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「他に何があるというんです!」


「ん-。でもぉ、ユイナ令嬢のお手紙は、侍女が書くのですね~。今度、アーシエにもやり方教えて下さいな。その方が楽そうですし」



 にこやかな顔で、私は可愛らしく小さなガッツポーズをする。


 私の追及に、一部の令嬢たちが思わず顔を背けながら吹き出した。


 本来、こういうお茶会への招待状は令嬢本人がキチンと書くのが礼儀。


 それを私への意地悪を隠すために、侍女のせいにするなんて。


 自分で切り返しておきながら言うのもなんだけど……ダメだ。


 私も笑いだしてしまいそう。


 今回のコンセプトは、あくまで天然かつ悲劇のヒロインっぽく見せることなんだから、笑ったら台無しになっちゃう。


 我慢~我慢~。



「ななな、じ自分のミスで遅れて来られたのに、なんて厚かましいんでしょう」


「頂いたお手紙、持ってきておりますよぉ? アーシエが見間違えてるかもしれないから、皆さんと一緒に確認してみます?」



 そんなぬかりあること、すると思う?


 そうやって言い出すことなど、初めから想定済よ。



「じ、時間の話はあとでゆっくりしましょう。そんなことよりも、お座りになられたら? 皆さんずっと待っていたんですわよ。お茶も冷めてしまいますし」



 ふふふ。とうとう、この件に関しては負けを認めるようね。


 でも、これだけではこっちの攻撃は終わらないわよ。



「えー。でもぉ座る席ないですしぃ~」


「そこにあるではないですの!」


「えー。どこですか~? おかしいなぁ。ユイナ令嬢、やっぱりアーシエが座る席はないですよぉ?」


「貴女、目はちゃんと見えてますの?」



 どうしても私を末席に座らせたいみたいね。


 あまりの強硬さに、さすがに他の令嬢たちもかなり困惑してきてるけど大丈夫なのかな。


 席順とか、場所とか基本的には興味ないけど、わざわざ末席に座る趣味もないのよね。


 私のことを今までのアーシエだと思って相手しているのだろうけど、残念ね。


 私はアーシエじゃない。


 貴女のせいでアーシエは消えたってこと、ちゃんと理解してもらわないとね。



「やだぁ、見えてますょー? ユイナ令嬢の顔も全部ぅ。でも、私の座る席はないですよ? まさか次期王妃たる私にこんな末席に座れだなんて命令する方など、この中にはいませんわよね?」



 先ほどまでの柔らかな言葉に、棘を指す。


 そしてにこやかな顔を一瞬真顔にして見渡せば、その場が凍り付いた。


 そしてその意味が通じたのか、令嬢が全員真っ青な顔で一瞬のうちに立ち上がった。


 虎の威を借るじゃないけど、ルドの権力を使うのは本当は嫌だったんだけどな。


 でもこうでもしないと、ユイナ嬢は引き下がりそうもないし。


 それに敵と味方を見分けるためにも、必要なのよね。ごめんね。



「まぁまぁ、皆さんどうしたんですの? 急にお立ちになるなんて~」


「そ、それは……」



 私の顔色を伺うように、しどろもどろだ。


 さすがにこれ以上いじめたらかわいそうね。


 そろそろ本日のメインの助け船、出すとするかな。



「大丈夫ですよ? 私の席がないようだったので、今侍女たちが用意してくれるみたいですから」



 手際良く現れた侍女たちはそのテーブルセットの横に、同じ大きさのものを用意していく。


 離宮の侍女たちにあらかじめ頼んでおいて良かったわ。


 どうせ席がないのは目に見えていたし。


 人の用意したお茶会の横にさらにお茶会を用意するなんて、失礼すぎるのはわかってるけど、初めからずーっと失礼だったのはそっちだもの。


 これくらい許してくれるわよね。


 ニコニコとユイナ嬢に微笑み返すと、今のも爆発しそうなくらい顔を赤くさせ、ユイナ嬢は肩を震わせていた。


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