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FLOWER POT MAN 〜ただ植物を愛でていただけの俺が、なぜか魔王と呼ばれています〜  作者: 卵座
第7章 - The Underground Colosseum

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102 - 霊園歩きの軍勢


 初見のコンテンツだが、生存は順調だ。


 とにかくモブの湧きポイントを見つけてはアイテム収集(ファーム)に励み、鉢合わせた敵チームは倒していく。漁夫られないように素早くだ。


「げえっ! トビだ!」

「嘘だろ、マジで入ってきてんのかよ……!」


 やはりアンリアルを中心にして、俺たちが参加しているという情報は出回っているらしい。


 まあそんなことは気にせず殲滅だ。

 悲鳴を上げて蹂躙されるプレイヤーたちは、やはり最近戦ったタカツキやウォーターハウスなんかと比べるとレベルは一段二段と下で……言葉を選ばずに言うなら「一方的」な試合展開になる。


「あ、トビくん。最終安地読めますよ」

「頼んだ」


 頷いてミニマップを表示するフルル。

 その手には藍色の方位磁針が握られている。


 これはミッドナイト・フェスティバル専用のイベントアイテムで、次のエリア収縮範囲を事前に覗き見る効果を持つ。


 プレイヤーを倒した場合も、モブを倒したときと同様にアイテムがドロップ──

 そうした素材を規定の数まで集めることで、この方位磁針のような便利アイテムを制作できる。これらを駆使して勝負を優位に進めるのだ。


「どうだ?」

「あ〜……けっこう外れちゃってますね」

「そうか。さすがにいい場所は取られちゃってるだろうな」


 こればっかりは運だから仕方ない。

 ミニマップを見せてもらうと、たしかにエリアは俺たちのいる位置から全くの逆方向を中心として収縮予定だ。


 こういう場合、すでにいい待機場所に陣取っているであろう他チームをこちらから攻略し、エリア内に逃げ込む必要があるので……まあリスクの高い動きをしなくてはならない。それでもやるしかないのだけど。


 なおこの円形の "エリア収縮" に巻き込まれた場合、アイテムによる回復では到底間に合わない速度のスリップダメージを受け続けることになる──とかが他のゲームだと定番だ。


「もう行きます?」

「ああ、セオリーとか分かんないからな。ゴリ押しでいこうぜ」

「ボクもそれがイイです」


 うん、俺たちフィジカルあるからいけるよ。

 本当はもっといい小技があるのかもしれないが、分からないものは分からない。強引に行こう。



 俺たちは一斉に走り出した。

 ミニマップをチラ見すると、左上には残りチーム数が表示されているようで、俺たちが三チームほど蹴落とした以外にもすでに脱落チームは多い。


 ……俺たちを総出でリンチする、とかそういう動きはなさそうか。

 スポーツマンシップには則ってくれているらしい。

 

 やがて俺たちは、マップ内でも一際高低差のある遺跡群に接近する。


「……古城か? ハイドしやすそうだなあ」

「音で分かるので大丈夫ですよ。というかすぐのところに居ます、ヒトが三人と……うん? なんでしょう、この音……」


 フルルは珍しく怪訝そうな表情を浮かべた。

 建造物の裏手で、どうやら侵入者を待ち構えているらしい三人チーム。だがそれ以外に何かいるのか?


