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1.『暇』に抗う人

 文明が発展しきった未来。

 人類は永遠の時間を、万能の力を手に入れた。

 その結果、『暇』という病によって死ぬこととなったが。


 俺、無坂 直人(ムサカ ナオト)は『暇』に殺されないように日々何かを探している。

 映画も見ているし、本も読んでいる。行けるとこへの旅行にも行った。

 イラストも描いてみたし、音楽もやってみた。よくわからんこともやってみた。

 楽をしたがる俺には何事にもすぐ飽きてしまう。過程をすっ飛ばして結果を得るのは楽しめないものだ。でもやってしまう。何でも手に入るのだから。

 そして、前回やっていたことがひと段落し暇になった。

 暇潰しができるものを探すためアーカイブを漁っていたところ、昔流行っていたゲームを見つけた。

 俺は今そいつを弄っている。


「おはよう、直人」


 と爽やかな声が聞こえた。

 声のした方に目線を上げると俺に向かって軽く手を挙げたイケメンと、美少女がいた。

 声をかけてきた金髪イケメンはアスカ。チャームポイントは右の泣きぼくろで、本人は気に入ってるらしい。

 その隣にはエリン。どこぞのアイドルか女優かというくらい容姿の整った茶髪の女性だ。


 今や生まれてくる奴は遺伝子操作で髪の色から足の指の形まで自由自在だ。

 そのおかげでここは美男美女であふれている。一部例外を除き。

 一時期、黄金比を求めるあまり同じような美男美女が世界にあふれた。

 そうなってくると個性をつけるため、または繋がりを確認するために家族や仲間で共通する特徴をつけたりするようになった。

 アスカの泣きぼくろはそれだ。アスカの親族はみんな右に泣きぼくろがあるらしい。

 エリンにもそういったものがあるらしいのだが、なぜか教えてくれなかった。きっと背中とかに星形の痣とかついてんだろな。

 ほくろや髪の色はまだ軽いほうで、目が4つあるやつを見たときはビビった。

 初めて猫耳の女の子を見たときはちょっと感動してじろじろ見すぎてエリンに注意されたりもした。


 そして俺はイケメンという部類ではない。

 不細工でもない。多分。

 俺が生まれついてのイケメンでないのはそう特徴付けて作られたわけではなく、外見に関して遺伝子操作を受けていないからだ。

 外見を変えることは簡単にできるが、今のところ変える気はない。

 それなりに愛着がある。

 いや、ちょっとだけ筋肉質にしようかな…。



 万能の力を手に入れ、不老不死になる!といってもそうはなりたくない人々がいる。


 生物は日々成長のために努力し、次の世代に命をつないでいく。


 古来よりの生物としての生き方を重要視する奴らがいる。

 そういった生活をする奴はナチュラルと呼ばれている。

 逆に、進化を受け入れた奴はネクストって呼ばれてる。

 この地球にはところどころにナチュラルの領域がある。

 ネクストとはあまり交流はしていない。共存させてもいいことはないからだ。昔存在した国と国境みたいなものだ。

 俺はナチュラルとして生まれた。まあ、普通の家庭って呼ばれるやつに。

 さして不自由することもないが、日々生きることに追われる生活。

 小さかった俺はバカでお気楽なガキだったけど、毎日必ずと言っていいほど不幸なニュースが流れてて、よくわからない未来に不安を感じることもあった。

 そんな思春期真っ最中だった俺は、学校でネクストという超越した存在を知り、憧れた。


 両親はネクストなど生物の範疇から外れてしまっている。

 人間というものは日々成長のため努力し、愛するものと貴重な時を過ごし、子を産み育て、愛する者に囲まれ満足して死ぬものだ。

 とかなんとか言っていた。あほらしと思って聞いていた。永遠に楽して好きなことをだけやって生きていけるなら、そっちの方が断然いいじゃないかと。

 楽しいこともそれなりにあったが、家族のように世間や、会社の愚痴を言いながら生きるために努力したり苦労するとか意味が分からなかった。

 ナチュラルにとって時間は有限なのに。

 そんな苦労をせずに欲しい知識、技術があればデータを頭に直接入れたり、体を作り変えたりして気楽に生きたほうがいいじゃないか。


 俺のいた地域では成人した15歳の時、ナチュラルとして生きるか、ネクストとなり生きるか選ぶことができた。ここを逃せば大金を積んでネクストになるかだ。

