表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絡繰異聞  作者: 和条門 尚樹
かくて耀夜は白華を構う
16/55

開かない扉はこじ開ける

 うっかりしていた、と(はっ)()が思ったのは、(とびら)の外で(ぶっ)(そう)な音が聞こえるからだ。

 (はっ)()にとって、(でん)()機器への(しん)(にゅう)は、それこそ息をするよりもずっとたやすいことなので、(とびら)(かぎ)を見つけたときについつい、いつもの(くせ)で閉めてしまったのだった。

 (つう)(しん)(たん)(まつ)が手元になければ、どこから(つう)(しん)したのかと(かん)ぐられることになるので、じっとしていることもできた。()(すが)に、(つう)(しん)()(れき)(かん)()されているだろうと考えたので、()(おん)(あま)()にも(れん)(らく)はしていない。

 けれど、あの後に(あま)()()げおおせたかは気になっていたし、情報収集のためにニュースを(かく)(にん)してから電脳(けい)()(ばん)まで行って、(もち)(ろん)(たん)(まつ)に自分の情報を残さないように()()()して、といつもの行動を始めたものだから、その延長線上にある日常動作にまで気を回さなかった。(つう)(しん)(たん)(まつ)経由での情報収集という、いつもとは少しだけ異なる状態に、多少()かれていたのも良くなかった。

「ああ、油断大敵ですねぇ」

 (げん)(じつ)(とう)()に走りたくなるのは、(とびら)の外の音が、本当に(ぶっ)(そう)だからだ。思わず、(かん)()カメラを借りて(かく)(にん)したくなるほどに。

 ただ、(かぎ)のことに(そく)()に気付かれたので、(かん)()カメラを借りても()ぐに気付かれそうで、借りてはいない。ここで、新たな(ばく)(だん)を投げるのは危険だと、(はっ)()は判断した。

「ですから社長、チェーンソーは止めましょう! (とびら)の修理費だって馬鹿になりませんって」

 耀(かぐ)()に、いつも()()うように立っていた女性(けい)()員が(いさ)めている、()()(ごえ)が聞こえる。

 耀(かぐ)()は何か反論しているようだが、何分にもチェーンソーの音がうるさすぎて、(とびら)()しの(はっ)()には聞こえない。

(はっ)()さんも! 早く部屋の(とびら)を開放してください!! 私たちだって、いつまで社長を(おさ)えておけるか(わか)りません!」

「せ、せめてチェーンソーを(いっ)(たん)止めてくださいませんかぁ!」

 (はっ)()は、(なみだ)()(うった)えた。(とびら)を開けた(しゅん)(かん)(うな)るチェーンソーとご対面とか、(こわ)すぎて無理である。

 一方で、(はっ)()(とびら)に対する支配を意識して、別の言い方をするなれば、相当に()(まん)して、少しずつ弱めていた。(こわ)さの点から考えると、支配を強化したいところだが、今後のことを考えると相手の強さを知っておいても損はないと思ったのが、一点。そしてそれ以上に、(はっ)()の声が(とびら)の向こうまで届いているか不明なため、向こうの人に(とびら)を開けてもらった方がチェーンソーと対面しなくても済むのではないかという(もく)()()もあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