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絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて明らかになる
33/55

機械の躰

 それは、一見傷の治った、(なめ)らかな()()。内出血の(あと)すらも無く。

 けれどそれを(いち)(べつ)した()(てん)使()は、ますます悲痛な顔をして、()(のん)(こん)(がん)する。

(たの)むから、やめてくれ。()(のん)まで暴走したら、(だれ)(あま)()にぃを止められないし、(だれ)()(おん)に届かない」

(いや)ですっ!」

 ()(のん)は傷を(おお)っている(じん)(こう)()()()いだ。一時的に痛覚を伝える回路を(しゃ)(だん)することもできるし、そもそも断線済みだったりする(えい)(きょう)で、()(のん)自身に痛みはない。

 あまりに痛そうな光景に一様に顔を(ゆが)めた人間たちは、次の(しゅん)(かん)()()の下に()もれる(こわ)れた機械を認めて絶句した。

 (せい)(こう)()()? いや、それならば(しつ)(よう)(かく)す意味などない(はず)で。

 ちぎれたコードの束を(にぎ)った()(のん)が、それを(あみ)()しつける。火花が散り始め、(あみ)()げる(にお)いが()(こう)に届く。

「近付いたら、(いつ)(しょ)に焼いて差し上げますとも。いっそ、(もろ)(とも)()(ばく)しても良い」

 文句を言いかけた(ふう)()が、()(のん)(おど)しに口を閉ざした。(かの)(じょ)(こわ)()には、本気の(ひび)きしかなかった。

「お前、そんな痛そうなことをしなくても!」

 我に返った耀(かぐ)()()(のん)()()った。コードを(にぎ)りしめる()(のん)()きしめ、その(うで)に手を()えると、(かの)(じょ)が思った以上に熱いことに気付いた。

 耀(かぐ)()()(あお)いで、()(のん)は泣きそうな表情になった。

()(おん)兄さんだけなんです。()てられてた私を拾ってくれて、処分されたときも、(あま)()兄さんに()()ってくれて。()(おん)兄さんに何かあったら、私、」

 何かが()ぜる音がして、()(のん)(ひとみ)から光が消える。一部焼き切れた(あみ)の中で、()(おん)兄さんと(しょう)された少年が(たん)(そく)した。

「だからといって、ここまですることはない」

 コードから出ていた火花は消え、()(のん)はピクリとも動かない。

「お前、リオン、というのか? (はっ)()……じゃなかった、カノンは」

 (うで)の中で急速に熱を失い、冷たくなっていく少女を案ずる様子の耀(かぐ)()に、()(おん)(しん)(だい)を示した。

「どこかで回路をショートさせたか、バッテリーの圧が上がりすぎて強制シャットダウンしたかだと思う。修理できないわけじゃないから、(いっ)(たん)どこかに、()かせてくれないだろうか」

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