3.まずは破壊から
「じゃあ、始める前にこいつらの世界を壊しに行くか!」
そう言った俺に、エリンとアスカは一瞬、何を考えているかわからないという顔をした。それも無理はない。俺の言う「壊す」という言葉が、彼らにとってどんな意味を持つのか、少し掴みかねているのだろう。
「何のために元の世界を壊すんだ?壊したら連れてこれないじゃないか」
とアスカが、少し冷静な口調で聞いてきた。
「連れてくる奴らは、みんな違う世界で生活してる奴らなんだぜ?放置されて止まってる世界とはいえ、そこにいるやつらは何の疑問もなく生活してるんだ。
日々の日常がいきなりなくなって、何もない自然しかないところに連れてこられるとどうなるか。パニックになってる奴らを眺めて観察するのも楽しそうだが、悲嘆にくれて急激に数を減らすだけじゃ面白くないだろ?」
俺はそう言いながら肩をすくめて、ちょっと楽しげな顔をした。アスカは少し眉を上げたが、俺は話を続ける。
「だから、こいつらの世界をぶっ壊して、救済という形で新しい場所に連れてくるんだよ。『あなたたちの世界は崩壊してしまいました。でも心を痛めた俺たち神様が、自分の世界にあなたたちをご招待するよ』って感じでさ。
そして、そいつらにはこう言うんだ。『あなたたちは救われたのだから、これからは生きなければならない』ってね」
俺は口角を上げ、少し得意げに付け加えた。
「そして神として敬ってもらうのかい?やれやれ、ひどいマッチポンプだね」
アスカは、半ば呆れたような笑みを浮かべて言った。
エリンも不安そうな顔をして口を開いた。
「私たちの存在を明かすの?それじゃ、新たな世界を創造した唯一神になっちゃわない?私たちの存在が神話として残って、思想が統一化されるのを避けたのだけど…」
「いやいや、俺たち以外の神が存在するかのようにやればいいんだよ。どうせ数百年も進めれば、奴らは勝手に自分たちに便利な神を創り出すさ。そこに俺たちが介入しなければ、姿を見せる俺たちでさえ、勝手に都合のいい形に変えられていくさ」
俺は軽く笑って返した。エリンはそれでも不安げな表情をしていたが、最終的には納得したように小さく頷いた。
話も落ち着き、俺たちはついに世界を壊しに行くことにした。
「壊すんだし、どこまでできるかいろいろ試してみようぜ。どんなことが出来るかなっと」
俺はそう言いながら、意気揚々と手を動かし始めた。
エリンとアスカもそれぞれの役割を考え、少しずつ世界に手を加えていく。
壊すという行為に対しては慎重なエリンも、いざ始めてしまうと次第に集中していった。