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FLOWER POT MAN 〜ただ植物を愛でていただけの俺が、なぜか魔王と呼ばれています〜  作者: 卵座
第7章 - The Underground Colosseum

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098 - 居住希望者面接②

 

 面接はまだまだ続く。


 三人目、戦闘職の女性。

 かなり目立つビビッドピンクの派手髪アバターで、膝の上では自分の指より長い鉄製ネイルの先をかりかりとすり合わせている。


「ガブちゃんです。戦うの好きです。よろっす」


 ギャルだ、都会のギャルだ。

 どこか間延びした気だるげな声色だが、視線はじっと俺を観察している。


 直感する、こいつフルルに似たタイプだ。


「ええと、今回の移住希望は何を目的に?」

「闘技場っすね。なんかレベル高いって聞いたんで!」


 はい、確定。


「シザー・リー選手が超好きなんですよ」

「ああ、シザーのフォロワーか」

「でも引退しちゃったじゃないですか!」

「しましたね。だからお近づきになりたいと?」

「あ、いや。それはファンとしてはちょっと違いますね〜」


 おっと、そこはわきまえているか。


「シザー選手がずっと引退したままとは思えないんすよ、だって戦闘狂じゃないっすか。だから今もこっそり練習してるんだろうな〜って」

「……うん、だから?」

「アタシも同じような環境で練習してみたいっすね!」


 なるほど、意外と真摯な競技勢だな。

 面白い。ガブちゃん、採用してみよう。



 四人目だ。こちらは全身黒一色の女性。

 さっきはビビッドギャルだったが、今度はゴスロリである。黒いレースの装飾をあちこちに散らし、うすく透けたヴェールを被っている。


「あの、すごくいい街並みだなと思って」


 ああ、はい。

 あなたは間違いなく好きでしょうね。


「挨拶もなしに失礼しました、グリフィスと申します。遠くを見るのが好きで、そういう遊び方をしています」

「と、遠くを?」

「はい、遠くを見ます。視力強化系のスキルはほとんど網羅しています」


 なんだかとんでもないことを言い出して、ゴスロリ女はそのまま続ける。


「この島でも海を見たいなと思っておりまして。ずうっと見張りますので、もし敵が来たらすぐに探知できるかと」

「ええと……つまりレーダーみたいなことをしてくれるってこと?」

「結果としてはそうですね、それが目的ではありませんが」


 分からない、分からなすぎる。


「……ちなみに視力全振りってどれくらい見えるものなんですか?」

「一キロメートル先のランドルト環くらいなら精査できます」


 マジで言ってんのか。

 ランドルト環って視力検査で使うあの「C」だよな? 一キロ? 本当に?


