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蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
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蒼の涙‐決着

【中級蒼の記憶】


五十年ほど前ある町で父、母、俺の三人で暮らしていた。家は貧乏だったが生活に困る事はなく、家族で楽しく暮らしていた。ある日の事だ。外は雨だった。


蒼「母ちゃん!、父ちゃん!、外で遊ぼうよ!!」


父「光太郎こうたろう、今日は雨だ、家で遊ぼう」


母「そうよ、雨に濡れたら風邪ひくから家にいないと。そうだ!積み木しない?」


光太郎(蒼)「うん!積み木しよ!誰が一番高く出来るか勝負ね!」


父「父ちゃんと母ちゃん、積み木上手いぞー!」


母「光太郎だって上手いもんねー!」


光太郎(蒼)「そうだよ!だから絶対負けないよ!」


三人仲良く生活していた。


ある日、父の友達が家にやってきた。


友達「すまねぇ、勝太郎しょうたろう、金を貸してくれないか。もう生活が出来ねぇんだ。頼む。頼む。」


友達は何度も頭を下げていた。


父「因みに、いくら必要なんだ?」


友達「こんくらいだ。高額なのはわかってる!!わかってるんだが貸してくれ!!頼む!頼む!2ヶ月以内に必ず返す!!。」


父「そんなに…!。2ヶ月以内だな…。わかった…。待ってる…」


父の仕事の月給はこの時代の庶民と言われる人たちより少し下だった。若い時から貯め、生活が苦しいと少し使い、を繰り返し生活していた。この時貸したのは貯金の全額だった。


友達「本当に悪い。いつか必ず借りを返す!!命の恩人だ!!」


父「あぁ」


友達は金を握り、帰って行った。


母「本当に大丈夫なの?あんなに…。2ヶ月分の月給より多いわよ。」


父「あいつは友達だ。必ず返してくれるはずだ。信じてる。」




二ヶ月が経った。


生活は出来ているが貯金がなく、足りない為高利貸しにも行っていた。


母「もう二ヶ月経ったわよ。まだ返ってこないの?高利貸しにも借りてるし、」


父「必ず返ってくるはずだ。友達だ。」


それから一ヶ月経ち、高利貸しへの借金が膨れていた。


母も父も友達に逃げられた事に気づいた。その頃には高利貸しが何度も家に押し寄せた。


高利貸し「すいませーん、金、まだですか?もうとっくに返済期限過ぎてるんですけど」


父「すいません。すいません。もう少し!もう少しだけ待ってもらえませんか!」


高利貸し「その言葉何度聞いてると思ってるんですか」


父「本当にもう少し!もう少しだけ待ってもらいたいんです…」


高利貸し「わかりました。10日後、またきますね。その時までには用意しててください」


父「!!。ありがとうございます…!!」


高利貸しは去って行った。


母「10日後まで準備ってどうする気?」


父「もうこうなったら他の高利貸しに貸してもらって返すしかない。あくまで一旦だ、一旦」


10日後


高利貸し「すいませーん、10日経ちましたけど、用意できました?」


父「はい…!。」


渡す


高利貸し「利息も合わせてしっかりありますね。では」




この様に返せない借金を他の高利貸しから借り、その借金をまた他の高利貸しから借りる。と言う借金地獄に陥っていた。


高利貸しの間でも家族が話題になり、貸しても返ってこないかもという話が回り、家族に貸して欲しいと言われても拒否する高利貸しが増えた。ある日その話を知らない高利貸しが家族から貸して欲しいと言われ、貸した。貸した数日後にその話を聞いた。だが家族にもう金を貸してくれる人は現れない為、運良く借りれた借金を返すために借金する場所が無く、高利貸しが家に来ても返せない為、返ってもらう日々が続いた。


