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FLOWER POT MAN 〜ただ植物を愛でていただけの俺が、なぜか魔王と呼ばれています〜  作者: 卵座
第5章 - Run the Abyss

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054 - 王都ボス巡りRTA①

誠に勝手ながら更新再開致します。

というのはなろう提携のコンテストで賞を頂きまして、こちらで更新をしないままというのは不義理だと思ったためです。お付き合い頂ければ幸いです。


 目を覚ます。

 今日は午前中からログインしたはずが、どうにもやる気が出ずスリープモードでうたた寝。目を覚ました頃にはもう午後だ。


 むにゅっと頬に触れる、柔らかな肌色。

 この肉厚な感触は……


「……メニーナ?」

「あ、トビくん……おはようございます」


 クランハウスのベッドの上。

 メニーナの膝枕で目を覚まし、未だぼんやりとしたまま小さく寝返りを打つと、メニーナは俺を見下ろしてそう応える。


 いや、実際には「ぶるんっ」と突き出た豊満な胸部が視界を遮り、その顔は窺えないのだが……まぁいつも通り穏やかな表情をしているのだろう。


「トビくんが起きたら出掛けようって、皆さんとお話してたんですよ。起きられますか……?」

「ん……」


 そういえば、今日はそんな約束をしていたのだった。

 やや眠たい。無理やり瞬きをして眠気を堪えようとしていれば、メニーナの両手が俺を抱きかかえるようにしてゆっくりと身体を起こしてくれる。


 だらけた身体。

 顔を谷間にうずめさせるように正面から抱きかかえられ、メニーナは「よしよし……」と囁きながら俺の後頭部を撫ぜる。大きな身体は安定感抜群だ。


「……トビくん、日に日に赤ちゃん化が進んでません?」

「うん。メニーナのおっぱいが落ち着くみたい」


 ……生意気娘2名の失礼な声が聞こえた気がする。

 すうっと思考が冷えて、恥じらいがやってくる。まだ半分眠った身体に力を入れ、身体を引き剥がそうとして──


「あっ、危ないです……慌てないで、恥ずかしくないですからね……。はい、ぎゅ〜……」

「……っ!?」


 ──メニーナの腕は、より強い力で俺を抱いた。

 腰を反るようにして全身をぴったりと密着し、顔がより深くまで乳の隙間にうずまる。メンデルの芳香とはまた異なる、まったりとしたミルクのような甘い匂いに思考が蕩ける。


 視線だけを動かし、ベッドの上に待つギャラリーたちをかろうじて覗き見れば……呆れた様子でこっちを見ているウーリ、フルル、そして()()()


