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「むぅ」



 下唇をぎゅーっとし、不貞腐れた私の顔を見た一人の侍女が不意に視線を外し、吹き出す。


 あ、変顔だったかな。


 にしても、少し空気が緩んだ気がする。



「ねぇ、あなたはこっちとこっちの色はどっちが似合うと思う?」



 私は笑ってくれた一人の侍女に声をかけた。


 そしてピンクか水色かどっちがいいか、尋ねる。


 いきなり声をかけられると思わなかった侍女は目を見開いた。


 だって一人だけの意見を聞いてもねぇ。


 どうせこんなに女の子たちがいるんだもん。参考にしたいし。


 人生でこんなピンクのふわふわしたモノなんて着たことないわ。


 本音を言えば黒かネイビーがいいんだけど、さすがに昼間のお茶会にそういうのは無理よね。


 もっといえば、すでにドレスじゃなくてもいいんだけど……。


 この世界でそれは無理よね。


 それに今はアーシエなんだし。


 アーシエは色が白くて華奢で乳もおっきいから、ドレス似合うし。


 いいということにしてもらおう。



「わ、わたくしなどの意見でよろしいのですか!?」


「ええ。もちろん。あなたはどっちだと思う?」


「恐れながら……わたしはこちらの水色が瞳の色ともよく合っていて、お似合いだと思います」



 最後は消え入りそうな声になりながらも、きちんと答えてくれた。


 でも困ったなぁ。


 これで、一票ずつになっちゃったし。


 んーーーー。あ、イイコト思いついた。



「これでピンク一票に水色一票なのよね。ということで、私に水色の方が似合うと思う人手を上げてー」


「えええ。お嬢様、それはさすがに……」


「だって、着るのは私だけど、より多くの人が似あってて可愛いって思ってもらえた方がいいじゃないの。せっかく作ってもらうんだし」


「それはそうですが」


「なので、投票なの。どっちかに必ず手を上げてね。水色がいいと思う人~。ふむふむ。じゃ、ピンクがいいと思う人~」



 みんな困惑しながらもしっかりと手を上げてくてる辺りが、なんとも優しい。


 そしてそんな雰囲気が先ほどまでのギスギスした空気を変える。


 なんだかんだ言いながらも、ちゃんと子爵夫人も手を上げてくれているし。


 一緒になって何かを作っている一体感が、なんとも心地いい。



「うむ。なので次回のお茶会のドレスは水色になりまーす」


『わー』


『えー』



 どちらに投票を入れていたかで、その反応ががらりと変わる。



「ワタクシはピンクの方が絶対に似合っていると思いますわ」


「でもみんなは水色って言いましたよ~」


「両方作りますので、着ていただいてからどちらが似合うか殿下に判断してもらいましょう」



 あ、負けず嫌いさんだったので、子爵夫人は。


 しかもあんなに作りたくなさそうだったのに、二着も作ってくれるっていうし。


 ふふふ。上手く行ってよかった。



「あ、子爵夫人いつか夜会のドレスも作って欲しいです。色はルドの瞳のような紫色がいいんですけど~」


「瞳の色は美しいですが、ドレスにしたら地味すぎます」


「ん-。ドレスに宝石とかキラキラしたモノを縫い付けるのはどうですか」


「宝石……でもそれだと重く……」


「ドレス自体を、シュっとした細長い感じにしちゃえばドレス自体の重量が減りますし」


「すぐ検討します」


「わーい。ありがとうございます」



 子爵夫人は無表情に近い素の顔のままだったが、クイっと上げたメガネの中の瞳は、確かに輝いていた。

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