柊の過去と「守る覚悟」
【漣の過去】
漣は5人家族だった。父、母、姉、漣、弟。この家の近くに住んでいたんだ。ある日姉と弟が山に虫を取りに遊びに行った。弟が虫を見つけたが木の高いところにいた。弟がどうしても欲しいといい、姉が木を登り捕まえようとした。姉が虫の近くまで行くと虫が驚き姉の顔に飛んできた。驚いた姉は手を滑らし木の尖った部分に腕をぶつけながら落ちた。大怪我は無かったが、腕からの血が中々止まらず、一回家に帰る事にした。家に帰るとすぐ血を止めようとするが止められなかった。両親と漣は外出していたので頼れる人がいない。そこに森から垂れた血を辿り家までたどり着いた中級蒼に姉と弟は襲われた。何時間かすると両親と漣の3人が家に帰ってきた。中級蒼は人が来た事に驚き一旦森に帰り家の様子を覗き見ながら伺っていた。3人が帰ると沢山の血を流している姉と弟を発見。両親はすぐに姉と弟に近寄るが姉は既に死んでいた。弟はかろうじて生きていたので両親は漣に家の奥にあるお金と手拭いを持ってきてと言い漣は奥に行った。お金と手拭を持ってくると目の前には両親が中級蒼に丁度殺されている所を目撃。絶望した。蒼と両親の間に立ち、手を広げて守ろうとした。蒼は黒血を出し漣を殺そうとした。そこに師匠(当時貴族)が現れ後ろから殺した。漣は行く先も無くなった為絶望感に浸っていた。師匠に、共に来るか?と聞かれたが、漣は家族で住んでいたこの場所を離れたく無い。と言った。しかしこの家も住人が居ないためそのうち取り壊されるだろう。そう言っても漣はここに居たい!と言うので師匠は「この近くに家を借り、住もう。」と言った。漣は承諾し師匠と共に住んだ。その何日か後、師匠は漣に蒼の事を言った。ある日漣は師匠に「なんで俺は蒼を倒せないのに、師匠は倒せるんだ?」と言うと師匠は「訓練するからだ。」というと漣は「訓練したら俺でも強くなれるのか?」ときくと師匠「どれだけ強くても守る人に気を掛けられない奴は弱い。強くなれない」といい、漣「気にかけるってなんだよ!」師匠「守るべき人を守れる術を持つ事だ」漣「術って。そんなもん俺は持ってねぇよ!」師匠「漣、お前は強くなる覚悟があるのか?」漣「ああ!」その返答を聞き、師匠は当時の御頭様に護界衆が黒血を使えるようになる為に食べる薬を貰った。だが簡単に貰ったわけでは無い。漣に必死に持ってる術を叩き込み、強くし、いずれは護界院に入れる事を約束したのだ。貴族だからこそ御頭様からの承諾を得られた。師匠はその薬を漣に飲ませ、長い間術を叩き込んだ。それから護界院に入れ、訓練生にした。漣は黒血を簡単に扱えるが蒼に関する知識はない。そのため訓練生から入り、知識を入れさせた。その後、訓練生になった後もよくこの家に来て、訓練したり、穴場で休憩したりしていた。
【過去終了】
柊の過去を聞き終えた陵雅は、深く考え込んでいた。
陵雅「どれだけ強くても守る人に気を掛けられない奴は弱い。強くなれない。守るべき人を守れる術。か……」
その言葉を噛みしめると、陵雅の目から一筋の涙が流れた。それは、柊の境遇への共感か、自分の過去と重なる痛みか、あるいは無力だった自分自身への憤りか。
(瀬音:陵雅でも泣くことあるんだ……。僕もちょっと思い出したな……。でも泣かないよ……)瀬音は動揺しつつも、自分の心に蓋をした。
師匠はただ見守った。(師匠:誰にでも辛いことはある。耐えろなどと無闇なことは言わん。糧にしろ。頑張れ)
陵雅は涙を拭い、顔を上げた。その顔は、疲労の跡以上に、漲る(みなぎる)闘志に満ちていた。
「ありがとな、師匠!**俺もやる気、漲ってきたぜ!**俺も二人(柊と氏原)と修行してくる!」
瀬音は驚愕した。「陵雅もう食べたの!?僕がやっと食べ終わった頃だよ!?」
陵雅はすでに次の行動に移っていた。「瀬音も行こうぜ!!」
「だね!」
師匠は静かに笑んだ。「じゃあ、皆で修行しよう」
外に出ると、既に修行を始めていた氏原と柊がいた。
陵雅「俺も修行しにきたぜ!」
氏原「陵雅、起きたのか!夜ご飯食べたのか?」
陵雅「あぁ!」
師匠はすぐに柊に指示を出した。「漣!二人(陵雅と瀬音)の修行、つけてやれ!」
柊は真面目な顔で頷く。「はい。瀬音、黒血の薬は飲んだよな」
瀬音「飲みました!」
柊は陵雅を見て、「陵雅は……出せるのか」
「出せるぜ!」
「二人とも一応可能なら、黒血を操る所からだ」柊は基本に戻ることを促した。
「正直、黒血の操り方で言える事は少ないが、想像する事だ」
柊は自身の手本を見せる。
「例えば剣を出す時だ。俺は剣を細長く鋭い物と考えている。だから想像すればこうだ」
柊の手から、完璧に形成された黒血の剣が出現した。
瀬音は目を輝かせた。「すごい!!」
「二人とも、剣を出してみろ」
(瀬音:鍔のある、細長い、鋭い物だよね)
瀬音「あっ」
瀬音は黒血の剣を出せた。しかし、それは極端に小さく、まるで中身が詰まっていないかのように脆く弱い。すぐ折れそうで、手で頑張れば潰せる程度の代物だった。
「出せたな。大きさは自分で訓練すればちゃんと操れるようになる」柊は冷静に分析した。
(陵雅:剣っつったら、細長くて、鋭い物だよな)
陵雅は力を込めた。しかし、何も起こらない。
陵雅「なんでだ?」
柊「黒血は本当に訓練するのみだから」
その後の修行で、瀬音は少しずつ固い剣を作れるようになったが、陵雅は一度も黒血を出すことができなかった。あの死闘の中で無意識に発現させた力は、彼の意志では再現できなかったのだ。
修行は終わり、一同は師匠の家で眠りについた。
次の日の朝。朝ご飯を食べ、師匠の家を出る時が来た。
陵雅は師匠に真っ直ぐ向かって行った。「ありがとな!師匠!」
氏原が慌てて割って入る。「陵雅!敬語!」
柊「陵雅、敬語は?」
師匠は手を振った。「大丈夫。こいつ(陵雅)は敬語を使えない。そのままの言葉の方が真意が伝わる」
(氏原:師匠にも敬語なしで行けんのかよ!!)
(柊:すご、師匠に敬語なしで行ける人いるんだ)
瀬音と氏原、柊は深々と頭を下げた。
瀬音「ありがとうございました!」
氏原「ありがとうございました!」
柊「ありがとうございます」
師匠「もう家来るなよ!またな」
氏原「行ってもいいじゃないすか!またです!」
四人は師匠の修行場を後にし、朝の光の中を護界院へ向かった。
護界院に着くと、氏原と柊は立ち止まった。
氏原「それじゃ、俺ら(氏原と柊)は上部だからやる事がある。ちゃんと訓練受けろよ!」
柊「また」
瀬音「はい!」
陵雅「あぁ!」
氏原と柊は上部の仕事へ。昨日、中級蒼を討伐したという信じられない経験を経て、陵雅と瀬音は、黒血を制御できないまま、訓練へと向かった。