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ラリってボンノー!!〜鬼娘は活力煩悩まみれ、俺は無気力何もない〜  作者: 黒船雷光


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第四十四話:オープンキャンパス・オープンマインド

 後日、なぜか千明(ちあき)が俺の通う大学のオープンキャンパスに参加していた。

 もちろん、さくらさんと羅璃(ラリ)も同席だ。


 この企画は、羅璃(ラリ)が「この際、推しが普段どんなことしているのか、実体験してもらおう」と言い出したものだ。


 最初は、「羅璃(ラリ)が千明と一緒に住んで、翔平がグータラ大学生なだけではないと知ってもらおう」とか、恐ろしいことを言い出したのだが、さすがに「犯罪だからやめてくれ」と懇願する羽目になった。


 千明自身は「どうせ家には帰っていない」と開き直っていたが、さくらさんがなんとか説得して、オープンキャンパスに落ち着いた形だ。



 まずは講義の見学。

 法学部の講義室に足を踏み入れた千明は、学生たちの真剣な眼差しや教授の難しい専門用語に、最初から戸惑っている様子だった。


「ねぇ、羅璃(ラリ)さん、これ、何言ってるか全然わかんないし、つまんなーい~

 ウチ思うんだけど…『勉強なんか意味ない』『学歴社会は終わった』ってネットでも見るし~友達も皆言ってるんだよね~だるぅ~って」


 千明が、俺の隣で小さな声で羅璃(ラリ)に囁く。

 羅璃(ラリ)は、フッと笑って肩を竦めた。


「しょーへー、千明に大学の意義を教えてやれよ」


 俺は、羅璃(ラリ)に促され、千明に話しかけた。


「まあ、いきなりは難しいよな。

 でも、千明ちゃんはさ、『勉強なんか意味ない』とか『学歴社会は終わった』とか、ネットとか友達から聞いたことそのまま言ってるだけだろ? それって…本当のことかな?」

「え~どういう意味ですかぁしょーへーさん?」


「今俺と会話している千明ちゃんは日本語で話が通じ合っているよね?」

「え?当たり前じゃん」


「でも…じゃあ、すいませんさくらさん…」

 さくらさんに話を振る。


 さくらさんは意を得たと頷き突然英語で話しかける

「I'd like to chat with you in English, so here I am talking to you.」


 千明の顔が驚きのあと、戸惑いの表情に変わる…

「え?さくらさん何て言ったんですか?」

「I’d love to talk in English!」

「…トーク…イングリッシュ?えーっと、アイ…キャントすぴーくイングリッシュ」

「Oh no, that means we won't be able to have a conversation then.」


 あわわする千明だけど…俺も分からん。

 まあ、何となく『私と英語で会話しましょう』『英語で是非』『残念…会話できないわね』って感じだと思う。

 千明が困った顔をしてこちらを見る。

「ウチ歌詞の英語とか抵抗ないけど、会話とか出来ない…」

「千明ちゃん…意地悪してごめんね。でも共通の知識がないと、コミュニケーションすら成立しないってこと、わかるかな?

 こういう場で専門的なことを学ぶってのは、お互いの共通認識を深めるためでもあるんだ」

 羅璃(ラリ)が二やつきながら「以前のしょーへーだったら言われたくないけどな…」と茶化す…

「うっ」ってクリティカルに俺の心の響く…


 ダメージ受けて突っ伏す俺を横目に、さくらさんが俺の言葉を補足するように続ける。


「千明ちゃん。私も、大学やバンド活動で色々な人と出会うけど、ある程度の教養や知識がないと、深い話ができないの。それは大学や音楽に限らず、どんな分野でも同じよ。


 知識は、人と人を繋ぐ共通言語なの…学校に行かないというのは勿論選択肢として否定するわけでは無いけど、これから社会に出て生きてくための選択肢を推し活以外にも持たないと、行けないと思うの。」


 千明は、さくらさんの真っ直ぐな言葉に、反論できなかった。少しだけ、考えるような表情を見せた。




 次に、俺たちはサークルにも千明を連れて行った。ゲーム制作サークルの部室に足を踏み入れると、山本中会長が笑顔で迎えてくれた。


「おや、潟梨(かたなし)君。今日はまた賑やかだね。ギャルが増えたな、ハハハ」


 山本中会長は、千明という若いギャルが増えたことに少し困った顔をしたが、快く受け入れてくれた。作り途中の羅璃(ラリ)のゲームを見せると、千明は目を輝かせた。


「え、これ、羅璃(ラリ)さんが動いてるー! すごーい!」


 コントローラーを渡すと、千明はすぐに夢中になってプレイし始めた。羅璃(ラリ)のキャラクターを操作して、敵の目玉妖怪を撃ち、小さくしていく。


「あー! もっとこうだったらいいのにー!」

「ここが面白くない! もっとポンポン跳ねるようにしてよ!」


 文句も言っていたが、羅璃(ラリ)が「ほら、お前の意見、もっと言ってみろよ」と煽ると、さらにヒートアップして次々と要望を口にした。

 山本中会長は、いつものようにメモを取っている。

 こういう苦言も含めて受け止める姿勢って大切なんだろうなと改めて思う。


「これ、全部、サークルのメンバーで作ってるんだよ?」


 俺がそう言うと、千明は「え!?」と驚いて、目を丸くした。


「すごい! こんな本格的なゲームを、ここに居る人たちが作ってるなんて…!」


 千明は、改めて部室を見回し、キーボードを叩く中村山くんや、タブレットで絵を描いている寺社杜さん、そして俺の顔を順に見て、感嘆の声を上げた。




 最後に、俺たちは千明をコンビニに連れて行った。

 夕方のピーク時で、ミサト先輩がテキパキとレジを打ち、商品を補充している。

 千明は、まさか目の前の店員が『白い堕天使(ルクスフォールン)』のボーカルだとは気づいていない。


 休憩時間になり、ミサト先輩が休憩室から出てきた千明を見つけると、にこやかに話しかけた。


「あれ? いつもライブに来てくれている子じゃない… いらっしゃい! いつも応援ありがとうね!」


 ミサト先輩の言葉に、千明は固まった。そして、目の前のミサト先輩と、ステージでシャウトしていたミサト先輩の姿を頭の中で交互に見比べて、目を見開いた。


「ええっ!? 白い堕天使(ルクスフォールン)のボーカルミサトさんが、コンビニの店員さん!?」


 千明の驚きの声が、店内に響き渡る。ミサト先輩は、いつものように豪快に笑った。


「そうだよー! バンド活動だけじゃ、なかなか食っていけないからね!

  ここで頑張って、ライブハウス代稼いでるんだよ!」


 千明にとって、バンドで成功して、音楽活動に専念しているものだと思っていたのだろう。

 その事実は、彼女にとって衝撃だったようだ。


 夢を追って生きていくことは大切だけど、夢だけで生きていけないリアルがそこにあること。

 でもだからこそ、夢を持つことの大切さを、千明は少し垣間見たようだった。


 その後、千明は深々と頭を下げて言った。


「今日は、本当にありがとうございました。

 なんだか、色々なことがわかった気がします。私、これから自宅に帰ります」


 そう言い残し、千明はコンビニを後にした。


 果たして千明は、この一日で得た「リアル」をどう判断し、これからどう行動するのだろうか?

 そもそも、この行動に俺の煩悩の解消に関係するのだろうか?羅璃(ラリ)は何を考えて協力しているのかも分からないが…まあ、少なくとも千明という女子高校生のためになっている…それでいいと思うことにした。他人の心配が出来る事が成長の証ということなのか…?

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