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蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
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狭火妬(さびと)-血の螺旋


「はっ!はっ!はっ!はっ!……」


俺――狭火妬サビト、いや陵雅は、全身の筋肉が軋むのも構わず走った。頭の中には、血を流して倒れた山原の姿が焼き付いている。クールな殺し屋?笑わせるな。俺はただの、人を殺す光景に怯える臆病者だ。


「まてえー!!」


後ろから、ヒョウの声が追いかけてくる。俺は振り返らない。必死に前だけを見て、全力で逃げた。


「もうあんなことしたくない!!殺し屋なんか辞める!!」


その叫びは、誰に聞かせるためでもなく、怯える自分自身に言い聞かせるためのものだった。


(氷:説得しようと思っていたが、もう無理そうだな。しょうがねえ、殺すしかねえ)


俺を追いかける氷は、この殺し屋という絶好の環境を失うわけにはいかないのだろう。それが、俺を殺そうとする理由だ。


家に着くと、俺は躊躇なくドアを開け、自室まで一直線に走った。


(氷:警察に行くと思っていたが、家に向かっていたのか。まあ、家の方が殺しやすい。どうでもいいか)


氷はそう呟きながら、俺の家に入ってきた。


「手っ取り早くこの拳銃で殺したいが、仕事外で使えば店長にばれてしまう。しょうがねえ。この家の包丁を借りるか」



氷は台所に向かい、包丁を手に取った。


「じゃあ、行こうか」


台所を出ようとした氷の前に、一人の小さな影が立っていた。

それは、俺の妹、**美花みか**だった。


美花「あなた……だれ……?」

氷「見つかっちまったか」

美花「うあっ……!!」


俺の逃走が、家族にどんな代償を払わせるのか。この時の俺は、知る由もなかった。


氷は素早く包丁を美花の小さな体に突き刺した。美花はそのまま倒れた。


妹の声を聞きつけた兄の**桜雅おうが**が台所に向かって歩いてくる。

「どうした?なんかあった?」

「ぐあっ……‼」

氷は素早く動き、桜雅も刺した。桜雅も倒れた。


氷は冷静だった。「狭火妬にばれたらまずいな」

そう思い、倒れた二人をリビング――団らんの場所に移動させた。


氷は一階に俺がいないことを確認し、二階へ移動した。

二階に上がると、目の前の部屋にいたのは、父、母、そしてもう一人の妹だった。

「お前……‼」

氷は迷わず、三人とも殺した。


「狭火妬!どこにいるんだ!!」

俺を見つけられない苛立ちから、氷は俺の本名(仮の名)を大声で呼んだ。


(なんで家にいるんだよ……!!)


俺は驚きながら部屋を出て、階段を降り、一直線に玄関に向かい家を出て行った。逃げることしか、できなかった。


氷は俺が階段を降りるのが見えていたが、俺はそれに気づかず、とにかく逃げた。

手に血の付いた包丁を持ったままでは追えない。氷は包丁をその場に捨ててから、外に出ていった俺を追いかけた。



「はっ。はっ。はっ。はっ。……」


俺は必死に逃げている間も、目標を殺した瞬間の光景と、あのバケモノが家にいるという恐怖感が頭から離れず、ただただ走り続けた。


隠れやすいと思って、俺は山へと入っていった。


(氷:あいつ……やっと見つけた)

俺が山に入っていくのを、氷は見ていた。

氷は包丁を捨てたばかりだったが、山に入るなら好都合だった。


「山に入るなら一目なんて気にする必要がねえ」


氷は今まで化けていた人間の姿を捨てた。

**元の姿、アビス**に変えながら、山の中を走った。


「もう諦めろ!!」


氷の、獣のような声が山に響くが、俺は振り向きもしない。


「あ……!!。木の建物がある!!」


俺は走った先に、古い木造の建物を見つけた。

(ここならばれないだろ……!!)


俺はそう思い、建物の中に身を隠した。


蒼と化した氷は、俺を殺すために木の建物へと向かってきた。


(氷:なんだ……?この辺りに誰か別の奴がいる気配がするな。まあいい、今は狭火妬を殺すのが先だ。邪魔をするならついでに殺す)


氷――蒼の異様な足音が、建物の外から迫ってくるのがわかった。


氷が今、俺が隠れた建物へと向かってくる。


こうして、俺は殺人者としての絶望と家族を失った悲劇の直後、異世界の窓を開け、そして、運命の転換点を迎えることになる。


(そして、物語は第一話へ続く)

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