「……っ! し、シザー……その、これは……」

「い、いえ……構いませんよ? ご満足のいくまで、待っていますから……」


 ……しまった。今回の約束に、せっかくだからとシザーを呼んだのを完全に忘れていた。

 首から額まで、顔をうっすらと紅潮させたシザーは明らかに気恥ずかしそうな様子。顔を逸らしながらも、目線だけでちらちらとこちらの様子を窺う。


「ウーリ、このクランハウスは……いつもこのような有り様で……?」

「まぁ大体ね。トビくんが先にインしてお昼寝してること多いから、そういうときは流れでこうなっちゃうかな」

「トビくん寝起きダメダメですからねえ……ボクは寝室とベッドがひとつしかないのが悪いと思います」

「そ、そうですか。その……お、旺盛なのですね。この前もたっぷりと処理して差し上げたばかりなのに……」


 やめろやめろ。言うな。

 一気に目が覚めて、俺はメニーナの肉厚な抱擁から這うように脱する。メニーナもなんで残念そうなんだ。


「……はあ。悪い待たせた、もう行く?」

「トビくん、今さらそのクールキャラは無理だよ。メニーナのおっぱい気持ちよかったねえ」


 ぐうっ……。


「トビくん。私のことはお気になさらず、普段通りで結構です。本日はお邪魔させて頂いている身ですし……」

「シザー、違う。聞いて。普段からこうではない」

「……申し訳ありません、トビくん。太ももの感触から女の子を判別できてしまっている時点で、その言い訳は通用しないかと」


 …………。

 それはそうかもしれません。


「あのう、まだ行かないんですか? ポーションの準備できましたよ」


 ナイス助け舟だ、フルル。

 フルルはテンションが高いときと低いときで随分性格が変わるが、ドライなときはとことんドライ。このマイペースさにときおり救われる。


 俺たちは揃ってクランハウスを出る。

 向かう先は、各地の()()()()である。




 *****



 何か適当なボスを倒しに行こう──

 そう思ったのは、スキルスロット拡張のためだ。


 〈夜属性魔法(エレメント・ノクス)〉を手に入れたことでメンデルの飢えはひとまず満たされたが、その一方でまたスロットが足りなくなってしまった。

 そういうわけで、スルーしてしまった序盤のボスおよび王都周辺のボスを皆で狩り尽そう──というのが今回の目的である。


 ちなみにゲストとして呼び出したシザー・リーは、厳密にはまだ〈グレゴール薬師商会〉のメンバーではない。ただ、俺はいずれ入ってほしいと思っている。タイミングを窺い中だ。

