14話 相手の性別
「さて、じゃあどこから案内しようか?」
何もわからないまま放置されてた間、俺はとりあえず近くの本を手に取ろうとすると何故か本が一人でに動き出し、それを捕まえようとすれば空中を飛び交い、いつのまにかムキになった俺とそんな俺を揶揄うように飛び回る本との追いかけっこが繰り広げられてからしばらくして、本をパタンと閉じて彼がそう言った。
「……本は、もう、いいの、っか! っ?」
本の閉じ方からして、まだ途中までしか読めていなさそうだった。てっきり一冊読み終わる頃に声をかけられると思っていたので、放置されていたにも関わらず俺はそう聞いた。……いい加減本を追うのもやめようか。
「あぁ、続きはまだだからね」
「?」
「じゃあ待たせたお詫びに、まずは外から案内するよ」
話についていけない俺を置いて、彼は一冊の本を片手に歩き出した。
思わずそんな彼に急いでついて俺も歩きだしたが、結局どうして俺がここにいるのかを答えてもらっていないことや、彼の言う『外』がどう言う意味なのかを考えずにはいられなかった。
しばらく、幾層にも立ち並ぶ本の棚の間をすり抜けながら、俺は彼の後ろをついて歩く。
すると、いつの間にか目の前に扉が現れたことに気がついた。
「ここから図書館の外に出られる。変わらずボクの『庭』であることには変わりないから、ボクがいれば簡単に出られるけど、一人だと無理だろうからあらかじめこの栞を渡しておくよ」
そう言って、彼はどこから出したのかわからない栞を俺に向かって差し出してきた。
俺は戸惑いながらその栞を受け取ると、それには一本の花が描かれていた。
「じゃあ扉を開けるね」
「あ、お、っおい!」
俺がその栞に気を取られている隙に、彼が扉に手をかけるとその扉は急に光を帯びて輝き出した。
そうして、たいした反応もできないまま、俺は無理やり図書館の外に連れ出された。
ここ最近、こう言う場面転換の連続な気がして他ならない。
急に扉が光ったかと思えば、次に目を開けた時には爽やかな風が頬を掠め、暖かな日差しを全身に浴びていた。
どこかあの草原地帯と似て異なるその景色は、まさに「図書館の庭」と呼んでふさわしい光景だった。
「ずっと館内にいるのも飽きるからね。時折こうして外に出て、外の空気を確かめるようにしてるんだ」
深呼吸を繰り返すように深く息を吸っては吐いての繰り返しをしてから彼はそう言った。
「ところで、ボクのことは男に分類したのかい?」
楽しそうにそう聞いてくるもんだから、実はコイツ女なのか? と言う疑念を持ち始めながら俺はそれに答えた。
「お前がどっちでもいいって言ったからだろ。異性よりかは同性の方が接しやすくてちょうどいい、し……」
言った後になって、まるで俺が言い訳しているみたいな答えになってしまったことに気がつき少し後悔した。
そんな俺の心情を察してか知らずか彼? はクスクスと笑い始める。
「確かにキミの言うとおり異性だと何かと気を使うことが多い。いい判断だ」
さて、次に行こうか。
彼はそう言うと再び歩き出した。
(結局どっちなのかは教えてくれないんだな)
そんな感想と共に、俺は吐きそうになった息をぐっと抑えてまた彼の後をついて歩き出した。
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