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蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
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「こいつ…」

瀬音(何が起きたの?)


砂嵐は一瞬にして止み、視界が晴れた。目の前の光景に、俺も瀬音も驚きを隠せなかった。


瀬音のすぐ後ろには、一人の男が立っている。そして、あれほど強大だった上級蒼は、遠くの木に向かって勢いよく吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れ伏していた。


見知らぬ男「遅くなって悪かった。よく耐え抜いた」


(陵雅:こいつ……一人で蒼をあそこまで……?何者なんだ一体……)


瀬音も、後ろに立つ男に気づき、蒼が遠くで倒れている光景を目にした。


瀬音(この人って……)

瀬音「……貴族様ですよね……」

男「ああ、貴族の者だ」

瀬音「助かった……」


貴族・ダイは辺りを見回した。「想像より人が少ないな」

瀬音「上部の方が逃げろと声を上げたので大半の訓練生は逃げました」

大「なんでお前らは逃げてないんだ」


瀬音は事情を説明した。「逃げ遅れた僕が蒼に殺されそうになったのを上部の方が身代わりになった為刺されてしまって、その光景を見た陵雅が蒼に向かって突っ走って、この四人が残りました」


大は俺の方を見た。(大:あいつ、なんか見たことあるなって思ってたが、陵雅って名前、侑と御頭様が言ってた奴か)


大は冷静に指示を出す。「お前ら(陵雅と瀬音)!倒れてるあいつら二人(柊と氏原)を見とけ。直ぐに医療部が来る。蒼の討伐は俺が一身に引き受けた。じゃあじっとしとけよ」


瀬音「はい!」

陵雅「ああ……!」


(陵雅:さっきまでの俺なら「俺もやる!」と喚き散らしていただろう。だが……)


上部二人でもかすり傷しか負わせられなかった上級の強さ。その上級を一撃で吹き飛ばした、目の前の貴族の圧倒的な格の違い。俺は、自分がこの戦いに加われば、足手まといになるだけだと悟った。この異世界で生き残るには、衝動だけでなく、冷静な判断が必要だ。



大は倒れた蒼に向かって歩き出す。「おいおい、上部とたかが訓練生にそこまで傷つけられてる上級初めて見たわ。弱そ。お前本当に上級か?まあ弱ければ弱い程倒すのらくだからいいけどよ」


(上級蒼・イヅナ:すぐ片付けて終わらそ)

上級蒼「すぐ殺してあげるよ」


大は一瞬で飛び、上級蒼と激突した。


(陵雅:なんだよあれ、速度が速すぎて見えねえ……しかも上級蒼をリードしてる……)


俺は、もしかしたらこの貴族なら上級蒼に勝てるかも、と思った。上級蒼はみるみるうちに傷が増えていくのが分かった。


(上級蒼・イヅナ:やっぱ貴族だね、まるでさっきの戦いとレベルが違う)

上級蒼「やっぱ貴族、強いから楽しいよ」


戦う内に上級蒼も速度が速くなっていき、大と上級蒼、どちらも同じ速度になっていた。さっきの上部との戦いが本当に子供の遊びのように感じさせられた程だった。大の技がもろに入り、上級蒼は大きなダメージを負った。


(上級蒼・イヅナ:まだまだ!!)


上級蒼は戦闘を楽しんでいたが、そこに外部の音が聞こえてきた。


医療部「皆さんご安心ください!ようやくつきました!」


(上級蒼・イヅナ:医療部?誰目線かはわからないが、医療部と同じ服を着て、蒼用の毒を持っているのが光景として頭をよぎった。たしか昔あった医療部も毒を携帯していたね、本当に厄介だったね、もし毒がまたあったら嫌だし、今回は逃げようか)