 最初はそんな気配もなかったのに、地位や財産を手に入れた奴は大体ネクストになった。権力者や金持ちは不老不死を求めるのだ。

 当然、俺は15歳でネクストになることを選んだ。家族からは猛反発されたけど。

 住んでいた地域はナチュラルとネクストに関して公平的な場所だったため、成人した俺の意思一つでネクストになれた。

 しかし、ナチュラルの思想が強い地域だとネクストは害悪と教えられ、ネクストになる選択権すらないようだ。そんなとこに生まれなくてつくづくよかったと思う。


 俺はネクストになった。これで他人を傷つけない限り、何だってできる。

 だけど、万能力を手に入れた瞬間から、俺は『暇』という病と付き合うことになった。

 ふたりとは、ネクストになったらやることリストの消化中に知り合い友達になった。



「直人。何か暇つぶしの道具を見つけたのかい?」


 アスカが俺の画面をちらっと覗き込みながら尋ねてくる。


「まあ、そうだな。今回は神にでもなろうかな」


 俺はちょっと大げさに言ってみた。


「神ね。新しい宗教でも立ち上げるつもり? ここじゃ信者なんてまず見つからないけど、一人でやるならご自由に。私たちは巻き込まないでね」


 エリンは冷めた瞳でこっちを見てくる。バカは理解できないといった感じだ。


「いやいや、宗教なんて面倒なことはしないよ。

 最近誰もやってなさそうな古いゲームを見つけたんだ。

 今朝、アーカイブを漁ってたら、世界を自由に作って弄って観察するゲームがあってさ」


 俺はふたりにゲームが表示された画面を見せる。


「世界を作って観察って…それって本当に面白いのかい?自分の好きな設定の映画とか物語を作っちゃえばいいんじゃないか?」


 アスカは興味なさげに言ってくる。


「いや、もうそういうのには飽きたんだよ。設定を考えるのも正直面倒だしさ。

 これは小さい時にやったアリの巣観察みたいなもんさ。働くアリをみて巣に水を流したり、ちょっと意地悪して踏みつぶしたりする感じさ。

 今回はそのアリたちの巣の中までしっかり観察できるんだ。何を考えてるのか、どんな感情を持ってるのかまでね」

「僕は生まれてから一度もアリの巣にそんなことをしたことはないけどね」

「私もそういった悪趣味なことはしたことないわね」

「悪趣味ねぇ。ちょっと前まで人を剣で切ったり、弓矢でぶち抜いたりして喜んでたのにな」


 澄ました顔のふたりを見ながら俺は言ってやった。


 少し前までネクストではあるゲームが流行っていた。

 仮想空間で殺し合いをするのだ。

 そこは法律は存在せず、何をやってもいい空間。死んでも即復活。

 王道プレイも邪道プレイも何でもあり。

 フルダイブゲームは、基本は感覚、痛覚など軽減して遊ぶものなのだが、そのゲームは痛覚も遮断せず、平静を保つために使われている感情抑制システムも使わずプレイする。

 人を害することをほとんどしないネクストには刺激があって楽かったようだ。

 たとえ自分が残酷な目にあったとしても…。

 定期的にこういったゲームが流行るらしい。

 ゲームとはいえかなり残酷な目にあった被害者がゲーム終了後、加害者と和やかに会話し、一緒にご飯を食べに行っている光景を目にしたことがあった。

 それを見て俺はネクストは人からは逸脱した存在なんだなと感じたものだ。

 そしていざ自分がその立場になった時、俺に危害を加えてきたやつに対して何も思わなかった。ネクストではなくナチュラルのままだったなら殴るだけでは済まなかっただろう事をされたのに。

 拷問されたり、頭が物理的に吹っ飛ぶ経験は一度すれば十分だと思う。

 今、世間では知識、技術を全く入れずにやる絵画や作曲といった芸術的なものが流行っているらしい。極端すぎるだろ。


「やったことないなら一緒に試してみようぜ。適当にいじって、どういった行動をするか観察するんだ。たまに神として介入しつつね。楽しいかは知らんけどな」

「直人が介入したらあなたの望む世界になるだけじゃない」

「ああ、だからふたりも好きに介入しろよ。俺の思うとおりにならないようにな。どうする?やらないか?」


 俺は二人に問いかけた。


 アスカとエリンは互いに目を合わせ


「前の暇潰しよりかはまともだね」


 とアスカが答えた。


「じゃあ、神になろうぜ。俺たちの世界を創ろうぜ」


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