ある日


高利貸し「すいません、まだ金無理ですかー?」


父「すいません、もう少し!もう少しだけ待っていただきたいです…!」


高利貸し「それもう5回言われてるんですよ、返済期限過ぎても毎回2日待ってるんですよ?」


父「すいません、すいません、すいません」


高利貸し「もう返済期限から10日も経ってるんです、」


父「すいません、すいません、すいません」


高利貸し「2日後、また来ますのでその時までには。」


父「はい。ありがとうございます!ありがとうございます!」


高利貸しは去って行った。


2日後


高利貸し「すいませーん!2日経ったので来ましたー!」


父「本当にすいません。もう少し、もう少しだけ待ってくれませんか?」


高利貸し「2日後に来るって言いましたよね?」


父「すいません、すいません」


父は何度も頭を下げた。


高利貸し「こっちだって商売でやってるんですわ、金が返ってこないと利益が出ないんですわ、」


父「うっ!」


高利貸しが父の腹を思い切り殴る。


父「うっ!、うっ!…」


高利貸し「金、返せないんだから殴られるくらい我慢してくださいね?」


高利貸しが父を何度も殴る…。ついには腹だけで無く顔までも。


母「はっ!、はっ!」


母は父の殴られる所を父の後ろで見ていたが恐ろしくなり家の奥への逃げて行った。


それを光太郎(蒼)は隠れながら覗き見る様に見ていた。とても恐ろしかった。


父が殴られている所を見つづけ、光太郎(蒼)はとてつもない恐怖感に襲われた。その後高利貸しは、家の奥へと走って行った母を見つけ同じく至る所を殴った。まさか子供のいる家庭と思わなかったのだろう。怖くて隠れていた自分を高利貸しは探そうともせず家を出て行った。また来るかもしれないと思い少しの間隠れていたが来なかった。目の前にボコボコに殴られた父がいた。光太郎(蒼)は父に近づき「父ちゃん!!、父ちゃん!!」と叫んだが返事がない。死んでるとわかった。


その後、家の奥へと行っていた母を探しに行くとそこにはボコボコに殴られた母がいた。光太郎(蒼)は「母ちゃん!!、母ちゃん!!」と叫んだが返事がない。死んでるとわかった。二人とも死んでいた。光太郎は深い喪失感、そして虚無感に襲われていた。光太郎(蒼)は母の横でぼーっと膝をつき座っていた。何分、何時間くらいしただろうか。突然玄関の方から声がした。玄関を覗き見るとさっき殴っていた男ともう1人連れの様な人が居た。その光景を見た光太郎(蒼)は物凄い憤怒感になった。


殴った男「やっとついたな。」


連れの男「勝手に入って大丈夫なのかよ」


殴った男「大丈夫だ、家主は死んでる、それにこうでもしないと赤字だろ」


連れの男「まぁな、で、どうするんだ?」


殴った男「金目の物を探して売り、貸した金に充てるんだ」


連れの男「でも借金する程金のない家だろ?高価な物なんかあるのかよ」


殴った男「一つや二つはあるだろ、それに安そうでも少しでも金になる物は持ってくぞ」


連れの男「あぁ、そうだな」


その男2人を見て光太郎はすかさず台所に行き、包丁を手に取った。包丁を取ると物凄い憎悪感になった。すると声がしてきた。その声の方に歩いて行くと連れの男がこちらに背を向け棚をあさっていた。


連れの男「少しは金になりそうな物あるんだな、これも、これも、売り捌いて金にすんぞ」


連れの男は背後にいる光太郎(蒼)に気づいていない為そのまま背中を刺した。一刺しした後、男は倒れながらも立ち上がろうとしたのでもう一刺し、もう一刺しと二回刺し、合計三回刺した。その後手でゆすっても動かなかったので死んだと思った。もう一人の男を探しに他の部屋を見に行くともう一人の男も棚をあさり自分に背を向けていた。自分が背後にいる事はばれていない為、後ろから刺すと倒れたがすぐに立ち上がろうとしたので腹を二回連続で刺した。合計三回刺した。家の中には四人の死体があったが、このままここにいても何もない、そしてこの場からとても離れたい気持ちがあったので外に出た。外の景色を見ながら空を見た。そして自分の両手を上げ、見ると血がついていたがそんな事気にもならなかった。そのまま何も考えず町中をひたすら歩いたら周りの大人から沢山視線を浴びたが何も気にならなかった。そのままひたすら歩くと山のふもとが見えたので何も考えず山に入りひたすら登って行った。すると途中である大人に出会い「かわいそうだ。もう帰る場所もないな。ともに来るか?」と言われたので顔も、だれかも知らなかったがもう帰る場所がなかったので「うん。」と言いながら顔を見た。その後その人に蒼にしてもらった。蒼になると人間を食うだけで生きていける。生きる為に金を必要としない。といわれたからだ。それから50年間蒼となり基本人間に化け、暮らしていた。   


