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蒼の血(アビスのち)  作者: 凪さ
第一章 訓練生編
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絶体絶命

(柊:くっそぉ!!……)

(氏原:ちっ。こんなとこで終わんのかよ……)


氏原が死を悟り目を瞑ったその瞬間、俺の体が動いていた。


「負けんじゃねぇよっ!!」


瀬音が手を伸ばしたのが見えたが、もう届かない。俺は、思考を挟むことなく、氏原の顎に思い切り拳を叩き込んだ。


ドゴン!


それにより、俺と氏原は共に少し遠くに吹っ飛んだ。


氏原は顎に走った物凄い衝撃に驚く。「いってぇー!!ってなんでテメェがここにいんだよ」


氏原は周りを見渡すと、さっきいた場所と違う場所にいた。(まさか、こいつが助けてくれたのか?)


「怪我はねぇか、わりぃ助かった」

「ギリギリ間に合ったぜ。怪我はねぇかって。怪我してんのはあんただろ」


「だな。流石に上級蒼はてこずるな、効かなすぎて心折れかけてたわ。あいつ(柊)ももう限界近そうだしな。お前動けるか?」


「お前じゃねぇよ、陵雅だよ。動けるに決まってんだろ、あんたのせいで何もしてねぇんだからよ」


俺の生意気な物言いに、氏原は笑った。「わりぃな陵雅。俺もあいつ(柊)ももう限界が近い。極力助けるが、体力的に助け切れるかわからねぇ。やるか?」


「当たり前だろ、最初からやる気満々だぜ」



「よし、ここからは3人で行くぞ。多分もう戦闘では厳しい。あの周りより少しでかい木、見えるか?」

「あぁ、見えるぜ」


氏原の瞳に、勝利への冷徹なプランが灯った。


「俺とあいつ(柊)で最速で腹を切りに行く。そして一直線にあの木まで進む。最後の力を振り絞って木に押さえつけて腹を切る。陵雅の出番は木に押さえつけた後だ。最悪拳でもいい。俺らで切ろうとしている所に来て、一緒に腹を攻撃しろ。行けるか?」


俺は迷わなかった。「わかった」


遠くから瀬音は、ただただ俺に感心していた。(あの人、本当に訓練生なの……?)


氏原は柊とアイコンタクトを取ると、二人は同時にすばやく上級蒼に向かっていった。その速度は早すぎて、俺の周りは一瞬風を切り、その迫力に魅了されると同時に、二人の体力と覚悟の多さに衝撃を受けていた。


上級蒼が気づいたときにはもう、腹に黒血が触れていた。

「なんだ?すご、まだこんなに力あったんだ」


一直線に進み、すぐに上級蒼は木にぶつかった。


俺は全速力で追いつき、黒血を纏っていない拳を思い切り上級蒼の腹にぶつけるが、なかなか腹は切れない。柊と氏原は、もう体力が切れかけている。


「瀬音ぉ―!」


俺は、とっさに瀬音の名を大声で叫んだ。


瀬音の脳裏に、俺の言葉が響く。「でもよ、皆んなを助けるために護界院入ったんだろ?」


瀬音は感化され、恐怖を振り払い、拳で上級蒼の腹を殴った。


全員「おおー!!!!」


俺たち四人の力が合わさり、上級蒼を支えていた木が耐え切れなくなり、折れた。



全員が倒れたが、上級蒼は立っていた。しかし、四人の努力の甲斐があり、腹の傷はかなり大きくなり、蒼もダメージを負っていた。


上級蒼「あぶない、あぶない。結構やるじゃん、まだまだって思ったけど、もうさすがに無理そうかな」


俺と瀬音はまだ動けたが、柊と氏原はもう限界を超えていたため、起き上がれなかった。


上級蒼「この二人(柊と氏原)はもう動けなさそうだし、後でゆっくり殺すとして、君たち(陵雅と瀬音)しか動けそうにないし、君(陵雅)から殺そっかな」


そう言い、上級蒼は俺に飛んでくるが、俺には早すぎて逃げる間もなかった。

(くっそー!!)


瀬音も絶望する。(駄目だ、もし陵雅がやられれば勝ち目がない。でも他に守れる人なんていない……、くっそー!)


瀬音は、俺の元へ走り、俺を押し飛ばした。


俺は呆然とする。(なん……で……)


瀬音の目の前には、上級蒼がいる。

(瀬音:ここまでか……)


陵雅「瀬音―――!!!!!」


瀬音には、「瀬音」と叫ぶ俺の姿が見えた。

(瀬音:僕も君みたいになれたかな……)


瀬音は、**「誰かを助けるために動く」**という、人生で最も勇敢な行為を成し遂げ、死を悟った。


その瞬間、いきなり物凄い砂嵐が起き、すぐさま視界が見渡せなくなった。


(陵雅:なんなんだよ……、またなんか来んのかよ……)


この砂嵐は、俺の無力さを笑っているのか?

俺は、瀬音という新たな犠牲の上に、またも生き残ってしまった。

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