戦闘中に、いきなり上級蒼は大と離れ、砂を巻き上げ砂嵐を起こした。すぐに大が砂嵐を無くしたが、もうそこには上級蒼の姿はなかった。


大「ちっ。逃げられたか」

瀬音「てことは……勝った?」


大「まあ、倒してないがあっちが逃げたからいったんは勝ったってことでいいか」


瀬音は嬉しくなり、「やったあー!!!!」と叫んだ直後、疲れから気を失った。


大「お、おい!大丈夫か?医療部!こいつも頼む!」



医療部隊長(花奈・かな)が到着した。「4人は連れていくので安心してください。で、あなたはどうするんですか?」


大「こんなちょっとの傷だ、そんなもん必要ない!!」

花奈「やっぱそうですよねー、では毒を使うこともなかったですし、四人つれて退散しまーす」

大「あー、さっさとそうしてくれ」


「さっさとってなんですか!せっかく来てあげてるのに!」

「せっかくってそれがお前の仕事だろ!!さっさと行け、さっさと」

「わかりま・し・た・」

「なんだその言い方!!お前は本当にむかつくな!」

「勝手にむかついといてください、ではさようなら」


大「あ、待った。こいつ(陵雅)最後にしてくれ、ちょっと話すからよ」


「え!俺も運ばれんの?なんでだよ!!」

花奈「上級とやりあったんだから当たり前でしょ!!」

大「当たり前だろ!!」


俺はイラついて言い返した。「なんであんた(大)は決めれるのに俺は強制なんだよ!!」


花奈「貴族は忙しいから自分で決められるの!!あと貴族に向かってあんたは言わない!」

陵雅「あ、さーせん」


両方(大と花奈)イラつきながら話は終わる。花奈は遠くに行きながらも独り言を言っていた。「なんであいつ(大)は毎回イラつくこと言ってくんの!!しかもなんで訓練生の子もイラつくの!もー!!イラつく奴が増えたー!!!」



大が俺に話しかける。「さっき言っていた話だが、あの訓練生(瀬音)が言ってたのは、お前があの子(瀬音)をかばった上部が蒼に攻撃されたところに突っ走ったんだろ。お前は上部を守るために行ったのか?蒼に攻撃するために行ったのか?あの子(瀬音)が気絶したから状況を後々聞こうと思ってたが、倒れて聞けなくなってしまったから聞きたい」


俺は隠さなかった。「上級蒼を倒そうと向かったんだ」


大は顔色一つ変えずに問う。「今日から入った訓練生のお前が黒血を使えるわけもないのにどうしようとしたんだ」


「俺もわからねえけど黒血はいざって時に出せて、上級蒼に向かった時も何も考えず向かったら出たんだよ、一回きりだったけど。てかなんで今日から入った訓練生ってわかるんだよ、俺の事と調べたのか?きも」


「調べてない!!」

(大:嘘。だが陵雅の事は重要項目として特別貴族のみ伝えられていた為知っていた)

「俺は貴族だから護界衆に入った者の事は情報が伝えられるんだ!」

陵雅「へえー」


「きもといったから話したのになんだその返事!!」

「返事までとやかく言われんのかよ!。あれ、そういやなんで来れたんだ?」


「逃げてきた他の訓練生達が伝えてくれたんだよ」

陵雅「へえー」

大「だからなんだその返事!!!」

陵雅「あ、もう話終わったんで連れてってください!」

大「あ!!はあ……」


俺と大の訓練場での会話は、終始噛み合わないまま終了し、護界院へと戻った。



訓練場からはなれた遠くの森。


上級蒼イヅナがある森を歩いていると、横に祖がいる事に気づいた。


(イヅナ:なに!?いつの間に……)


祖は静かに問う。「あの少年(陵雅)、どうだったんだ?イヅナ」

イヅナ「……はい。下っ端の割には黒血を使えていたので相当な……」

祖「そんなこと聞いているのではない。そんなこと我も視界を見ていたから分かる。雰囲気のことだ。あの少年(陵雅)を観察するためにわざわざ行かせたんだ」


イヅナは恐怖しながらも答える。「……はい。特別な雰囲気というのはありませんでした……」


祖は失望したように言った。「そうか。あの時(初めて侑と陵雅があった時)、変な感じがして近くの蒼を向かわせたが護界衆に殺されたから妙な気分の正体を知りたかったがまあいい。ゆっくり観察しよう。一つ気になったのだが、なぜ最後逃げた?貴族に勝てないかもしれないと感じたと思ったが、それでもあの二人の上部を殺すことは出来たはずだ。しかも医療部の声が聞こえた瞬間慌てるように逃げたな」


イヅナは過去の苦痛を思い出し、顔を歪めた。「……昔医療部の毒に戦闘中やられまして、少し苦しい思いをしたので、医療部の声が聞こえた瞬間嫌な気がして逃げました」


祖は安心した。「そうか。貴族に負けると思い逃げたのではと思ってたから安心した」

イヅナはプライドを刺激され、すぐに反論する。「……まさか。あんな貴族、もっと時間があれば殺してましたよ」


「そうか。毒が嫌いという事だな。であれば毒の効かない体にしてやる。飲め」


祖は薬を渡し、イヅナはそれを飲んだ。激しい頭痛に襲われ、意識を失った。


祖「次は毒ごときで逃げずに、一人くらい殺すんだ」


何時間かすると、イヅナは目が覚めた。辺りは夕方になっていた。イヅナは人間に化け、森を抜け、どこかの街へと帰って行った。


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