【中級蒼の記憶終了】 

蒼「あいつ(陵雅)に拳で殴られたせいで嫌な記憶を思い出した……。金がなかったせいで俺はあの男たちを殺すことになったんだ……俺は悪くない……この世界に金があるからいけない……蒼になった今、人間を食うだけで生きられる……後悔などしていない……」


氏原は焦り、冷や汗を流す。(氏原:あいつ、何を言ってるんだ?そんな事考えてる暇ねぇ!もうすぐ日が暮れる!早く倒さねぇと!)


俺は、蒼の言葉と脳裏に焼き付いた映像が完全に一致したことに、深い確信を覚えた。この蒼は、ただの魔物ではない。過去に絶望した人間だった。


「確かにお前(蒼)の家は貧しかった。両親も殺された。けど!それで人を殺していい理由にはなんねえよ!!」


中級蒼は、その一言に激しく反応した。「お前(陵雅)に俺(蒼)の何が分かる!!」


「お前(蒼)の過去は知っている!」


「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」


蒼は理性を捨て、めちゃくちゃな攻撃を仕掛けてきた。


氏原「陵雅!もうあいつを煽るんじゃねえ!」


(氏原:ちっ。もう夜になりそうだな。これがあいつの最後のあがきだ!)



氏原は叫んだ。「陵雅!さっきのやり方で行くぞ!」

「わかった!」


蒼の無秩序な黒血の攻撃がこちらへ向かう、その寸前。


「おっりゃあー!!」


氏原は、怒りの塊となった蒼の攻撃に、迷わず突っ込んでいった。


蒼「もうどうなってもいい!!」


蒼は、全ての攻撃を氏原にぶつける。


(陵雅:今だ!突っ込んでやる!)


俺は再び、あの虚無の感覚を纏ったまま、蒼に向かって突っ込んでいった。氏原と蒼は、やはり俺の気配に気づかない。


(氏原:あいつ(陵雅)なら、やってくれる!!俺はひたすら耐えんぞ!!)

氏原「おっらぁー!!」


俺は、二人が気づかないうちに蒼の背後まで近づいた。


(氏原:あ!やっと行ったか!あとは俺がおとりになるだけだ!)


氏原の視線が、蒼の背後へと向けられた。


(蒼:何だ?またあいつ(氏原)がどこか見てる……!!何だと!?)


蒼は、氏原の視線に釣られて後ろを振り向く。そこには、気配のしない刺客が立っていた。


陵雅「いっけぇー!!」


俺は、勢いよく黒血で剣を作り出すと、驚愕に硬直した蒼の体を真っ二つに切り裂いた。


蒼(あっ。切ら……れた……)


その瞬間、蒼の黒血は霧散し、戦いは終わった。


氏原「勝ったぞー!!」

陵雅「勝ったー!!!」


俺たちは、夕暮れの広場に勝利の雄叫びを上げた。



俺は、倒れた蒼の元へ歩み寄った。体は半分に裂かれていても、その目に宿る光はまだ消えていなかった。


「お前(蒼)がやったことは、あの男達二人がやった事と同じだ。どんなことがあっても人を殺すのは駄目だ。もう償ってこい」


その言葉を聞いた蒼の目からは、涙が流れていた。憎悪、虚無、そして後悔。光太郎としての最後の感情が、蒼の目から流れ出した。


俺と氏原の二人は、その場に大の字になって寝転んだ。全身の疲労が、重力となって地面に張り付かせた。



(陵雅と氏原の中級蒼との戦い終了)

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