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蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
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瀬音の戦い

瀬音「え、嘘!?」


十数匹どころではない。訓練場の木が折れるたびに、さらに多くの蒼が誘引され、逃げ道のない無限地獄が完成していた。


瀬音は必死に走った。背後から聞こえる「どーん!!」という物凄い音は、追いかけてくる蒼が本能のままに倒した木の音だった。


(瀬音:なんだ……?左右からも何か来てる……?)


確認すると、左右からも大量の下級蒼が森を切り開くように迫っていた。


(瀬音:まさか……さっき何度も響いた物凄い音って、こいつら(下級蒼達)が倒した木の音!?てか、最初よりどんどん増えてないか?)


折れた木々が、さらに遠くの蒼を呼び寄せ、瀬音の疲労は極限に達していた。そのとき、一匹の蒼が瀬音の正面、逃げ道を遮る様に現れた。


「嘘……だろ……!?」


(瀬音:そうだ……!陵雅がさっき、一瞬で真似たあの技!)


「おっりゃあー!!」


瀬音は咄嗟に、氏原が披露した蒼を掴んで叩きつける戦術を思い出し、体をぶつけた。


その蒼は倒れ、動かなくなった。(瀬音:**成功……したのか……!?**やったのか……!!)


初めて自力で蒼を倒せた興奮が、疲労を一時的に忘れさせた。(瀬音:まだまだいるな……!)


しかし、群れの数は減らず、瀬音は再び広場に追い詰められた。


「ここまでか……。もうやるしかねえ……。さっき出来たんだし行けるだろ」


瀬音は、先程の小さな成功体験を胸に、戦うことを決意した。


「おりゃあー!!」


(瀬音:案外、戦える!)


氏原の戦術は有効だったが、数が数だ。戦い続け二時間程経ち、体は限界だった。


「はー、はー、」(瀬音:もう、疲れてきた……手に力が入らない……)


蒼の群れに押され、瀬音は倒れかけた。


(瀬音:やばい……蒼にやられる……ん……?だれ……だ?。柊さん……?)



その瞬間、遠くから飛来した黒血が、瀬音の周囲の蒼だけを正確に倒した。


「なんで、柊さんがここに?」


柊は、冷静に状況を説明した。「氏原に穴場に行ってくると言われたが、六時間程経っても帰ってこなくて夕暮れが近かったから見に来たんだ。そしたら君(瀬音)が蒼と俺(柊)の戦術使って実践訓練してるのが見えて観察していたんだが、想像を超える蒼の多さでやられかけていたから助けに来たんだ」


「ありがとうございます!でも、まだ蒼が残っていて……」

「疲れてるだろうから休め。残りの蒼は全部俺が片付ける」


瀬音は柊の戦闘を見ていた。その黒血の速度と正確さは、凄まじいの一言だ。


(瀬音:柊さん、もうあんな小さくみえる)


瀬音は安堵し、ゆっくりと柊の戦闘を見ていた。その時だった。


(瀬音:なんか上から蒼の気配がする……)


頭上を見た瞬間、瀬音は動揺した。油断していたため、攻撃を出すのが一瞬遅れる。


(瀬音:詰んだ……)


柊「よけろー!!」


叫びながら走って向かってくる柊。(柊:駄目だ……間に合わない……)


その瞬間、頭上の蒼が何者かに一撃で倒された。そして、その者が瀬音の前に立った。


男「大丈夫か」

瀬音「ありがとう……ございます」


そこに柊が到着した。


柊「師匠!」


師匠「れん!いつも言ってるだろ!どれだけ強くても守る人に気を掛けられない奴は弱い。強くなれないと」

柊「訓練不足です。気を付けます」


瀬音は必死に庇った。「僕が悪いんです!せっかく柊さんに助けてもらったのに油断した自分が悪いんです!柊さんを責めないでください!」


(師匠:ん?)(この訓練生……)


師匠はまだ倒し切れていない蒼を見て、柊に言った。「漣、行くぞ」

「はい」


二人の戦闘は息がぴったりだった。その戦い方は、まるで鏡のようにそっくりだ。二人はすぐに蒼を全て倒しきった。



戦闘を終えた二人が瀬音の元へ戻ってきた。


柊「そういえば氏原達を知らないか?」


瀬音は、事態を全て説明した。「氏原さんが訓練場に行こうと誘ってくれた後、下級蒼よりは強いんですけど、上級蒼程ではない何者かが現れたんです。その蒼が氏原さんと陵雅の二人を黒血で強引にどこかへ連れて行ったんです」


師匠「……中級蒼か……」

柊「はい」


瀬音「中級蒼ってなんですか?」


師匠は説明した。「下級蒼の力は下級蒼単体。考えることは出来ない為人間に化けられない。中級蒼の力は下級蒼100匹行かないくらい。考えることは出来る為人間に化けられる。上級蒼との違いは強さのみで、上級蒼は500匹以上の力を持つ。こう、護界院で習わなかったか?」


柊「こいつ(瀬音)、まだ訓練生になって一ヵ月程で日が浅いんです」

瀬音「そうなんです……でもなんでそんなに詳しいんですか?」


師匠「なんでってそりゃ、元護界衆だからだ」

瀬音「そうなんですか!?」

柊「師匠は元貴族だ」


瀬音は、目の前の男の権威に言葉を失った。


師匠は、すぐに顔を引き締めた。「そんな話今どうでもいい。いいかお前(瀬音)、さっき言った通り、今あいつら(氏原達)が相手にしているのは中級蒼だ。基本的に上部五人程で適正だと言われている。あいつ(氏原)は上部の中でも強さは真ん中くらいだ。そのさっき言っていた陵雅というのは上部なのか?」


柊は、絶望的な事実を告げた。「いえ。訓練生です。それも訓練生になって今日で二日目です」


師匠の顔色が変わった。「**訓練生!?二日目!?**浅いにも程があるだろ!中級なんか相手にしたらあいつ(氏原)と訓練生の二人なんか勝てっこ無い!今頃死んでいてもおかしくない!」


瀬音「そんな……」


師匠は、躊躇しなかった。「夜も近い。二人共、いますぐ助けに行くぞ」

柊「はい」

瀬音「はい!」


夜が迫り、危険な状況の中で、元貴族とその弟子、そして訓練生である瀬音の三人は、二人の仲間を救うため、中級蒼が連れ去った森の奥へと向かった。

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