋はすぐに水でいっぱいになる。
もちろん、足りないと思った時は私がこっそり魔法で水を補充したことは内緒だった。
スープが沸騰し始めると、美味しそうな匂いが立ち上り、周辺へと広がっていった。
魔法のスープの匂いに誘われたリスが、私の隣に慎重に近づいてきた。
私は切り残した野菜をリスに差し出した。
すると、野菜の破片をくわえたリスが丸々としたお尻を見せながら、大急ぎで離れていった。
私が与えたものを奪い返すとでも思ったのだろうか。
私、そんな人じゃないのに……。
森の小さな友達が去った名残惜しさを胸に、私は二人を呼んだ。
「準備できました。ここに来て食べてください。」
離れて身支度を整えていた二人。
私が呼ぶと、やっていた手を止めて席に座った。
「こうして村の外に出て料理を作って食べることは今までありませんでしたが、リエン様といると、こんな風に食べられることもあるのだと知りました。」
そうだろう。
彼の父親と旅をしていた時は、移動のために硬いビスケットや乾燥食糧ばかり用意して食べていたという。
「野宿生活が長くなれば、こうして食べるのも難しくなりますから、食べられるうちにたくさん食べてくださいね。」
傷みやすいものから食べてしまえば、残るのは硬い食べ物だけになるだろうから。
私たちはスープを囲んで座り、パンに浸して食べた。
体を動かしているせいか、よく食べる二人。
「もう一杯、いいでしょうか?」
「たくさん作っておきましたよ。」
アデルにスープをもう一杯よそってあげた。
そして、クラドも空の器をそっと差し出した。
◇
「兄貴、あいつら一体何なんですか?」
村からクラド一行をつけてきた三人。
身を隠していたが、リエンがスープを丁寧に作っている姿を見て呆れていた。
山の中には草食動物だけでなく、危険な動物もいるのが常識だ。
さらにここは珍しいことだが、熊よりも危険な魔獣までもが存在する危険な山脈だった。
火を使う料理を今のように開けた場所で作れば、それらの標的になりかねない。
温かいスープを煮込んで匂いを漂わせるというのは、何も知らないがゆえの、「どうぞ私を狙ってください」と言っているようなものだった。
「むしろ俺たちには好都合だ。油断しているうちに一気に仕留めるぞ。」
リエンがスープを作り。
食事を終えるまで待っていた三人の男たちは。
「男から片付けるぞ。そうすれば残りはすぐだ。」
「剣を持っている奴ですよね?」
「ああ。俺が撃ったらお前らもすぐに放て。今だ。」
三人の男が構えたクロスボウからボルトが同時に放たれ、クラド一行を目掛けて飛んでいった。




