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絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて月夜に騒ぎを起こす
53/55

憐れなる施設警備員

「ふっふっふ、いよいよ私の出番ね!」

 ()(おん)(だっ)(かん)成功を告げる(つう)(しん)から三十分後、にわかに(けい)()員の動きが(あわ)ただしくなったのを見て取った(ふう)()は、にんまりと笑った。

 ()(おん)を追っていた一団から、三分の二ほどが、()(せつ)(ない)に引き返そうとしている。その視線の先に飛び出した(ふう)()は、(けい)()員など眼中にないかのように、大輪の花が()いたかのような満面の()(がお)で、()(おん)(りょう)(うで)()ばし、飛びついた。

「お兄さま!」

 気分は名女優である。()きつかれた()(おん)の表情が、(せい)(だい)に引きつっていることについては、気にしてはいけないのだ。

 (ふう)()の演技に内心で(とり)(はだ)を立てつつも、()(おん)(ふう)()(かか)()げ、再度夜空に飛び立つ。(さき)(ほど)までであれば、(けい)()員に追われて()(せつ)に入りあぐねる()()をしていれば良かったが、今からは、(けい)()員を()かず(はな)れずの(きょ)()で引き回さないといけない。()(おん)が無事に()(おお)せるまでは(ふう)()と共に()げあぐね、(けい)()員を()(おん)から遠ざけるのが、()(おん)の今の役割だ。

 (さいわ)いにも、(ふう)()(かか)えているため、飛行速度を落としても、(けい)()員に()(しん)には思われにくいだろう。先だっての()(かい)(ぞう)のおかげで、人間を一人(かか)えたくらいでは飛行に全く(えい)(きょう)はないのだが、組織側にそれを知る(すべ)はない、はずだ。(こう)(ざき)(あま)()博士()き状態で()(おん)(いま)だに健在なことすら、(おそ)らくは予想外。数少ない(から)(くり)()の安定サンプルとして()(かく)しようとしているのが、(つう)(しん)から(つつ)()けだった。

 まさか(あま)()が自らを(から)(くり)()に改造して存在しており、(さら)にハッキング特化の()(のん)までいるとは、思いも寄らないだろう。加えて(りゅう)(じん)(けい)()(がい)(しゃ)(ふう)()の存在など、逆立ちしたとしても(おも)()かべられまい。

 (うで)の中に(しん)(どう)を感じ、()(おん)(ふう)()()(うで)に力を()めた。

「寒くはないか?」

 ()(おん)の服装に似せた都合で、(ふう)()(うす)()だ。()(すが)に今の(じょう)(きょう)では、()(おん)の服を(ふう)()に分けるという()()はできそうにない。

「少し、寒いわ。でもね」

 (ふう)()()(おん)(かた)に顔を()せる。

「それ以上に、アイツ()の顔が(おも)(しろ)くて」

 要するに、笑いを(こら)えているのだと知り、()(おん)(あき)(かえ)った。

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