 バウクロッツェの方を見れば、彼女は自信満々に頷いた。どうやらマジな話らしい。


「面白そうだから採用で」

「ありがとうございます」


 グリフィス、居住を許可しよう。



 さて、五人目。

 知り合いがやってきた。


「久しぶり、バーキル先輩」

「トビくん! お久しぶりっす!」


 やってきたのはオーバーキル。

 室内だろうがお構いなしの上裸に、自慢のリーゼントが天高く聳える。


「バーキル先輩、なんでここに?」

「えっ! だって闘技場がイイ感じって聞いたッすよ!」


 お前もかよ。

 PvP狂いの巣窟みたいになってるぞ、うちの島。


「……どうしようかなあ。さっきガブちゃんを採用しちゃったばっかりなんだよなあ」

「ガブちゃんって誰ッスか?」


 とても悩ましい。

 ガブちゃんの場合はまだ「シザーと同レベルの練習がしてみたい」という向上心があったが、こいつはただ戦いたいだけなんだよ。


 まあ、防衛戦力としてはかなり頼りになるけれど。


「あれ? そもそもバーキル先輩って配信業だよな」

「そうッスね」

「一箇所に定住するのって、あんまり配信映えする絵にならないんじゃ……」

「ああ、基本は王都のNPCクエストやってるんで大丈夫ッす!」


 じゃあいよいよ住む必要ないだろ、こいつ。


「……先輩、ファストトラベルポイントの登録してっていいよ。闘技場いつでも遊びに来ていいから」

「え、マジすか! いいンすか! やったーっ!」


 オーバーキル、不採用。

 まあいつでも出入りできる状態にしておいてやろう。闘技場が盛り上がるのは俺も嬉しい。



「トビさん、今日は次の人が最後です!」

「ああ、そうなんだ。じゃあこのままお願いします」

「はーい、呼んできます!」


 バウクロッツェが通してくれる次の客人で六人目だ。



 六人目、これまた知り合いだった。

 宙に浮いた水球の中を泳ぐ、人魚である。


「おい、またPvP勢じゃねえか」

「先日ぶりです、トビさん。今日はドル伯爵家の刺客ではありません。職なし宿なし根なし草、ウォーターハウスと申します」


 ウォーターハウス。前回の水晶竜戦では、なんだかんだ一番ひやひやさせられた相手がこの人だ。

 PKだがフルルのような戦闘狂というわけではなく、たしか俺を襲ってきたのもプロチームの注意を引くためだったとか──つまりはプロ志望の現アマチュアである。


「まあ、正直嫌いじゃない」

「おや本当ですか! ひとりの競技プレイヤーとして光栄です」

「うん。防衛戦力という視点で見るなら、今日一番の実力だろうしな」


 少なくともオーバーキルよりは強いと思う。

 まあ地力は五分かもしれないが、ウォーターハウスはオーバーキルと比べて、デイブレのシステムの強みやビルドの構築を押し付けるという形の立ち回りが上手いのだ。


 そして結局のところ、ゲームで一番結果を出せるのはそういう強みだ。

 

 俺が褒めると、ウォーターハウスはぱあっと笑みを浮かべ、尾ひれをばたつかせた。

 この人はけっこう素直だ。だがバタ足はやめてくれ、集会所が水浸しになる。


 まあ、ひとつ懸念があるとすれば──


「犯罪プレイヤーなんだよなあ……」

「そりゃあもう、王都でもばっちり指名手配されていますとも! 隠れ蓑だったドル家も没落しちゃいましたし」


 匿ってもらう立場で威張るなよ。


 ……ていうかドル家、没落したの?

 この短い間に何があったんだよ。またしても俺は時勢に疎い。


 こほん、とウォーターハウスはひとつ咳払いをして見せる。


「まあまあ分かりますよ。私のような前科者、なにも無条件で受け入れてもらえるとは端から思っていません」

「ほう」

「手土産があります。夜の魔法についての情報です」


 ──夜の魔法。

 そうだった、こいつは夜の魔法使いなのだ。


 その言葉に俺が小さく反応したのを、ウォーターハウスは見逃さなかった。

 にいっと悪い笑みを浮かべる。


「トビさん、あなたは夜属性の呪文をほとんど手に入れていませんね」

「…………」

「それは当然です。本来、夜の魔法とは月詠(つくよ)巫女(みこ)NPCとの交流によって強化していくものですから」


 ……NPCとの交流による呪文の獲得か。

 たしかにフルルの言っていた通りだな。


「トビさん、月詠み巫女との交友は?」

「まったくない」

「でしょうね、予想通りです。それでどうやって夜の魔法を手に入れたのかは甚だ疑問ですが……」


 それは置いていて、とウォーターハウスは続ける。


「そんなトビさんでも夜の魔法を強化できるかもしれない、とあるマップがあります」

「……マップ? なるほど、それを紹介してくれると」

「ええ! 私の亡命先となってくれるなら!」


 もうはっきり亡命って言ったな。

 さて、どうしたものか。まあ悩む必要もないか。


 ウォーターハウス、採用としよう。


「……ちなみに、亡命先にうちを選んだ決め手は?」

「なにやら闘技場のレベルが高いと聞いたものですから」


 やっぱりお前もかよ。

 どいつもこいつも、PvP狂い共め。


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― 新着の感想 ―
主人が主人なだけあって、対人中心の戦闘狂しか来ない・・・・・・・
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