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「おくつろぎのところ、申し訳ございません。アーシエお嬢様宛にお手紙が届いたとのことで」



 いつもな朝のルドとの団欒を邪魔するように、その手紙は届けられた。


 あの時ルドに渡した手紙と同じ色の封筒に、一輪の花が添えられている。中身を見なくても、誰からか想像がつくあたりが嫌ね。


 手紙を私に差し出すサラは、いつもらしくなくおどおどしている。おそらくサラも差出人を確認したのだろう。



「燃やしてしまえばいい」


「え?」


「はい、承知しましたー!」


「ちょっと、ちょっと二人とも! それはさすがにダメでしょう」



 なんなの、この二人の息のぴったりさは。ノリノリで結構ひどいことを言っちゃってるし。そりゃあ私だって中身見たくもないし、触りたくもないし、燃やしてはしまいたいけど。


 ただ礼儀としてそれはマズイでしょう。仮にも向こうは()()()()なんだから。身分ってめんどくさーい。


 あ、でも私のが侯爵令嬢で格下とはいえ、ルドと婚約してしまえば次期王妃なんだもんね。身分とか関係なくなるんだ。だからこそ、今攻めてきてるのかなぁ。


 ルドの王宮内の調査が始まったことは、公爵家だって知っているはず。


 すでに数人の侍女が捕まったというのに、自分たちは大丈夫だって思ってるんだものすごい自信よね。


 見習いたくはないけど、それぐらい図太く生きなきゃココではダメなのかもしれないわね。



「とりあえず、読んで内容だけは確認してみないと」


「そんなの時間の無駄だ」


「でも何を言ってきているのか分からない以上、気になるじゃないですか」


「それはそうかもしれないが……」


「それにほら、今までの謝罪と今回の件の罪を認めるとかだったら、ルド様のお仕事が一つ減りますし」


「そんなこと、書いてあるとお嬢様は思っていらっしゃるんですの?」



 ある意味、純粋なサラの視線が突き刺さる。うん。思ってはないよ?


 一ミリも……。でもそんなこと言えないじゃないの。



「ソーネ、キットソウダッテオモッテルゥ」


「お嬢様、片言すぎます」


「えー。だって……」


「ほらアーシエだって、時間無駄だと思っているのだろう」


「だとしてもです! 見ずに捨てたら、気になって眠れないかもしれないでしょう?」


「そこは僕がちゃんと寝かしてあげるよ、アーシエ」


「いえ、それはさすがに……」



 ルドが言うと、18禁にしか聞こえないからダメです。



「サラ、手紙ちょうだい」


「本当にいいのですか、お嬢様」


「うん。見て、もし嫌な内容だったら燃やしてもらおうかな~」


「はい! 任せて下さい!」



 もう。燃やす気満々すぎね。


 まぁ、私もまともに相手する気はこれっぽっちもないんだけど。


 でも基本的に負けず嫌いなのよね。ここまで喧嘩売られてるのなら、ちゃぁんと買ってやり返さないとって思ってしまう。


 でも本当に何が書いてあるのかは気になるのよね。さてさて、何が出てくるのかしらね。作法がなってないだろうとは思いつつも、ビリビリと手紙を開ける。


 ルドとかからの手紙じゃないから残しておく必要性もないものね。



「えっと?」



 拝啓、クランツ令嬢様


『この度、王宮にてわたくし主催のお茶会を主催することとなりましたので、ぜひ次期王妃候補としては参加していただきたいと思います。他の令嬢たちにもすでに招待状は送ってありますので楽しみにしています』



 要約するとこんな感じのことが書かれていた。



「……はぁ」



 うん。馬鹿じゃないの。いや、馬鹿だよね。びっくりするくらいの馬鹿だわ。


 いくら私が貴族言葉に慣れていないからって、ここまで上から目線だとさすがに分かるわ。


 ああでも普通のか弱い貴族令嬢だったアーシエなら、これを見て泣きそうになったりしていたのかな。


 可哀想なアーシエ。そしてある意味、哀れなユイナ令嬢。中身、すでに違うのよね。残念だわ。



「……うん。とりあえず燃やそうかな」


「はい、お嬢様」


「ああ、そうするといい」



 二人の意見を聞いて、初めから燃やしてしまえばよかった。


 でも最後の方に書いてある言葉。他の令嬢にもすでに送付してあるって。つまり、私が逃げたらそのことを他の令嬢たちに言いふらすってことでしょう。しかも、嫌味のようにわざわざ次期王妃候補としてはなんて書いて。


 いやらしいっていうか、なんていうか。本当に嫌いなタイプだわ。一回、やっつけられたのにまだ全然懲りてなかったのね。


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