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4話 “ ”
「お待たせいたしました。お嬢様」
無限に広がる花畑のなか、一人佇む少女と、その少女に声をかける青年がいた。
「……ヤク」
「またこのようなところでお一人、お身体が冷えてしまいますよ」
ヤクと呼ばれた男はまるで魔法のようにどこからともなく現れたブランケットを、彼がお嬢様と呼ぶその少女に差し出した。
お嬢様と呼ばれた少女は静かにそのブランケットを見つめ、そしてゆっくりと顔を上げた。
「……ヤク、無理に力を消費しないで。あなたの主人はこんなもの望んでいないわ」
「過ぎた真似でした。申し訳ありません」
淡々と謝罪する彼に感情の起伏は一切見られない。その様子を見ていた少女は吐きそうになった息をどうにか押し留める。
そして、その代わりといって次の言葉を紡ぎ、歩き出した。
「……もういいわ、行くわよ」
「はい、お嬢様」
その頬に涙の跡を残しながら。
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