「……地面の下です。デカいのが動く音と、それにもっと、大勢……はあ? 何人いるんですかこれ!?」

「おい、フルル?」

「いっぱい出てきます! トビくん退避っ!」


 もう何が何だか分からないが、とにかく俺はフルルを抱えて反射的に跳んだ。

 古城の壁にツルを引っ掛け、大きく跳躍したその直後──



 ──足元から現れたのは、無数のアンデッドたちである。



 ゾンビ、スケルトン、幽霊。

 だが今まで見たモブモンスターとはどこか違う、装備もよければ動きも俊敏──俺たちを追うように一斉に駆け出し、洗練された群れの動きで迫ってくる。


「なんだこいつら……!?」


 そして動揺した俺の隙をつくように、古城の裏手からプレイヤーたちは一斉に顔を出す。


「やっぱり出会っちまったなあトビくん! 正々堂々とは言い難いが、ここで勝負ッ!」

「アンリアル……!」

「おっと、声を覚えててくれたか? 光栄だ!」


 ごく普通の日本人顔にエルフ耳──この変な逆張りの仕方は間違いなく俺の知るアンリアルのセンスだ。

 まさしく魔法使い然とした木の杖を片手に握り、詠唱なく闇色の魔法弾を撃ち放ってくる。


「エンチャント・ノクス、クアル──ッ!」


 急いでバフを張り、闇の弾幕を防ぐ。

 メンデルのツルによるガードと、さらに結晶弾をこちらも掃射することで攻撃を相殺。


 一方こちらの弾丸も、アンリアルの傍に控えた盾兵によって見事にいなされる。



 離れた場所に着地してフルルを下ろす。

 さて、問題はこちらへ迫ってくるアンデッドたちだ。


 こいつらは何だ?

 この古城にだけ湧くモブか? あるいは──


「アンリアル、今作では死霊術師にでもなったか?」

「うん、惜しいな。まさに今作の俺は夜魔法の派生系、死霊魔法を扱う術士だが──このアンデッド軍の指揮官は俺ではないよ」


 アンリアルが言ったそのとき、地面が揺れた。


「トビくん! 出てきます、下からデカいの!」


 フルルの警告と同時に、そいつはゆっくりと顔を出した。

 地面を割り、苔むした図体を地表に晒し、四足歩行でのんびりと這い出るその姿は──巨大な亀である。


 黒と灰の混じるひび割れた身体にはびっしりと苔がこびりつき、何よりその背中にはいくつのも墓石を背負っている。


 まるで "墓地が歩いている" ──

 そんなデザインをしたモンスターが大きく咆哮し、俺たちを睨んだ。


「なるほど、テイムモンスターか」

「その通り! "霊園歩きのジェイマール" ──我が愛しのジェマちゃんだ!」


 ああ、うん。

 あなたも名前つける派だよね。


 ジェマちゃん。そう呼ばれて大層可愛がられているのであろうこのテイムモンスターは、おそらくボスクラス。

 知らない個体だが、アンデッドを無限湧きさせるタイプのボスだと考えていいだろう。


「トビくん、ジェマちゃんが動きますよ」

「分かってる」


 そして俺たちは互いに動き出した。


 俺とフルルは、まずは襲ってくるアンデッドへの対応を強いられる。

 一方、アンリアルのほうは盾兵の仲間と共にジェマちゃんの背に飛び乗り、案外に素早い動きで巨大亀はこちらへと走り出した。


「おいおい、接近してくんのかよ……!」


 てっきり遠距離攻撃に専念してくるのかと思えば、まさかの突撃だ。

 とはいえあのサイズでぶつかってこられるのはシャレにならない。ツルを使って距離を取ると、そこを狙って的確に放たれる闇の弾幕が俺たちの動きを大きく牽制する。


「いい戦い方しやがるな、アンリアル……」

「ボクがアンリアルさんを暗殺しにいくってのはどうですか?」

「主人から狙うってことか。たしかに選択肢としてはかなりアリだけど──」


 ──それを対策していないアンリアルとも思えない、と俺が口に出そうとしたそのとき、フルルがぎゅんっと後ろを振り向いた。


 後ろに誰かがいる。

 メンデルを使って跳び上がったこの空中に、生身でついてきたヤツがいる。


 背後の影は両手に握った刀を振りかぶり──それをフルルのナイフが甲高い音を立てて弾いた。


 その姿が、俺にも遅れてようやく見えた。

 片手に日本刀、顔面から足元まで全身黒尽くめに布を巻き付けたような男だった。


 ナイフに弾かれたそのままの勢いで古城の壁へと着地したその男は、そのまま壁に足をつけて()()する。


「ほう、拙者が見えるでござるか。さすがは殺人姫、相手にとって不足なしでござる」

「……! トビくん、一人称と語尾がヘンです!」


 一人称がヘンなのはお前もだよ。

 さて、こっちはロールプレイ勢か。この前のコウモリ男よりは厄介そうだな。


 まあ、それはそれとして──


「悪いフルル、ちょっと負担かけるかも。そいつの相手頼んでいいか?」

「イイですけど……なんですか? そんなに苦手な相手でした?」

「いや、そっちの忍者が苦手とかではなくて。なんと言ったらいいのか……アンリアルとの対面に集中したいって意味」


 おそらく、今回のアンリアルとの勝負──

 俺にとっては、かなり相性が悪く、キツい相手になるはずだ。




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