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6.ドワーフ世界の崩壊

ドワーフの鍛冶師のおっさん視点

 わしは鍛冶場で炉に向かって汗を流していた。

 わしは自慢じゃないが、ドワーフの中でも名の知れた鍛冶師であり、長年にわたって腕を磨いてきた。その力強い腕と短いが屈強な体つきは、数々の武具や防具を生み出してきた証だった。


 わしの工房は、山々に囲まれたドワーフの大都市の地下深くにあり、周囲には数多くの鍛冶場や工房が連なっていた。山々の地下には豊富な鉱脈が広がり、ドワーフたちはその鉱石を掘り出し、日々の糧としていた。

 わしらの都市は地下で築かれ、岩と鉄で作られた巨大な要塞のようなものだった。


 ある日、わしはいつものように鉄を叩いていたが、何かがおかしいと感じた。炉の炎が不自然に揺れ、熱が弱まっているように思えた。


「どうしたんじゃ…?今日は火が妙に冷たい…」


 わしは炉の前に立ち尽くし、周囲を見渡した。地下深くにいるはずの工房に、外の風が入ってくることはあり得ない。だが、風だけではなかった。空気全体が重く、何か異常が迫っているような感覚があった。


「これは…一体…?」


 わしは不安を覚え、外に出てみた。地下都市全体が、異様な静けさに包まれていた。普段は鍛冶場の音や、坑道から聞こえるドワーフたちの作業の音が鳴り響いているはずだが、この日はまるで世界が息をひそめているかのようだった。


「何か悪い予感がしねぇか?」


 若いドワーフが震える声で尋ねてくる。わしも同じ不安を感じていた。


「確かに、何かが起こっとる。こんなことは、わしの生涯で一度もなかった…」


 その時、突然、周りが暗くなっていった。わしが上を見上げると、地下のはずの都市の頭上に、異様な黒い霧が広がっていた。その霧はゆっくりと都市全体を覆い、どんどん濃くなっていく。


「これは…何じゃ…?」


 わしは驚きと恐怖に包まれた。霧が触れるもの全てが、徐々に腐敗していくように見えた。

 霧が触れた瞬間、金属がまるで長年放置されたかのように急速に錆び付き、石はひび割れ、砂のように崩れていった。

 その腐敗の速さに、わしはただ立ち尽くすしかなかった。全てがこの霧に飲み込まれ、無残にも壊れていく。


「逃げろ!このままじゃ飲み込まれちまう!」


 周囲のドワーフたちはパニックに陥り、逃げ場を求めて駆け回り始めたが、霧はどこまでも追いかけ続けてきた。

 霧は静かに、だが確実に広がり、まるで生き物が獲物を狙うかのように都市全体を覆い尽くしていった。その動きは不気味で、逃れられない運命を告げるかのようだった。

 工房が、坑道が、鍛冶場が次々とその黒い霧に飲み込まれ、長きにわたって築き上げてきた全てが、一瞬で崩れ去っていく。


「邪神でも掘り起こしたんか?」


 わしは呆然と崩れゆく都市を見つめたが、霧はついにわしの足元にも迫ってきた。わしの工房も、すぐにその腐敗する霧に飲み込まれ、瓦礫と化していく。

 わしがこの手で作り上げてきた数々の武具や防具、その全てが消え去っていくのを見て、胸が締め付けられるような思いだった。鍛冶師として誇りを持ち続けてきたが、その全てが今、崩れ去ろうとしている。

 この喪失感は、何に例えようもない。


「こんなことが…どうして…」


 その時、わしの頭上に突然強烈な光が現れた。地下のはずの都市が、まるで天井が割れたかのように光に包まれ、その光は全てを覆い尽くした。黒い霧は光とぶつかり合い、激しく渦巻きながら消えていく。そして、わしらの都市は光に飲み込まれた。


 次の瞬間、わしは目を覚ました。気がつくと、柔らかな大地の上に立っていた。

 周囲を見渡すと、広がっているのは草原であり、かつての岩と鉄の世界とは全く異なる場所だった。わしの周りには同じように呆然と立ち尽くす仲間たちがいた。


 わしらが困惑していると、目の前に青い炎を纏った鉱石のようなものが現れた。それは、わしらを静かに取り囲むように漂い、その輝きは柔らかく、また神秘的だった。

 炎の動きはまるで意思を持っているかのようで、わしはその場に立ち尽くしていた。目の前に広がるその光景に、仲間たちも同様に言葉を失っていた。


「何だぁ…こりゃぁ?」


 誰かがつぶやいたが、青い炎はまるで言葉を理解しているかのように、少しだけ揺らめいた。突然、炎の中から静かで落ち着いた声が響いてきた。


「ようこそ、我々の世界へ」


 わしは驚きと戸惑いを隠せなかった。声がどこから発せられているのか、見当もつかない。ただ、その声には不思議な力があり、わしら全員の心を落ち着かせた。


「おぬしが…わしらに何をしようというんじゃ?」


 わしの声には少しの怒りと恐れが混じっていた。

 長年守り続けた住処が崩壊し、すべてを失ったわしにとって、この青い炎が何者なのか、そして何をもたらすのかは計り知れなかった。

 青い炎は再び揺らめきながら、静かに答えた。


「あなた達は、私たちが救済した者たちです。悪しき者によって元いた世界は破壊されてしまった。しかし、あなた達の世界を管理する神の願いにより、私たちが新しい世界で再び生きる機会を与えた。これからの生活はあなた達次第だ。ここで好きに生きるがいい」


「新しい世界…?」


 わしはその言葉に困惑を覚えた。

 長い年月をかけて築き上げたものがすべて失われた今、新たな世界での生活など考えられなかった。しかし、その声には不思議な安心感があり、わしの心を少しずつほぐしていった。


「新しい世界では全てが新しく始まります。あなた達が持っていた物や、知っていたものはもう存在しません。でも、あなた達には新たな可能性が与えられました。私たちはあなた達を見守り、時には助けを与えるかもしれません。しかし、最終的にはあなた達自身がこの世界をどう生きるか決めていいのです。鍛冶師としての技術を活かして新たな文明を築くこともできます」


 その後も青い炎はわしらの疑問に答えていく。


「私たちは必要な時に助けを与えるかもしれませんが、すべてはあなた達自身の努力次第です。新しい世界を築く力は、あなた達の中にあります」


 青い炎から発せられる声には、確信と信頼が込められていた。

 そうして一瞬の光ったかと思うと青い炎は消え去っていた。

 わしはしばらく沈黙したが、やがて仲間たちを見渡し、決意を固めた。


「わしらは何度でも立ち上がる。ドワーフは、どんな困難にも負けはせん。この新しい世界でも、また何でも作ってやらぁ」


 周りのドワーフたちは、不安そうな表情を浮かべながらも、わしの言葉に力強く頷いた。わしらの眼には、新しい世界で再び誇りを取り戻そうという決意が宿っていた。

 わしらは一つの家族のようなものだ。共に生き延び、共に新たな都市を築き上げていくのだ。

 こうして、わしらは新たな世界で再び都市を築き上げるため山を目指した。

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