表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて明らかになる
32/55

罠の中

 (せい)()(もど)ってこないからと、耀(かぐ)()(しょ)(さい)では、アンジェの開く雑貨店の話に花が()いていた。(せい)()()ければ、その場にいるのは女性のみ。()たり(さわ)りのない内容ともなれば、話題は(おの)ずと限られてくる。

 そのうち、(はっ)()がどことなくそわそわとし始めた。()(おん)から、もう少しで(とう)(ちゃく)するという(つう)(しん)を受けたためだが、今は耀(かぐ)()(しょ)(さい)にいるために、()(むか)えることができない。

 それからまもなく。

 さっと顔色を変えた(はっ)()が、(くちびる)(おの)()かせる。そのまま、耀(かぐ)()の疑問の声や、()()()の制止を()()って、(しょ)(さい)を飛び出した。

 長時間満足に歩けないはずの(はっ)()が、全力(しっ)(そう)して()()んだ先は、(かの)(じょ)(あた)えられていた客間。(あわ)てて後に続いた女性二人が部屋を(のぞ)くと、そこには予想以上の人間が集まっていた。

 大きな(あみ)()らえられた()(てん)使()、満面の()(がお)(ふう)()()(ろた)えている(せい)()

「これだから、人間は!」

 悲鳴に乗せて(さけ)ぶ少女に、(つばさ)持つ少年が強い視線を送る。

「来るなと言っただろう!」

「だからっ、人間なんて、関わったってロクな事にならないって! そこの女は、どんなに(そと)(ずら)だけ似てても、()(おん)じゃないっ」

 自分のことを言われたと(さと)った(ふう)()が真顔になった。(あみ)()らえられた(しゅん)(かん)(てい)(こう)しようとした()(てん)使()(ふう)()の姿を認めた(しゅん)(かん)、大人しくなったのには、何か理由があってのことだと今の会話が示していたからだ。

 (わな)の中の()(てん)使()(すが)()いた(はっ)()は、何を思ったのか、()()に巻いていた包帯を(ほど)きだした。

 そういえば、と耀(かぐ)()は思う。(はっ)()の傷は、(かの)(じょ)自身が()(りょう)機関への(じゅ)(しん)(こば)み続けていたこともあって、応急手当のみの状態だった。だが、それだけにしても、不自然な点があったのだ。いつまでも、いつまでも同じように手当を続けている。それはまるで、傷が自然には治らないものであるかのような。

「馬鹿っ、よせ()(のん)!」

 カノン、と呼んだ()(てん)使()に、呼ばれた少女は(はかな)()(がお)を見せる。

 包帯の下から現れた傷に、(だれ)もが息を()んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