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天国の扉  作者: 藤井 紫
第五章 呪われた兄弟
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65.炎と刃の革命

 【王の間】を燃やす為、ハリーファの放った火は大きく燃え広がった。

 戦場を走り抜け、ハリーファはシナーンとソルを探し中庭へ向かう。

 燃え落ちる宮廷を背に、剣を手にしたシナーンがそこに立っていた。

「……ハリーファ、お前が革命の首謀者か? 【王】と【宰相】は共犯者だと言うのに、裏切ったな」

 ハリーファは息を整え、シナーンの前に立つ。

(ユースフ)は、(アーディン)に裏切られたんだと思っていた。だが、違った」

 シナーンの表情が微かに揺れる。

「何を言っている」

「この国が衰退したのは、俺たちのせいだ。そして、お前が【王】を閉じ込めたせいで、呪いは解けなかった」

 シナーンは冷たく笑う。

「呪いを終わらせる? どうやって?」

「俺を生きたまま皇宮から出すだけだ」

【王】(お前)の役割を放棄するというのか?」

「聖地を見たなら気付いたんじゃないのか! ファールークが衰退していることに!」

 シナーンは剣を構えながら、ゆっくりと言った。

「【王の間】を燃やし、次は私を討つつもりか?」

 ハリーファの瞳が鋭く光る。

【宰相】(お前)が生きている限り、【王】を閉じ込め続けるだろう。それではファールークの呪いは終わらない。本当に聖地の復興を目指すなら、こうするしかない」

 シナーンはわずかに目を細めた。

「そなた、次は王族に生まれることはないぞ。しかし、すぐに見つけてやる」

 ハリーファの拳がわずかに震える。

「……」

 シナーンは嘲笑し、剣を構えた。

「剣も持たずに、どうやって戦うのだ?」

 その瞬間――シナーンの首筋に、冷たい刃が押し当てられた。

 影のように忍び寄る男の手に、鮮やかな刃が輝く。

「……!?」

 シナーンの体が硬直する。

 いつの間にか、ソルがシナーンの背後に立っていた。

「オレがハリーファの剣だ」

 ソルはゆっくりとシナーンの首元へナイフを押し当てた。

 周囲のシナーン派の兵士たちが驚き、剣を構えるがソルが声を張る。

「シナーンと共に死ぬか、それとも寝返るか、選べ!」

 シナーン派の兵士たちがざわめく。

「……シナーン殿が……」

「反乱軍はすでに宮廷の要所を押さえている……」

「もはや勝ち目はない……!」

 一人、また一人と、シナーン派の兵士が剣を捨てていく。

 ハリーファは何も言わずその様子を見守っていた。

 ソルは片方だけの目を細めた。シナーンの耳元で囁く。

「ファールークの呪いを終わらせるには、あんたら兄弟は生かしておけねぇんだよ」

 シナーンは歯を食いしばり、低く呻いた。

「私は殺せても【王】は甦るぞ! 【王】が居る限りファールークは――」

 シナーンが言い終わらない間に、ソルはシナーンに告げる。

「死ぬ前に教えてやるよ。あんたの弟は、あんたを裏切ってなんかないぜ。この革命の首謀者は、ハリーファ皇子じゃねぇ」

「……何?」

「メンフィスの、ラシードだ」

「……貴様……!」

 その瞬間、鋭い刃がシナーンの喉を裂いた。

 鮮血が舞う。

 シナーンはよろめき、喉から血を流しながら膝をつく。

(……ファールークは……終わるのか……)

 言葉にすることも出来ず、シナーンは地に崩れ落ちた。

 ハリーファは目を逸らさなかった。

「今が来世(アーヒラ)だ、シナーン」

 シナーンの死を見た兵士たちは次々に剣を捨てる。

「シナーン殿が……!」

「反乱軍の勝ちだ……!」

 宮廷の門が開き、ラシードの旗がはためく。

 ファールーク皇国の革命が、ついに完遂された。

 ハリーファはゆっくりとソルに向き直る。

「……いつからお前が、俺の剣なんだ?」

 ソルはナイフを拭いながら、肩をすくめる。

「言っただろ? あんたの立場を利用させてもらうって。それに、お前に剣を持たせると、悩むだろ」

 ハリーファは何かを言おうとしたが、言葉が出てこなかった。

 ソルはニヤリと笑う。

「アーランも、ジェードを利用してるかもしれないぜ?」




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