戦闘訓練
陵雅と侑の修行が始まった。
侑(まずは手加減で棒一本にしよ)
侑の黒血が瞬時に形を変え、一本の棒となった。
陵雅(侑、なんか出したぞ、棒!?舐められてるな。触り心地は、ざらざらで重くて、太い)
陵雅もすぐに黒血を出し、同じく棒を作り出した。手の感覚に集中することで、迷うことなくそれが具現化した。
侑「じゃあ、行くよ。無理だと思ったら『待った』ね」
陵雅「おぉ!」
侑は勢いよく陵雅に向かって走り、黒血の棒を一閃。
ドゴォン!
陵雅は反応する前に侑の棒に思い切り叩きつけられ、吹っ飛んだ。
陵雅(いってってぇー!にしても侑、腕の力ありすぎだろ、足も速ぇ!)
侑「ごめんね!陵雅、次はもう少し遅くするね」
陵雅「いや!!俺のスピードに合わされたら俺が強くなれねぇ!侑は**さっきのスピードで続けてくれ!**俺が合わせる!!」
(陵雅:この速さ、俺が追い求めていた『強さ』そのものだ!ここでペースを落としたら、俺はいつまで経っても辿り着けねぇ!)
ドォンッ!!
侑が再び猛スピードで向かってくる。
陵雅(やっぱ速すぎる!!捉えられねぇ!)
陵雅はまた吹っ飛ばされた。
陵雅「まだまだ!!!」
二時間は、ひたすら殴られ、避けられない時間の連続だった。
侑「陵雅、もうそろそろ二時間だよ、一旦休憩しよ」
侑は護界衆に作らせたというおにぎりを取り出した。
陵雅「おにぎり!!あぁ!!食べる!!でもいつ用意したんだ?」
侑「僕は貴族だから出来るんだよ」
陵雅「あ、そういうことか、すっかり貴族って事忘れてたぜ」
侑「忘れないでよ」
(陵雅:**このおにぎりめっちゃ美味ぇな!**強ぇ奴が食う飯はうめぇのか!)
陵雅「そういや侑ってなんであんな足速ぇし、腕の力あるんだ?」
侑「これから先陵雅にもやらせるけど、実践だね。とにかく出かけ回って蒼を倒す。探す時は歩くんじゃなくてとにかく猛スピードで走る」
陵雅「常に猛スピードで!?」
侑「腕の力は、黒血を使ってとにかく木を叩きまくる。もちろん毎回全力で」
(陵雅:俺、そんなやばそうな訓練これから先やんのか。でも、この強さを手に入れられるなら……!)
その日も次の日も、陵雅は侑の攻撃を避けることはできなかった。しかし、彼の身体は、少しずつだが超速の動きに適応し始めていた。
陵雅が貴族の訓練を受けている頃、瀬音は一般の訓練生として修行に励んでいた。
担当上部の松田と萩原が今日の課題を説明する。
松田「今回の訓練は、山の中に仕掛けた玉を取ってきてもらう。玉はぶら下がっていたり、木に挟まっていたり、さまざまだ。取り方はなんでもいい。五個集めた者から終了だ。尚、今回は単独で行ってもらう。以上だ」
(瀬音:玉探し。競争はないと言っても、早く終わらせるには急がないと、玉は皆んなに取られていく!)
瀬音はなんとか三個の玉を集めた。
(瀬音:駄目だ、残り二つ、どれだけ探しても見つからない。このままでは終われない!)
その時、背後から声がした。
??「おい、お前だ、そこのお前」
瀬音は無視しようとしたが、その声は玉の数を指摘してきた。「おい、玉三つ持っているお前だ!」
瀬音は慌てて振り返った。目の前には、見覚えのない訓練生が立っている。
瀬音「あの、誰ですか?会ったことありましたっけ?」
??「会ったことはない。とにかくこの玉を見ろ」
瀬音は息を呑んだ。この男は、瀬音が喉から手が出るほど欲しい玉を二つも持っていた。この二つを貰えば、訓練は終了だ。
瀬音「あの、なんで玉二つ持ってるんですか?もし良かったら貰えませんか?」
??「無償でやるわけないだろ。俺と戦え。結果によってはやる」
(瀬音:戦えって。勝てば二つ貰えてすぐに帰れるだろうけど、負けたら貰えない。正直時間の無駄だ。だけど、残り二つが中々手に入らないのも事実。やるしかないか)
瀬音「わかりました」
??「そうか。やってくれるか。終了の合図は『待った』だ」
玉を巡る戦いが、今、始まった。瀬音は、黒血を武器として扱えない焦りを感じながらも、その戦いに挑む覚悟を決めた。