表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
9/27

ある者

俺は訓練生用の担当上部だという男に言われるまま、何百人もの訓練生が並ぶ列に加わった。


護界衆上部(柊・ひいらぎ)「今日から訓練生として過ごすのは君か」

陵雅「あんた誰だ?」

護界衆(柊)「訓練生用の担当上部の者さ」

陵雅「俺は今日からここで訓練か」

護界衆(柊)「今からは朝の挨拶だから君も皆みたいに並んでね」

陵雅「おう!」


その後、別の護界衆上部が前に立つ。


護界衆上部(氏原・うじはら)「みんな集まったな。では、朝礼を始める。と言いたいが特段話すこともないので始めてください」


(なんだそりゃ!)


無駄な儀式は嫌いじゃないが、ここまで極端だと逆に拍子抜けだ。


隣にいた訓練生が、退屈そうに呟く。

同訓練生一「あー!、なんで朝から毎日一時間走らされんだよ……」

同訓練生二「嫌だけどしょうがねえだろ、基礎体力つけねえとなんだからよ」


「なあおい、今から一時間走らされんのか?」

「そうだよ。君新人?」

「ああ、よろしくな!」


一同走り出す。俺もそれに続くが、すぐに気づいた。

(皆早すぎだろ、)

基礎体力の差は歴然だった。俺は、前世からの積み重ねの無さを痛感する。まずはこの**「不毛な基礎」**をクリアしなければならない。



訓練生が二〇分ほど走り始めて経った頃、**ドーーーン!!!**と、いきなりものすごい音が響いた。


その方向を見ようとした瞬間、周囲全体が一瞬で砂埃にまかれ、完全に視界が閉ざされた。


「な、なんだ?」


ものすごい音がした方向からは、何かが激しく戦っている様な音が聞こえるが、視界が悪い為何も分からない。何かが終わったのだろうか。


「やっとかたづいたか」


その声が聞こえた後、すぐ砂埃が無くなり、周りが見えるようになった。俺は、目の前の光景に何が起きているか全く理解できなかった。


「は?、どう……なってんだよ……」


陵雅の目の前には、訓練生担当上部の護界衆、柊と氏原が、地面に横たわっていた。既に戦闘は終わったのか、二人とも満身創痍だ。


柊が、全身全霊の力を振り絞り声を上げた。「はーっ、はーっ、全員!!今すぐここから逃げろーー!!」


その言葉は、戦場への洗礼だった。


「誰も逃がすわけないでしょ。なに、訓練生ってバカなの?」


声の主は、柊と氏原を倒した奴だろう。その姿は、人の形をせず、全身から物凄いオーラを放っていた。


沢山の訓練生の中には、恐怖で腰を抜かして動けない奴もいた。そして、一斉にその場から多くの訓練生が必死に逃げ出していく。



逃げ出した訓練生たちが叫ぶ。

「護界院に行って知らせるぞ!!」

「ああ!!」


奴は、一人の腰を抜かしている訓練生に向かって黒血を使い、正面から刺そうと飛んできた。


同訓練生は死を覚悟し、目を固くつむった。

ドン!!!


何が起きた?


訓練生が目を開けると、なぜかさっきまで居た位置には、柊が立っていた。柊の背中には、蒼の黒血が深く突き刺さっている。


同訓練生「なんで……」


護界衆(柊)は血を吐きながらも笑った。「間に合った。若い芽だけはぜってえ摘ませねえぞ。しかも運よく上級じゃねえか。探す苦労が省けたぜ。お前は俺がここで倒す」


その状況を目の前にした俺は、気づいたら叫んでいた。


「ふっざけんなあー!」


俺は、とっさの衝動で手に黒血を纏わせ、上級蒼に向かって突っ込んでいた。考えるより、体が動いた。家族を失った日の後悔が、俺を突き動かす。


走った俺に向かって、上級蒼は柊の背中に黒血を刺したまま、また別の黒血を出し、攻撃を向けてきた。その攻撃の速度に俺の目が追い付かず、気づいたら目の前に攻撃が迫っていた。


(死んだ。また、何もできないまま、終わるのか)


その後、気づいたら俺はさっきいた場所から少し離れた場所にいた。氏原が俺の服を強く握っていた。攻撃が来る直前ギリギリで、氏原が飛んできて俺の服を握り、攻撃を避けてくれたのだ。


氏原は俺を睨みつける。

「何も考えずに突っ込んでいくな! 相手は上級だ! 冷静になれ! 簡単に死のうとするな!! 生きてりゃ勝ちだ!」



氏原は柊に向き直った。「柊!こいつのおかげで突っ込み忘れたけどよ、あいつを倒すのは俺とお前だ」


俺は、その言葉に反論した。

「おい待てよ!あいつを倒すのはあんたら二人と俺だ!」


「お前はほんと話そうとしたら入ってくるし、話してても入ってくるな、うるせぇ静かにしろ。あと訓練生のお前が戦えるわけねえだろ。明らかな戦力不足だろ」


俺の能力は、まだ不安定で未知数だ。氏原の評価は冷静な現実を示している。だが、俺は戦わなければ、また何もできない無力な傍観者に戻ってしまう。


「実践の方が強くなれんだろ!それに今この場にいるのは、すでに戦ったボロボロのあんたら二人と俺と、あの訓練生だけ。四人しかいねえんだから、戦える奴全員、三人でやった方がいいだろ」


氏原は俺の主張を完全に無視した。「お前ほんとにうるせーな。そんなやる気あんならあの訓練生守っとけ。最初で最後の命令だ。わかったな」


「あ? なんだよそれ、ちっ」


俺の非日常への渇望は、理不尽な命令によって打ち砕かれた。だが、生きていれば戦える。俺の役割は、生存者(訓練生)の護衛。


氏原「柊、最後の戦闘、いくぞ」

柊「ああ!」


俺は、戦力外通告を受けた。だが、それでも生き残らなければならない。そのために、俺は、今、与えられた役割を全うする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