 だって、せっかくドラゴンフライを抜けたのなら……たくさん遊びたいではないか。俺にとってはウーリに次ぐ古い友人なのだ。


「マップが混み合う前に、まずは徘徊型から行くよ。〈遠吠えの森〉の徘徊型ボスは〈タイタンモール〉……でっかい肉食モグラだね」


 プランニングはウーリ。

 こういう特定の相手の対策なんかは、ウーリに任せておけばまず間違いない。


「こいつは地面に強い振動を当て続ければ呼び出せる。トビくん、ツル張り巡らせといて。出てきたとこ捕まえるよ」

「はいはい」


 ツルを格子状に編んで網を形成──

 さらに地面の中にもツルを無数に忍ばせる。


 ウーリは木の上に飛び上がると、地面に向かって矢を放った。相変わらずの吠えるような風切り音、そして地面を叩く轟音と振動が響き渡り、ウーリはそれを何度か繰り返す。


 そして──直後、バタバタと地の底をもがくような振動が続いたと思えば、地面の中から丸っこい巨大モグラが現れる。


『徘徊型ボス〈タイタンモール〉が確認されました』


「お、思ったよりデカい……」

「丸いですねえ」

「か、かわいい……!」


 家ひとつはあるんじゃないかというサイズ。

 鼻先だけ妙に肌色なところとか、退化しきった目だとか、モグラって大きくなると不気味な造形だなぁと俺は感じるのだが……広いんだよなぁ、メニーナの可愛い判定。


 まぁとにかく、こいつは拘束罠への耐性が低めのボスなので、ツルの網で雁字搦めにしてタコ殴りだ。


「メニーナはトビくんにリジェネかけてあげて」

「は、はい!」

「フルルちゃんと私でチクチク攻撃。シザーはトビくん守って。土弾は斬れば落とせる」

「はあい」

「分かりました」


 巨大さ故か、パワーはたしかに凄まじい。

 暴れ回るたび、身体が引き摺られるような感覚と共にHPがわずかに削れ、それをメニーナのエンチャントが補ってくれる。


 ときおり飛んでくる土魔法はシザーが漏らさず撃ち落とす。

 フルルとウーリ、そしてメンデルの捕食攻撃が、あっという間に巨大モグラのHPを削り取った。


『〈タイタンモール〉を撃破しました』


「よし、じゃあこのまま走るよ。お次は炭鉱です」

「RTAすぎる……!」


 ボス攻略どころか移動ルートまで完全に事前準備してあるウーリのプランニングに戦慄する。この話が上がったの昨日だぞ。


「な、懐かしいですね……闇呼び隧道……」

「ああ。メニーナさんたちが注目されたきっかけは、たしか隧道裏ルートの開拓でしたね」


 シザーの言葉にメニーナがニコニコと頷く。

 ここは初対面のはずだが、普通にコミュニケーションできているな。相性が悪くないなら何よりだ。


「今じゃそのツテで譲ってもらった薬草園に住んでるわけだから、何がどこに繋がるか分かったもんじゃないな……」


 思い出と表現するにはやや陰気すぎる暗い洞窟を駆け抜けていくと、やがてボスエリアだ。

 裏ルートではない──俺たちが未だ踏破していない、()()()()の番人である。


『封鎖型ボス〈ガーディアン・コール〉が確認されました』


 以前、少しだけ話に聞いていた巨大な石炭ゴーレムだ。

 取り巻きとして小型ゴーレムも何体か湧いて出る。


「ドレヴァロの方が100倍強かったから安心してね」

「は、はいっ……」

「トビくんには小型のヘイトを全部任せちゃうよ。ついでにメニーナ運ぶのもよろしく」

「了解」


 序盤のボスゆえか小型ゴーレムのAIは単調で、一撃入れれば簡単にヘイトが取れる。

 だから辻斬りのように殺人彗星(キリングハレー)で殴りつけて周り、一通りのヘイトを掻っ攫いながら空中へと逃げる。ついでにメニーナも一緒だ。抱きかかえて飛ぶ。


「お、重くないですか……? 私、おっきいし……」

「大丈夫、ウーリの方が重い」

「えっ……!?」

「おいそこ、聞こえてるぞーっ!」


 機械弓込みの重さですから。


「それじゃ、トビくんが小型引きつけてる間に倒しちゃうよ! メニーナは水魔法、核が冷えたら皆で一斉に叩く。核が赤熱しだしたらまた水魔法。この繰り返し!」

「メニーナさん、動き回りながらでも狙える?」

「が、頑張ります……!」


 小型に追われて空中を飛び回りながら、メニーナがウォーターボールを放つ。やや照準はぶれるが、目的はダメージではないので問題ない。

 ゴーレムの胸元で赤熱する弱点部位が冷やされ、脆くなったその場所に全員の攻撃が一斉に突き刺さる。


「火炎放射が来るよ。退避!」


 向こうの攻撃は打撃と突進、火の魔法。

 元より動きはのろく、魔法もウーリの〈熱源感知(サーモセンス)〉があれば容易に躱すことができる。


 回避と攻撃を同じように繰り返し続け、数分後、やがてボスは没した。


『〈ガーディアン・コール〉を撃破しました』


 ……すごいな。

 きっちり役割を固めてから挑むとこんなにスムーズに進むのか。本当にRTAみたいな早さだ。


 ボスと同時に取り巻きゴーレムたちも消えていく。

 たんと着地してメニーナを下ろしながら、ログの確認のためにウィンドウを開くと……


「あ、スロット増やせる」


 スロット数を拡張できるようになっていた。

 経験値も潤沢なので、迷わず成長させる。



 Name:トビ

 Race:夜の眷属

 Slot:8

 Skill:〈★魔花使い(テイム:グロウス)〉〈★箱庭支配(ガーデンルーラー)〉〈★劇薬覚醒(ハーヴドープ)〉〈★捕食者(プレデター)〉〈★嵐雲渡り(ブリッツフォール)〉〈★蹴術使い(スタイル:キックス)〉〈★ 夜属性魔法(エレメント:ノクス)〉〈★異常(レジスト:)耐性(オールバッド)〉〈支配(レジスト:)耐性(ドミネート)



 これで〈支配耐性(レジスト:ドミネート)〉以外のスキルは常にスロットに入るようになった。

 戦闘時はこれを基本にするとして……生産系のスキルとかをもう少し取ってもいいなぁ。経験値は有り余っているし、考えておこう。


「さすがにトビくんが一番乗りかぁ」

「月詠み三姉妹を全部倒した分のリードだな」


 それにしても、計12体の撃破でスロット+3まで拡張できるとなると……


「2体で+1、6体で+2、12体で+3……じゃあ次の拡張は20体目か?」

「2、4、6と必要数が増えていますから、そうですね。次は8必要かもしれません」


 シザーの検算に頷く。

 遠いなぁ。なかなか急成長はさせてもらえない。


「まぁでも、12体で+3なら私とフルルちゃんは届くかな。メニーナはギリギリ足りないかも」

「だ、大丈夫です……! お気になさらず……!」


 さあ、まだまだ行きましょう。


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― 新着の感想 ―
おや、おかえりなさい とってもえっちなやつは読みましたが、カクヨムまでは追えてなかったので助かります これからもよろしくお願いします
>轟音と振動が響き渡り、ウーリはそれを何度も繰り返す。 >そして──直後、バタバタと地の底を~ 『何度も繰り返す』と『直後』で時間経過表現がぶれてませんか?
カクヨムのほうも読んでましたがこっちも再開ですか! UIがこっちのほうが好みなのでありがたい!
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