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8. エピソード7 学校生活

 九月になってカトリーヌとセレーナ、クリスティーヌは国立アカデミー附属初等部に入学した。三人ともクラスは同じクラスになった。国立アカデミー附属初等部は貴族、平民関係なく入学試験に合格すれば入学できるシステムになっている。クラス分けも貴族、平民関係なく、入学試験の結果で分けられている。カトリーヌたちのクラスは学年トップのクラスで生徒数は二十人であった。

「カトリーヌ皇女殿下、初めまして。ご挨拶申し上げます」

この挨拶が十七回繰り返された。カトリーヌも最初は笑顔で答えていたが、最後のころは少し疲れた表情になってしまった。教師は立場柄、カトリーヌに改まった挨拶はしなかったが、一礼を深々とした。最初の授業なので簡単な話から始まったので、カトリーヌたちはそんなものかと話を聞いていたが、周りの反応を見るとちょっと難しそうな顔をしている子供たちの方が多いように見られた。二時限目、三時限目、四時限目と同じような感じで過ぎていった。昼食は国が無料で提供していて、貴族と平民が同じ食堂で食事を摂る。昼休みが終わってから五時限目と六時限目が行われ、ホームルームが開かれ終了後解散となった。

 学校の正門には馬車の列が出来てしまうので、カトリーヌたちは裏門から戦闘訓練を受けたメイドを伴って馬車を待たせているところまで歩いて行った。

「今日の授業どう思った?」

そう、カトリーヌがそう二人に問うと、

「あんまり初歩過ぎてつまらないですわね」

セレーナはそう応え、

「居眠りしそうなのを我慢するのは大変でした」

クリスティーヌはそう応えた。

 そうして週終わりの金曜日に各教科の小テストがあった。三人にとってはあまりにも簡単であっという間に解き終えたが、周りの子供たちには難しかったようでなかなか解けていない様子だった。

 週が明け月曜日にテストの答案用紙が返ってきた。三人の結果はもちろん満点だったが、三人を除いた結果はどの教科も平均五十点といったところで、週明けの授業は更に初歩的なものとなり、三人には更につまらないものとなった。三人は皇族や高位貴族の令嬢ということもあり、周りの子供たちは一歩引いたところからしか接してこないので友達もできない。なので、授業がつまらないだけではなく、友達も出来ないといった二重苦になっていた。

 そういうこともあり、入学から一ヶ月経った日、三人はそろって二年生のトップクラスに編入になった。それでも授業は簡単だし、子供たちは挨拶しかしてくれない。そして金曜日の小テストでは三人は簡単に解けてしまう。なのに、周りの子供たちには難しいようで、時間を掛けて解いていた。週明けの答案用紙の返却では、三人は満点で三人を除く子供たちの平均点は六十点くらいだった。結局ここでも授業は簡単なままで過ぎて一ヶ月経った頃、三人は三年生のトップクラスに編入になった。結局三年生も一ヶ月で終え、カトリーヌたちは四年生のトップクラス、つまり第一皇子であるライオネルと同級生となった。ライオネルはこのことに対して、強い反発を覚えた。四年生になった初めての小テストでカトリーヌたちは今まで通り満点を余裕で取った。しかし、カトリーヌの兄であるライオネルは平均八十点くらいであった。このことに対し、ライオネルは余計に反発を覚えるのであったが、実力勝負であったので素直に認めざるを得なかった。ライオネルの名誉のために述べるとカトリーヌたち三人を除けばトップの成績である。

 結局一ヶ月で四年生を終え五年生になり、さらに一ヶ月で六年生になり、ロゼリアと同級生になった。ロゼリアはこのことを歓迎していた。むしろなぜアカデミーに飛び級させなかったのか、父親である皇帝の発言に関して不満を持つほどであった。ロゼリアが三人を歓迎したこともあり、ロゼリアの友人たちも興味を示し話しかけてきた。毎月あったように、金曜日の小テストは時間に余裕をもって終え、月曜日の答案用紙の返却では満点だった。ロゼリアも満点を取っていたが、三人の回答時間に比べれば時間がかかっての満点だった。このことに対してロゼリアはもう当たり前のこと思っていた。自分の命を助けた三人なのだから。結局カトリーヌら三人は六年生も一ヶ月で終え、アカデミー附属初等部を半年で卒業することになった。

 アカデミー附属中等部、アカデミー附属高等部も同様の傾向で、むしろカトリーヌらの質問に対して教師らが回答できないことも多々あった。そのようなこともあり、中等部を三ヶ月で、高等部は二ヶ月半で卒業となった。アカデミー入学となる九月までは夏休みである。アカデミーには理学部がなかったためカトリーヌはクリスティーヌと一緒に薬草学部へ、セレーナは医術学部へ入学することになっている。

 皇帝はこの結果に対し、アカデミー附属初等部に入学させなくてもこうなる結果は目に見えていた。ただライオネルとカトリーヌの仲が拗れないか。次の皇帝にライオネルをではなくカトリーヌをという声が上がるのを懸念したからでもあった。しかし、カトリーヌら三人の頭脳は皇帝の予想のはるか上であったということだ。

 

 カトリーヌら三人はアカデミー入学までの間、魔鉱石を用いた血液検査の装置を開発するため日夜頑張っていた。そうして三週間ほど経った頃異変が起きた。三人とも夏バテを起こしたのである。ただでさえ幼く体力がないのに頭脳だけで今まで乗り切ってきたため、体力の限界を知らなかったのである。そのため三人は一週間の静養となった。ただ装置の製作は八割方済んでいたので、それほど気を揉むわけでもなく大人しく主治医の言う通り静養した。静養後三人は装置の開発を進めるとともに体力づくりにも精を出した。それも剣術の稽古である。三人は転生前の日本で中学、高校時代に同じ学校で同じ剣道部であった。それで体力づくりをしようと決めたときに真っ先に浮かんだのは剣道であった。ただ、竹刀などはこの世界にないので、木剣を振ることにした。そうしてアカデミー入学前に血液検査の装置の開発を成功させたのである。この装置はセレーナがアカデミー医術部で血液検査の研究に使用するための附属病院に納入された。入学前ではあったが、セレーナは血液検査装置の調整のためアカデミーに通っていた。採血の初めの犠牲者はセレーナ付きのメイドであった。採血用の針はこの世界では一番細いものを採用したが、現代日本のそれと比べれば太く、刺されば痛いものである。メイドは痛みに堪えながら採血された。血液検査の結果、異常値は見られなかった。若い健康な人の血液検査なのだから当然といえば当然の結果であろう。こうして、カトリーヌとクリスティーヌの血液検査も行われた。共に異常なし。最後にセレーナと行きたいところであったが、セレーナのように採血を行える者がいなかったため、血液検査は見送られた。

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