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絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて明らかになる
31/55

風薫の執念

 (はっ)()()まっていた部屋は()(れい)に片付けられており、生活感に(とぼ)しかった。

「本当にここに()めていたんでしょうね」

(いま)(さら)(うそ)()いてどうするっすか。疑うんなら、クローゼット見てくださいよ。服、入ってるっすよ」

 後ろ手に(しば)られている(せい)()が完全にふてくされた顔でぼやくのを横目に、(ふう)()はクローゼットの中身を(あらた)め、(とし)(ごろ)の少女向けの服が大半を()めていることを(かく)(にん)した。

「なるほど、そうね。じゃあ次は、この部屋の(かん)()カメラの映像よ」

 (せい)()の表情が(けわ)しくなる。

()(すが)にそんなもん、ほいほい見せられないっすね」

「あは、(けん)(のん)な顔しちゃって。でも、もう(おそ)いわ」

 (ふう)()は眼鏡型の(たん)(まつ)を装着した。セキュリティシステムの乗っ取りは無理でも、(かん)()カメラの映像を(ぬす)むくらいなら可能だろうという、(かの)(じょ)なりの自負が、(ふう)()の自信に満ちた晴れやかな()(がお)を裏打ちしていた。けれど、その表情は(じょ)(じょ)(くも)り、ついには(せい)()にチラチラと視線を向けるようになる。

「ねえ、(せい)()

 (かの)(じょ)の言いたいことを察しながらも、(せい)()(ふう)()の呼びかけをわざと無視する。先に非友好的な(たい)()に出たのは(ふう)()の方なのだから、精々同じように困れば良いとすら思った。

(すで)に映像が消去されているのは、どうしてよ」

 ()(すが)アンジェの(じょう)ちゃん。()()ないなー。と、心の中だけで返事をする(せい)()。記録の消去は確かに大問題ではあるが、相手のことを考えると、むしろそれだけで済ませてくれたのか、という(かん)(たん)の念すらある。もし()(ごろ)耀(かぐ)()の友好的な(たい)()(ほだ)されてくれていたのだとすれば、なお(うれ)しい。

 なおも未練がましく、(たん)(まつ)の画面を(にら)()ける(ふう)()だが、それで情報が出てくるはずもなく、(せい)()も何も言わない。

「まあ、それなら仕方ないわね。せっかくだし、持ってきてる対(から)(くり)()用の(わな)でも()()けようかしら」

 ()(だい)に出てゴソゴソと何かを設置しだした情報屋に、(せい)()は思わず(ちん)(もく)を破った。

(ふう)()ちゃん、どんどん立派な犯罪者になってるっすね」

「うるさいわね。そんなもの、(から)(くり)()(つか)まえられたら、それでチャラになるじゃない。(だい)(じょう)()よ、空から来ない限り、この(あみ)()()かる事なんてないんだから。(むし)()けが増えたと思って、感謝する事ね」

 うわあ、開き直った。他人の家に勝手に物を()()けるのは、()(のが)れようのない犯罪(こう)()であるにもかかわらず、感謝まで要求された。などと、ぼんやり(げん)(じつ)(とう)()する(せい)()は知らなかった。

 (ふう)()(ねら)っている(から)(くり)()の一員、()(おん)が、部品を取って(もど)ってくると、約束しているという事実を。

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