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FLOWER POT MAN 〜ただ植物を愛でていただけの俺が、なぜか魔王と呼ばれています〜  作者: 卵座
第7章 - The Underground Colosseum

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099 - エーデルの地底墓


 その日、俺は闘技場へとやってきた。


 ウォーターハウスから話を聞くためだ。

 昨日の面接では居住許可を出したところでひとまず解散としてしまったので、詳しい話はまだ聞いていない。


 建設初期にチラ見したときよりもギャラリー席が整備されていて、料理系の生産職が出店を出したり、食事を配ったりしている。

 今はボランティアだが、そのうち来客が増えてきたら、これが商売になっていくのだろう。


「あ、ジェノベーゼだ」


 いつしか俺が「ヴェルデブールの名物にしよう」とか嘯いたハーブのジェノベーゼパスタが、いつの間にか定番の品になっている。


 ハーブ類は成長が早く、薬草園で毎日のように収穫できるので、せっかくだからと島内に出荷しているのだ。

 それがこうして労働者たちの食事に変わるというのは、なんだか見ていて気持ちのいいものだな。


「せっかくなのでひと皿貰おうかな」

「ええ、ぜひどうぞ……ってトビさん!?」


 うん、メンデル出してないと地味だよね俺。

 ありがとうと言って受け取った食器を片手にギャラリー席へ。


 闘技場の中央ではプレイヤー同士の模擬戦が繰り広げられていて、俺たちはそれを見下ろすように見物できる。


 今戦っているのはタカツキグループのひとりかな。どこか見覚えがある。

 相手はオーバーキル、昨日の今日でさっそく入り浸ってやがるようだ。


 ウォーターハウスもここに来ているはずなのだが、まだ準備室だろうか。


「へえ、意外と均衡してる」


 さすがにオーバーキルのほうが年季の入った動きをしている──と思いきや、相手もなかなか粘る。まだ無名とはいえ、さすが彼らもプロを目指しているだけある。

 ぼうっと模擬戦を眺めながらパスタを頂く。


「……俺が作るより美味しいな」


 本職が作ったのだから当然なのだが、とても美味しい。俺も頑張ってスキル育てよう。


 そのうち決着がつく。

 さすがにオーバーキルの勝利。


 しかしさらに他のプレイヤーたちが加わる。

 多人数戦だ。オーバーキルに対して複数人でかかるつもりらしい。


 まあこういう遊びの場ならハンデとして面白いだろう。オーバーキルもノリノリで受けたようだ。


「強いなあ、バーキル先輩」


 さすがに動きはキレッキレ。

 そこらのプロよりよっぽど経験豊富だからなあ。


 などと奮闘を見せたオーバーキルだったが──


「だあーっ! 無理ィーッ!」

「そりゃそうだ」


 ──さすがに数の暴力には抗えず、押し負けで決着。



 そのまま休む間もなく三戦目。

 まだまだ戦い足りないらしいオーバーキルは続投だ。


 対する相手は俺にとっても目的の人物、ウォーターハウスだった。


 水球の中を悠々と泳ぎ、控え室から出てきた人魚はオーバーキルと向かい合い、同時に動き出す。


「うん、さすがにダントツ上手いな」


 結果から言えばウォーターハウスの圧勝だった。

 とにかく接近を許さず、遠くから水の弾幕を操ることでペースを握り続け、じりじりと押し勝ち。


 こんな狭い闘技場で、よくもまあ。


 ……この人魚姫、俺と戦った時点で「あとはプロチームに声をかけてもらうだけ」みたいなレベルだったしなあ。

 ここにいるアマチュア勢の中だと、シザー、ウーリを除けば最上位だろう。次点でオーバーキル、フルルあたりが続いていく感じ。


 

 そういうわけで俺は待ち人と合流した。

 水流に乗って直接ギャラリー席へとやってくるウォーターハウス。


「どうもトビさん! 申し訳ない、遅くなりました」

「いや、今来たところだから」

「それは嘘。パスタ食べきってるではありませんか」


 そうだった。食器を片してから、俺は改めて席につく。ウォーターハウスは隣にぷかりと浮ぶ。


「それじゃ、単刀直入に話してしまいましょうかね」

「ああ、よろしく」


 見下ろす先では、今度はガブちゃんが対戦相手を募集しているが、ここからは観戦よりも話が優先だ。


「ご紹介するのは "エーデルの地底墓(ちていぼ)" 、いわゆる地下マップです」

「地下?」

「ええ。トビさんは以前に "月隠れの神殿" を攻略したでしょう? ああいう隠しダンジョンの一種です」


 月隠れの神殿ほど攻略が必要な場所でもありませんが──とウォーターハウスは付け加えた。


「攻略がいらないってのはどういう意味?」

「うーん、なんといったものか。やや特殊なレギュレーションで戦ってもらうことになる場所なんですが……詳しいルールはネタバレ配慮ということで」


 ……特殊なレギュレーション?

 なるほど、普段の戦闘とは少し違った形になるのか。


 たしかにそれは自分の目で確かめてみたい。楽しみだ。


「で、その探索報酬が夜の魔法関連ってことだな」

「その通り! まあ詳しいことは、やってみたらすぐ分かるかと」


 そればっかりだな。

 とにかくマップの場所と地下への入り方をメッセージで送ってもらい、これなら今日にでもチャレンジできそうだと俺は判断する。


「人数は? パーティ組んだ方がいいかな」

「いえ、最大四人ですね。ソロでもデュオでもトリオでも楽しいですよ」

「へえ?」


 これまた珍しい。

 このゲーム、本来は八人パーティなのに、地底墓とやらのレギュレーションはその半数か。


 俄然、面白くなってきた。


「最初はソロでやってみるのも楽しそうだが……」


 どうしたものか。

 久々にメンデルと二人旅をするか?


 そんなことを考えているとき、すぐ隣からよく知っている声が聞こえた。


「アレ、トビくんも闘技場ですか? 珍しいですねえ、ボクとヤります?」


 足音も気配もなく、気付けばひとつ後ろの席に座っているフルルだ。

 俺の肩に顎を乗せ、耳元で言う。


 相変わらずの気配遮断。これにはウォーターハウスもぎょっとしている。


「……ちょうどいいかもな」

「はい?」

「フルル、俺とダンジョン潜らない?」


 せっかくの機会だ。

 実はふたりきりで遊んだことはなかったし、何より夏休みなら時間もあるだろうし。


 俺のお誘いに、フルルはぱあっと笑みを浮かべて頷いた。


「よくわかんないけど行きます!」

「よし」

「PvPはヤりますか!?」

「それはやらない」


 手の内ではそわそわとナイフが踊る。

 俺はパーティを申請し、フルルはそれを受諾した。


「なんというか、仲がよろしいですねえ……」


 呆れたように言うウォーターハウス。

 まあ、仲はいいと思うよ。よく襲われるけど、色んな意味で。


「トビくん、さっそく行きます?」

「ビルマーに装備を預けてるから、それを受け取ってからだな」

「了解です」


 水晶竜クアルアーラのドロップ素材──

 ビルマー曰く「どう考えても今の進行度で採れてはいけない素材」を贅沢に使って、俺の装備品一式も大幅に強化されている予定だ。


 さあ、新しいマップに挑む準備をしよう。


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